森と共にある孤独感   

britten: peter grims - four sea interludes
sibelius: violin concerto
elgar: enigma variation
lisa batiashvili (vn), martyn brabbins / lpo @royal festival hall


テルミカーノフさんの指揮が聴きたかったんですよ。厳しい音楽をされる方なので。でも残念なことに、指揮者が替わってしまいました。ブラビンスさんはイギリスの指揮者だそうです。BBCスコティッシュオーケストラで副指揮者をされていて来シーズンからはベルギーのオーケストラの第1客演指揮者になるようです。彼の音楽は一言で言うと中庸。人の良さが表れているのかとても誠実に音楽を奏でます。尖ったところや驚きが好きなわたしにはちょっと物足りないんですけど、でも、ブリテンやエルガーのイギリスものの音楽は流石です。お客さんもとても喜んでいました。こういうのがイギリスの音楽なのかもしれません。リサをソリストに迎えたシベリウスの協奏曲は、リサさんに寄り添った音楽作りがなされてました。リサのシベリウスを聴くのはこれが2回目。前回はドホナーニさん指揮のフィルハーモニア・オーケストラでUSで聴きました。このときはカデンツァの途中で弦が切れたんですよね。リサはまだ20代のヴァイオリニスト。でも、知らない間に結婚してお子さんもいらっしゃるらしい。月日が経つのは早いなぁ。でも、以前と変わらず若々しくてきれいでした。リサの音楽の特徴はおおらかさ。シベリウスの冒頭も緊張した細い線のような音ではなくゆったりと歌うように弾いていきます。シベリウスのこの音楽からここまで歌を引きだしたのはすごいことじゃないかしら。シベリウスは歌うような音楽を書く人ではなかったので。全体的にゆったりとしたテンポで、冷たいシベリウスではないけれども、これもとてもステキなシベリウスです。緑の森の中を独りで散歩しているような感じ。その孤独感がたまらなくいいのです。孤独といっても寂しい孤独ではなくって、自然の中にとけ込んでいくような豊かな孤独です。その孤独感の表出という点で、5年前の演奏よりもずいぶんと成熟したような気がします。演奏会のあと、サインをいただきつつ(ふふっ、あまり並んでなかったからちゃっかりね)一言二言お話ししました。ワシントンDCでの音楽会のこと、覚えておられましたよ。

参考までに前に聴いた2003年の音楽会の感想を載せておきましょう。
「2つ目は、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。そりゃもう大好きなのよ。この間もレーピンさんの演奏ですてきなの聴いたばかりだし。今日のソリストは、リサ(エリザベス・バティアシュヴィリさんだけど、プログラムもリサ・バティアシュヴィリさんになっていたので、お話ししたこともあるし、愛称のリサと呼ぶことにします)。仲良し好みの美人さん。日本音楽財団から貸与されてるヴァイオリンを弾いていて、今度、来年の初めに日本に行くみたい。春のリサイタルのときは、歌のある人だなって印象で、同年代のヴァイオリニスト、ヒラリーやサラとはまた違った個性の持ち主だなって感じてました。どんなシベリウスを弾くのかうんと楽しみ。そよそよと静かにオーケストラが揺れるのにのって彼女が歌い出したヴァイオリンはとっても大らか。ともするとここは神経質なまでの緊張感で弾かれる弱音(ムターさんのときはほんとにどきどきするような息を飲むくらいの鋭利な音だった)を、たっぷりと息をした歌い回しで弾き始めたのにはびっくり。でも、それがすごくすてき。そのあともゆっくりとしたテンポで大らかに歌っていたけど、彼女のヴァイオリンを聴いていると、音楽の向こうにシベリウスや彼女が見ている風景が目に浮かぶよう。ドホナーニさんとフィルハーモニアのオーケストラも実に上手く彼女をサポートしていて、とってもすてき。で、ハプニングは、長いヴァイオリンのカデンツァのお終いの近くで起こったの。リサが、突然弾くのを止めたの。そして小さな声でドホナーニさんに何か言ったのだけど、あれっ?どうしたんだろう?失敗したのかなって思ったら、ばしっと弦が切れて、あっと思った。彼女は袖に引っ込んで、その間ドホナーニさんはオーケストラの人と何か少し小声で話しながら待っていたのだけど、会場も静かに待っていました。この会場の雰囲気はまさしく彼女が作ったもので、みんなが音楽に集中していくの。決して緊張を強いる演奏をしているのではないのだけど、彼女の音楽に対する気持ちがそうさせるのね。びっくりする出来事なのにわたしたちは心静かにしていることができたの。彼女が戻ってきて、ドホナーニさんがオーケストラに指示して、カデンツァが終わったところから曲を再開して、大丈夫かな、彼女集中力切れてないかなって心配したけど、さすが。わたしの耳には全く問題なく聞こえる。1楽章が終わって、そこで、ドホナーニさんはリサに耳打ちして、楽器の音を合わせるようにさせたのだけど、わたしはこれを見てドホナーニさんに感動したわ。わたしの耳には感じ取れなかったけど、多分、リサのテンションは弦が切れたせいで変わっていたのだと思うし、それをさりげなく音合わせで間をとることによって戻したと思うの。若い音楽家をそうやってサポートする百戦錬磨の指揮者。ドホナーニさん大好き。第2楽章も第3楽章もやっぱりゆっくり目のテンポでたっぷり歌って、でもそれが、弛緩した歌ではなくて、北国の大らかな大地の香りがするの。リサはほんとにこの音楽をよく知ってるし好きなんだなって思えた。あとで見たら、リサは16歳の史上最年少でシベリウス・コンクールで入賞してるのね。彼女は2位だったけど、その年の3位にはズナイダーさんがなってる。なんかすっご~い。ここまで大らかに歌いきったシベリウスは、ちょっと異形だと思うけど、わたしにはとってもすてきで、今まで聴いたシベリウスの中でも最もすてきなひとつとなりました。」
[PR]

by zerbinetta | 2009-01-21 06:47 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

<< びっくりを口ずさみながら 超かっこいい 超興奮  結婚式... >>