知らなかった〜   

john adams: doctor atomic @english national opera
penny woolcock (dir), lawrence renes (cond), gerald finley (oppie)


アダムスさんのオペラ、ドクター・アトミック(原爆博士)です。初めて行くコリッシアム、イングリッシュ・ナショナル・オペラの本拠地です。バービカンやサウスバンクセンターと同様にわたしの家や職場からチューブ1本で行けるので便利。コヴェントガーデンやトラファルガー広場の近く、町の中心です。会場はオペラハウスと言うより大きなミュージカルの劇場みたいな感じです。安い席でも座席とステージが近いのでいい感じ。イングリッシュ・ナショナル・オペラはオペラを自国語(英語)で上演する伝統的なオペラです。今では原語上演の方が普通と考えられていますが、実は近年までオペラは自国語上演が一般的だったんですよ。日本ではオペラは原語上演でなきゃっていう雰囲気がオペラを聴く人の間であるけれども、わたしは、もっと自国語上演が増えてもいいと思っています。原語上演でなきゃ駄目、でもなく自国語上演でなきゃいけないというわけでもなく、どちらもそれぞれに良さがあると思うのですね。だから、両方を聴く機会があればいいと思うんです。どんなに詩の内容を理解していてもそれが、自国の言葉で頭に入ってくるのと頭の中で翻訳されて理解するのでは決定的に違いますから。これは音楽が作曲された言葉で書かれているということと同様に重要なことなんです。という込み入った話はまたいつか別に機会を作ってちゃんとしましょう。
ごちゃごちゃ言ったけど、実はこのオペラ、アメリカ人のアダムスさんの作品なのではじめっから英語なのです。英語の字幕付き上演。タイトルが示すようにこのオペラはマンハッタン計画の責任者、物理学者のオッペンハイマーの物語です。原爆実験の前夜の物語。わたしもこれでも日本人の片割れなので原子爆弾には特別な感情を持っています。あまり軽々しくは触れたくない。アダムスさんがこのオペラを依頼されたとき、現代のファウスト博士(ゲーテの。悪魔と契約して心を売るという物語)の話を創りたい、それにはオッペンハイマーがふさわしいだろうと打診されたそうです。彼は躊躇したそうですが、結局引き受けた。とプログラム・ノートには書かれていました。わたしは知らなかったんだけど、オッペンハイマーは原爆の使用には批判的な立場だったようです。戦後はそれを強めて、また共産主義者との交流からアメリカ社会から抹殺されています。オペラにはそこまでのことは書かれてはいないのですけれども、明らかにアメリカの正義一辺倒ではありません。特に、最後のミズヲクダサイの語りのところは原子爆弾に批判的にも読み取れます。また、アメリカインディアンへの共感みたいのもあって、ヒッピー世代を経たアメリカも変わってきてるのかなぁとも感じます。ってアメリカに住んでたくせに何言ってるのかっても言われそうだけれども、わたしの世界はアメリカに直接触れていたわけではないからね〜と言い訳したり。アダムスさんの音楽は概して好きなのです。わたしはよく知らなかった話で(日本で原爆というと投下のことばかりですから、その前の実験の段階のことは知らなかったのです)、興味を持てましたし。最後、いよいよ原子爆弾の爆破実験がなされるときの緊張といったら。どんな音で表現するんだろうってずうっとドキドキ(結構長かった)。そして最後の最後のミズヲクダサイの語り。これは演出のせいなのか、全く感情のない平坦な声(日本語です)で、わたしはもっと切実な表現の方がいいんじゃないかってちょっと納得いかなかったな。そうそう、オッペンハイマー役のフィンレイさん、メトでパパゲーノを聴いたときはやんちゃな若造って感じだったけど、今や世界中で大活躍なのね。知らなかった〜。
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by zerbinetta | 2009-03-20 07:49 | オペラ | Comments(0)

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