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心で聴くマーラー   

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mahler: symphony no.2
sylvia schwartz (sp), katarina karneus (ms), benjamin zander / the bach choir, po
@westminster cathedral


教会の大聖堂でマーラー、復活。教会のオルガンで復活。これはなんだかわくわくするじゃありませんか。しかも指揮は一部にカリスマ的人気を誇るザンダーさん。名物のプレコンサート・レクチャー付き。誕生日イヴじゃなくても行かなきゃデスよね。実はザンダーさん、わたしもCDを1枚だけ持っていてそれはとっても好きだったんです。仕事をさぼり気味に、いや朝からばばばって終わらせて、出かけました。でも初めて行くところ。やっぱり迷子。っていうかわたしの思っていたのと違うところだった。ウェストミンスターって名の付く教会、2つあったのね。わたしは有名なウェストミンスター寺院の方だと思っていたのに、大聖堂(カテドラル)は違うところなのでした(歩いて10分ほど離れてます)。寺院を目の前にして、国会議事堂の警備の人に道を尋ねましたよ。
そんなこんなで早めに出たにもかかわらず、レクチャーにはちょっぴり遅刻したんだけど、考えてみれば音楽会に遅刻したんじゃなくて良かった。レクチャーではザンダーさんがピアノを交えながら熱〜く復活を語ってくれました。内容は本やCDの解説なんかで知ってることなんだけど、ザンダーさんの熱い語りでとても楽しく聴けました。結構デフォルメした感じで弾き歌い(わりとへたくそ)していたので、かなり異形のマーラーを期待しました。演奏前に先日フィルハーモニアと一緒に仕事をしていたプロデューサーの方が亡くなったということで今日の演奏をその方に捧げるとおっしゃっていましたし。
が、それは見事に外れました。
意外にきちんとしたマーラー。見得を切ったり、緩急の差を極端に付けたりっていうデフォルメはなくて、どちらかというと速めのインテンポかな。さっきの弾き歌いとは大違い。だってさっきは主部は雷鳴のようにむちゃ激しく弾いて、第2主題はゆっくり弾いたんだもの。でも、教会でマーラーはきついな。音が響きすぎて、細かく分離しない。それにわたしは後ろの方の安い席で聴いていたので、直接音よりも間接音の方が多く聞こえて、お風呂でもわんもわんと響いてるみたいでした。オーケストラも弾きづらそうにしてました。第1楽章と第2楽章の間に長い間を取って(楽譜通りの5分以上の間という長さではなかったけど。この間に独唱者が出てきました。合唱は最初からステージです)始まったアンダンテ・モデラートは速めのテンポ。まさにダンスのリズムです。へ〜、こんな感じもありか〜って、たいていもうちょっとゆったりしてダンスのステップを踏むという感じにならないので、びっくりした〜。レクチャーではこの部分はルバートが大事とおっしゃっていたけど、めちゃくちゃなルバートかけ放題ではなく、ちゃんと控えめでした。ただひとつ残念だったのが、ダンスの軽いステップが、それを背景にチェロのレガートの対旋律が入ったときから緩くなってしまったこと。できたら、ダンスのリズムでずうっと通して欲しかったな。音楽の方向性が曖昧になっちゃったし、ダンスの方がわたしには新鮮で面白かったから。そういえば、ザンダーさんって音楽学者でもあったんでした。熱い語りから熱烈なアマチュアリズムの心を持った人だと思ってしまったけど、演奏はとても冷静でむしろあっさりとしていると言ってもいいくらい。中心になるスケルツォも過不足のないそんな演奏で、第4楽章もあっさり目。メゾソプラノのカーネウスさんの声も重心は低いけれど軽めで、もう少し深く哲学的に歌った方がいいのか、いや、天使の歌だから少し軽い方がいいのか、わたしも迷いました。ザンダーさんとフィルハーモニアはマーラーの交響曲を録音していってるので、このことはぜひCDが出たら確かめてみたいと思っています。教会の響きの中では正直よく分からなかったので。
最終楽章もそれまでと変わらず、もったりとしないでさらりと進めていきます。ステージ外のホルンが頭の上から聞こえたり、トランペットと打楽器のバンダが遠くで鳴ったり、ライブならではの面白さ。(でも、ほんとは逆かなぁ。トランペットが頭の上からでホルンが遠くからの方がいいかな。これは座った位置によるんですけど) 打楽器の壮大なクレッシェンドに続く行進曲の部分は壮大に盛り上がってわたしの好みにぴたり。ナイチンゲールが鳴いて静かに合唱が始まると、ここからはうって変わってゆっくり目のテンポ。それがとっても感動的で、今までの音楽設計はすべてこのときのために計算してたのかって思ったくらい。ここからは本当に感動的な音楽が展開していきます。そしていよいよ教会のオルガン。フォルテッシモでオルガンが入るんですが、その瞬間はもうびっくり。すべてがかき消されてしまいました。オルガンは教会の後ろに設置されていたので、わたしの席ではオルガンの音でオーケストラの音が吹き飛んでしまったのです。オルガンはずうっと鳴り続けているわけではないのでいいのですが。もう完全にはちゃめちゃな音響バランス。音楽的にはどうかと思うんですが(会場の問題で)、わたしにはこれがむしろツボ。マーラーってはちゃめちゃなところがいいなって思うんです。マーラーだって、最後まで独唱者を歌わせる(合唱に吸い込まれて聞こえないのに)書き方をしてるし、この曲には理知的ではない熱に浮かされた何かがあると思うんです。そしてそれがわたしにはとっても大切な部分。会場のせいで異形のマーラーだったけど、めちゃ感動できました。ただ、会場が寒かったのでボスからうつされていた風邪をこじらせてしまった。。。

by zerbinetta | 2009-03-24 01:58 | フィルハーモニア

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