ネット時代   

tan dun: internet symphony 'eroica', piano concerto 'the fire'
mahler: symphony no.1
lang lang (pf), tan dun / daniel harding / lso @barbican hall


ロンドン・シンフォニーも一枚絡んだ企画で、ユーチューブ・オーケストラを作ろうっていうのがありました。オーディションをユーチューブにアップされる動画で一般の人も審査に参加できる形で行うというもの。世界中からいろんな人が参加して、選ばれた音楽家たちはカーネギーホールに集まってコンサートを開きました。その様子は、ここにアップされていますが、なかなか熱気があります。ティルソン・トーマスさんと音楽演れるならわたしも参加すれば良かったな。ってまえに楽器できないけど。さてその企画のために、人気の作曲家のタン・ドゥンさんがオリジナルの曲を書いています。インターネット・シンフォニー「エロイカ」。これが聴けるというので行ってきました。ロンドン・シンフォニーの音楽会。なんの予備知識もなく来ちゃったわたし。エロイカって壮大な曲を想像していたんだけど、4楽章でたった5分ばかりの曲。手抜き?でも、ユーチューブ・オーケストラを紹介するピースとしては盛り上がっていいかな。タン・ドゥンさんお得意の打楽器の使い方もかっこいいし。エロイカはもちろんベートーヴェンの交響曲。英雄の主題が聞こえますが、交響曲と言うからには主題をきちんと展開して欲しかったな。ベートーヴェンが第1楽章の主題を最初の2つの和音に凝縮したように。でも、こういう企画面白いなぁ。今度は、ネットを通して集められた個々のパートの演奏をミキシングしてひとつの曲に創りあげるとか、でもそうすると合奏する悦びが失われちゃうか。
作曲者の指揮による2曲目はピアノ協奏曲。今日の独奏者ランランさんのために書かれてます。ランランさん、大人っぽくなったなぁ。髪も短髪から7、3分けみたくしてるし。今日はランランさんお目当てでしょうか、中国人の人がたくさん来ていました。フラッシュを焚いて写真を撮る人がたくさんいて、演奏中にも撮っちゃった方がいたのは残念でした。でも、音楽も演奏も良かったです。第2楽章なんかは叙情的で吉松隆さんを思い出させる感すらありましたよ。第1楽章でピアノに現れるとろけるような分散和音がちょびっとだけでもったいないなぁと思ってたら、最終楽章の最後(と思った)に回帰されてむふふと思ったら、ここからが長かった。いろいろ品を変えて盛り上がってくる。こうなるとピアノもスポーツね。がんがんと鳴らして、腕で弾いたり、もう大変。体育会系のピアノ協奏曲ってブゾーニのがナンバーワンだわと思っていたけど、ここに、タン・ドゥンさんの曲も体育会系に認定しましょう。きらりと光る汗のようにすがすがしく終わって爽快。
休憩のあとは、指揮者が替わってハーディングさん。ハーディングさんのマーラー、とても期待していました。クック版の交響曲第10番の録音の評価もとっても良かったし。静かに始まった音楽は木管楽器の4度の応答がとっても柔らかいのにびっくり。これは期待できそう。でも、音楽がなんとなく淡々と進んで春が来ないんですよ。春の美しさとか、悦びの爆発がやってこなくて、でも冷徹というわけでもなくて、なにか遠くで音楽が鳴ってる、音量が小さいとかではなくて、わたしの外で音楽が鳴っててわたしにはそれに触れることもできないっていう感じ。奇妙な疎外感。音楽に参加させてもらえない。聴いてるだけ、演奏に参加してるわけじゃないしって思われるかもしれないけれど、わたしは音楽会に行くのは一緒に音楽を創るためと考えています。音楽は常に創造されるものだから、会場の雰囲気によって演奏が変わるのは当たり前。会場全体が一体になって凄い音楽が生まれる瞬間をいくつも聴いてきましたから。もちろん今日の演奏も会場全体で生み出されたものに違いありません。ただその中にわたしがいれなかった。第2楽章の始めのリズムをゆっくり弾かせて急速なアッチェレランドで主部に持っていくとか、第3楽章の始まりのコントラバスをソロでなくてパートで弾かせるとか(でもどうやらこちらが国際マーラー教会が出している一番新しい見解みたいです)、いろいろ仕掛けてくるんですけど、わたしには空回りに聞こえた。ハーディングさんも一皮むけようと苦しんでるのかしら?わたしの邪推だけど。第2楽章のチャーミングなクラリネット(ロンドン・シンフォニーのクラリネット、本当に上手い)、第3楽章の中間部の出だし、第4楽章の情感たっぷりな第2主題、左右に振った2台のティンパニの掛け合い、などなどたくさんのステキな瞬間はありました。でも、どうして全体でわたしの心に響いてこないんでしょう。もしかするとわたしがもはやこの音楽に感受性を失ってしまったのかもしれません。そして今日の音楽会では、マーラーよりベートーヴェンの英雄を聴きたかった。ハーディングさんとわたしの波長が合わないのかもしれません。多分どちらにせよわたしのせい。
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by zerbinetta | 2009-04-21 07:39 | ロンドン交響楽団 | Comments(2)

Commented by 藤井 at 2009-05-26 11:11 x
zerbinettaさん、ハーディングのマーラー交響曲第一番、残念でしたね。私も、彼の四番と十番を聞き直してみましたが、録音された演奏からは、違和感を感じることが出来ませんでした。ひとそれぞれ相性があるのか、実演では違ってくるのか、よく判りません。それにしてもロンドンではマーラーの交響曲を、立て続けに聴くことが出来るんですね!!!羨ましい限りです。私はまだマーラーの交響曲を実演で聴いたことがありません。ロスにいた頃、アバド・ベルリンフィル公演の演目が突然マーラー交響曲第七番から、変更になって、最大のチャンスを無くして以来、機会を逃し続けています。ただ来シーズンは、デトロイト交響楽団の定期でスラトキンではないですが、七番が予定されているのと、ミシガン大学に、MTTとサンフランシスコ響がやってきてマーラー交響曲第二番を演奏してくれるので期待しています。私見ですが、マーラー指揮者としては、MTTとゲルギエフが旬で、ジョナサン・ノットが一番の注目株。あっそれからネゼ=セガンも。CDの発売も楽しみです。
Commented by zerbinetta at 2009-05-31 05:32
ハーディングさんのマーラーは藤井さんのサイトで高く評価されていたので楽しみだったのです。わたしが楽しめなかったのはきっとわたしのこの曲に対する思いこみの激しさゆえかもしれません。来シーズンには第6番と第10番があるので今度こそしっかり聴きたいと思います。
マーラーの演奏多いですね。ベートーヴェンよりもよくかかるんじゃないかしら。わたしとしてはショスタコをもちょっと聴きたいのですが、来シーズンは少しあるので嬉しいです。
藤井さんがまだマーラーの実演を聴かれたことがないなんてびっくりです。機会を逃すなんてもったいないです。マーラーの音はCDに収まりきれないのでどんな演奏家のでもお聴きになることをお勧めします。
わたしもMTTさんのマーラーの演奏大好きです。第3番のCD(ロンドン・シンフォニーとの)を初めて聴いたときには泣きました。でもゲルギーのMTTさんもマーラー演奏してくれないんですよね〜。

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