虚脱系音楽三昧   

kancheli: another step
yusupov: cello concerto
silvestrov: symphony no.5
mischa maisky (vc), vladimir jurowski / lpo @royal festival hall


シルヴェストロフの交響曲が聴きたくてやってきました。って人、どのくらいいただろう?皆無?きっとお目当てはマイスキーさんのチェロよね。でも、協奏曲を含めて今日はすべて現代曲。挑戦的なプログラムです。さすがにお客さんは少なかったけど。カンチェリという作曲家はわたしも知ってたんだけど、静かな音楽を書く人のイメジ。ところがいきなりばんばんと打楽器の強打で始まってびっくり。油断禁物。音楽はネオロマンティシズム。不思議な音が聞こえるのはテープを使ってるからでしょうか。昔のラジオから聞こえてくるようなどこか懐かしいような音楽が聞こえて、現在と子供の頃の過去をつなぐ音楽なんだな〜、そして次のステップなのかなって思いました。わたしには過去への郷愁があまりないので、わたしのアナザ・ステップはきっともっと違った音楽になるんだろうな。

2曲目のチェロ協奏曲の作者、ユスポフさんは全く知らない作曲家さんです。1962年生まれなので中堅どころですかね。ロンドンフィル、イスラエルフィル、ルツェルン・シンフォニーの委嘱を受けて作曲され、昨年の1月にマイスキーさん60歳の誕生日にルツェルンで初演されてます。イギリスで演奏されるのは今日が初めて。音楽は大雑把に言えば、チェロが奏でる親しみやすい、時には民族的な旋律に、オーケストラが現代的な(言葉を換えて言えば、旋律に無関係に見えるような和声やリズム、ニュアンスの)合いの手を入れるという感じで進んでいきます。性格の違うチェロとオーケストラの掛け合い。なのでとっても聴きやすい。わたしには好きなタイプの音楽です。フォークソング的なところは結構盛り上がるし。大好きな怒りの日の旋律の引用なんかもあってちょっとうれしい。マイスキーさんってリリカルで柔らかいチェロを弾く人だなってイメジがあったのですが(シューベルトやショパンのイメジ)、熱い音楽も奏でる人なんですね。すてき〜。

休憩のあとはわたしが一番聴きたかったの、シルヴェストロフの交響曲第5番。CDを持っていて、この曲結構好きなんですよ。日曜日だらだらとお家にいて決して何もしたくない怠惰な午後、できたら空は曇り、にぴったりの虚脱系の音楽。何もかもやる気をなくして重力に縛り付けちゃうんですよ。現在を遠い未来から廃墟の遺跡を見るように俯瞰してるような音楽。こんな曲実演で聴けるなんて思ってみなかったからずうっとずうっと楽しみにしてたんです。でも、実はちょっと期待が外れた。というのはわたしにとってこの音楽は重力そのもの。そして、今日縛りつけられるところはホールの椅子。この音楽にはふかふかのソファが必須でしょう。そこで横になって思いっきりぼーっとする。耳では音楽を聴くけれども体は薬を飲まされたように弛緩してる。ということがホールの椅子ではできない。薄暗い部屋で見ているのか見ていないのか視覚は薄れてるのがいいのに、音楽会場ではしっかりと指揮者やオーケストラを見てしまう。そうすると当たり前だけど、彼らは一所懸命動きながら演奏してるんですね、虚脱音楽を。このイメジの不一致に覚めちゃうんです。誰のせいでもないわたしのせいだけど。音楽会よりもCDで家で聴くのがいいって初めて思える音楽でした。プロムスの天井席は寝ながら音楽を聴けるらしいのでプロムスで演奏されればいいのかな。あっでも誤解のないように付け加えておきますけど、演奏はとっても良かったのです。指揮者のユロフスキさん、絶対この曲が好きって思った。最後はお客さんの拍手に対してこの曲のスコアを高く掲げて応えてたし。虚脱系音楽(=ネオロマンティシズム)を3曲も聴いてもう何もする気もな〜〜いっ。
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by zerbinetta | 2009-04-22 07:41 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

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