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曲目変更の訳   

mendelssohn: overture 'the hebrides'
brahms: piano concerto no.1
schumann: symphony no.2
helene grimaud (pf), philippe jordan / po @royal festival hall


今日の音楽会の前にフィルハーモニア・オーケストラから手紙が来ました。曲目変更のお知らせでした。なんと丁寧。プログラムのアナウンスメントは最初、ブラームスの2番のコンチェルトだったんです。あまり聴かないのでいいねって思っていたんですが第1番になってがっかり。この前聴いたばかりだし。というふうにはならなかったです。だって第1番の方が好きだから。グリモーさんと出会ったきっかけは、ラジオでグリモーさんの新しいCDを熱烈に勧めていたので買ったのが第1番のコンチェルトだったんですから。曲目変更の理由は、グリモーさんが同じ指揮者で公演して、そのとき弾いたこの曲がとっても良くて、また弾いておきたいということでした。ますますステキじゃないですか。どんな演奏になるのだろう。
音楽会はメンデルスゾーンのフィンガルの洞窟序曲から。指揮者のジョーダンさんは2度目。以前にメトデビューを聴いてます。実はそのときあまり好印象じゃなかったのね。オーケストラをつかみ損ねてるかなって。でも今日はそんなことなかったです。ぐいぐいとオーケストラを引っ張っていた感じ。ジョーダンさんの指揮ってなんだか不思議に見えるんです。とてもスムーズなのにコマ送りっぽく見えるとか(これ矛盾してるでしょ。でもどういう訳かそう見えたの)、肘の角度がよく分からないけど変かなとか、目の錯覚?
さて、グリモーさんを迎えたブラームス。グリモーさんはカチューシャをしてなんだか少女っぽい。音楽はゆっくり目のテンポ(わたしの持ってるグリモーさんの同曲のCD(指揮者はザンデルリンクさん)も同様のテンポだからグリモーさんのテンポなんでしょう)で始まりました。フィルハーモニアは上手なオーケストラでどんな音楽や指揮者にも対応できるっていう優れた面もあるけれども、それ故に重厚さや鄙びた感じが薄いのが渋い系のブラームスを聴くのには残念〜なんて最初思ってました。でも、グリモーさんのピアノが入ってからはそんな思いはすっかりどこかへ行ってしまいました。ジョーダンさんとオーケストラの創る音楽はピアノと絶妙のバランスで響きます。ピアノに覆い被さってしまうこともなく、かといって後ろに下がりすぎて控えめになってしまうことなく、強奏のときでもしっかりピアノも聞こえてるという絶妙のバランス。こんな伴奏されたらピアニストはさぞかし気持ちよく弾けるだろうって聴いてるわたしも感じるくらい、本当にジョーダンさんの伴奏はステキ。グリモーさんがもう一度ジョーダンさんとこの曲を演りたいって曲目変更したのも大納得。わたしだってこんなステキな経験何度でもしたいもん。最初は控えめに始まったグリモーさんのピアノもどんどん熱を帯びてくる。上体を大きく回すように揺れらしながら紡がれるピアノはとっても深くて大きい。じっくりと長編小説を噛みしめるような充実感。特にステキだったのが第2楽章。古寺の庭をゆっくりと散策するような心象風景を感じさせる落ち着いた音たち。ひとつひとつの和音がそこにあらねばならない場所に置かれていく。清閑だけど凛とした佇まい。なんと内省的で哲学的な音楽なんだろう。音楽を聴いたあと、しみじみと心に残る充実感の豊かさといったら。グリモーさんの音楽はわたしととっても波長が合うんだけど、ますます好きになってしまいました。
最後のシューマンの交響曲第2番は、雄大でどちらかというと健康的な表現。わたしとしては精神の危うさみたいなものが欲しいので、熱にうなされるような感じが好みなんだけど、これはこれで楽しめるな〜。でも今日の音楽会はやっぱりグリモーさん。音楽の大きさからいってもこちらがとりでも良かったな。

by zerbinetta | 2009-04-23 07:42 | フィルハーモニア

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