天使と英雄 ふたつの死   

berg: violin concerto
mahler: symphony no.6
christian tetzlaff (vn), esa-pekka salonen / po @royal festival hall


夢の都市、ウィーンのコンサート・シリーズ、今回はベルクのヴァイオリン協奏曲とマーラーの交響曲第6番です。結構ハードプログラム。ヴァイオリン協奏曲の方はテツラフさんの独奏。テツラフさんもベルさんやシャハムさんたちと同じ世代ですね。前にリゲティの協奏曲を弾くのを聴いたことがあるし、この間リゲティを弾いた若いアリーナにリゲティの手ほどきをしたのもこの人。ベルクの協奏曲も大好きなのでとっても期待してました。でもびっくり。これ、わたしの知ってるベルクじゃない。といってもわたしの聴いてるベルクの演奏はムターさんの。その演奏もエキセントリックで、ベルクからどうやってこんなにロマンティックなものを引き出せるんだろうと思うくらいに甘美。で、今日の演奏はその対極というか、ロマンのかけらもない。というか、音楽ってこんなに難しかったのって感じた。音と音の関連性を極力廃した感じで、とっても無機質。表現も抑えまくって、太鼓が強く打つようなとこも決して強打せず、内に内に向かっていきます。バッハが出てくるところはああやっとと瞬間感動するんだけど、その音楽もどんどん解体されていって。もう、未来から見て解釈された音楽。こんなのもありなのね、とベルクに対して新しい目が開かれたのでした。
なので、マーラーの演奏も前に聴いた9番同様、20世紀の側から構築した演奏になるんじゃないかって期待してました。すっきりと透明で明晰な演奏。でもわたしの予想はあっさりと裏切られました。サロネンさんは最初から全身全霊を込めてすごい気迫で音楽を鳴らします。低弦のリズムの凶暴さ、荒れ狂うオーケストラ。始めから涙ぼろぼろ。第1楽章の途中で会場から逃げ出したい、この音楽を最後まで聴いたらいったいわたしはどうなるんだろうって心配でした。サロネンさんはわたしに聴いたことのない新しい世界を見せてくれました。それはリズムの強調。単に切れ味の良いリズムというだけではなくて、リズムがこの音楽の構成にどれくらい重要なのかをまざまざと教えてくれました。2つのリズム要素で全曲が統一されているんですね。今までリズム的要素でマーラーを意識したことがあまりなくてこれにはびっくりしました。特にスケルツォ(第2楽章として演奏されました)では、ずれるリズム、重いリズム、軽いリズム、引き摺るリズム、流れるリズム、ぎこちないリズム、などありとあらゆるリズムを奏でて、もうリズムの饗宴。とっても面白かった。第2楽章スケルツォ、第3楽章アンダンテは国際マーラー協会の最新版とは相容れませんが、サロネンさんは明確な意志を持ってこの曲を構成してました。第1楽章と第2楽章のリズミックな統一と対比。第2楽章と第3楽章の間に短い音合わせを挟んで気分を変えて、後半はリズミックな要素を少し控えて流れるように(でも重要なリズムはしっかり強調して)。アンダンテの透明な美しさから、フィナーレの荒れ狂うようなドラマと、瞬間現れる静寂の美しさの対比。ステージの後ろにカウベルやベル、金属板(!?)を配したり、シンバルを4人で叩かせたり(5人という説も)、肥大化した打楽器セクション。テンポを大胆に揺らしたり、特異的な音を強調したり、もうやりたい放題なのですがすべてが見事に決まって、一瞬の隙もなく集中したまま音楽が終わりました。燃える指揮者、燃えるオーケストラ。ぐったりと疲れました。この曲は軽々しく聴くものではありませんね。こっちの精神が参ってしまいます。
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by zerbinetta | 2009-05-28 09:18 | フィルハーモニア | Comments(2)

Commented by 藤井 at 2009-06-07 12:30 x
zerbinettaさん、粘り強くBBC Radio 3を紹介いただき感謝します。今日やっと聴くことが出来ました。とっても気に入りました。詳細は、長くなってここには収まりきれないので、別途メールと拙HPに掲載いたしました。
Commented by zerbinetta at 2009-06-08 01:30
メイルありがとうございました。聴くことができたんですねっ。うれしいっ。あんな演奏が聴けちゃうという状況はとっても幸せなことですよね。

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