到達点、なのかも   

mozart: violin concerto no.3
mahler: symphony no.9
arabella steinbacher (vn), lorin maazel / po @royal festival hall


わたしはモーツァルトの演奏は古楽器のが好きです。フィルハーモニアはとっても機能的なオーケストラで何でも上手に演奏してしまうオーケストラですが、モーツァルトに関してはわたしの好みと違うのであまり期待してませんでした。でもそこはフィルハーモニア。やっぱり上手いですね〜。オーボエなんかいつもと違ってモーツァルトらしい明るい軽やかな音色。リード変えたのかな。オーケストラ全体も若草色のモーツァルト全開です(モーツァルトはピンク!ってのだめは言ってたけど、わたしはヴァイオリン協奏曲やザルツブルク時代のモーツァルトって草原の緑だと思うんですよね)。そしてロマンティックばりばりのモーツァルト。 きっとマゼールさんの解釈もそうですが、ソリストのシュタインバッハーさんの解釈もそうだと思うんです。第2楽章なんてゆったりと柔らかで極めつきにロマンティックだったもん。ここまで徹底的にやられるとわたしの好みとは違うけど参りましたって思うもん。でも、シュタインバッハーさんの演奏ではロマンティックな協奏曲を聴きたいです。演奏会のあとにサイン会があったんですけど、わたしはプログラムを持っていなかったので(フィルハーモニアのプログラムは秋シーズンをひとまとめに1冊なので既に持っていた(間抜けなことに2冊も))、寄らなかったんだけど、あとで調べたら彼女、母親が日本人なんですね、道理でちょっと東洋的な顔つきかなって思った、もしかして日本語でお話しできたかもしれない機会を逃してちょっと残念。

休憩の後はマーラーの交響曲第9番。マゼールさんは最近のニューヨーク・フィルとの全集がとっても評判いいので期待してました。フィルハーモニアの音ってロンドンの中では一番ニューヨークに感じが近いと思うし。さて、その演奏、マゼールさん超満載。マゼールさん、指揮上手なんですよ(ってわたしが今更言うことないか)。基本的には左右対称で、左手で右手とは別に表情を表現することはないし、指揮棒もシンプルに拍子を刻む感じなんだけど、指揮棒1本で全てを表現できるというか、細かい指示まで的確、オーケストラもマゼールさんの棒に機敏に反応して完全にマゼールさんの弾く楽器になってました。
始まりは普通のテンポかなって思ったんですが、アレグロになっても焦らずゆったり。第1楽章は全体としてかなりゆっくり目のテンポです。そして、金管楽器、特にチューバなんかの低音楽器とティンパニを鳴らす鳴らす。フィルハーモニアのティンパニの人、もともと叩き屋だと思うんですが、それがもうあり得ないくらい凶暴に叩いていました。マゼールさんの耳は全ての音に行き届いていて、どんな音もきちんと聞こえるし、へ〜こんな音あったんだと初めて気づかされる音もあってびっくり。フレーズなんかも曖昧なところがなく完全にコントロールされてます。マゼールさんのこの音楽に対する意志の強さを感じました。
第2楽章はかなり速め。で歯切れ良くリズムを刻んでいきます。ものすごくリズム感の良い演奏。片時の隙もありません。オーケストラの勢いに任せてマゼールさんが指揮の手を休めることがあったり、楽器の出をばんばんと指示したり、マゼールさん熱くなってます。第3楽章も同じ感じ。コーダからテンポが上がっていくところも面白くてマゼールさんの面目躍如。上手いですね、こういう表現。それにフィルハーモニアはもともとアンサンブルの上手いオーケストラだと思うけど、さらに磨きがかかって縦の線がぴったり、リズム切れまくり。
最後の楽章はちょっと間をとってから始まったけど、やはり明哲な意識的な演奏。情に流れずありとあらゆる音が常にしっかりとコントロールされてます。ゆっくり目のテンポだったと思うけど、なんだか短く感じました。マゼールさんって元気な人だって思ったけどさすがに終わったあとは疲れ切った表情でした。
聴き終わってマーラーの音楽を聴いたという感じがしません。マゼールさんの音楽を聴いた感じです。過去への憧れのようなもの、生への執着、諦念、別離、浄化みたいなものはほとんど感じられませんでした。そういう情の部分は大胆に切り捨てられていたように思えます。楽譜に記された音のみがあって、それでもう十分なんです。アブストラクティブな記号のような音楽。バッハの音楽に近いのかもしれません。もしくはもっともっと抽象的な図形楽譜の世界。そういう意味では21世紀の解釈なのかもしれませんね。これがマーラーかと言われると、すぐにはいとは答えられないけど、とても刺激的な知的な興奮を覚えました。情のない冷たい演奏かと言えばそうではなく、マゼールさんの熱い血のたぎった演奏。これがマゼールさんのマーラーの到達点なのかもしれません。明らかに音楽はひとつの極みに達していたと思います。マゼールさんは何をみているのでしょう?
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by zerbinetta | 2009-12-01 02:12 | フィルハーモニア | Comments(2)

Commented by 藤井 at 2009-12-10 10:52 x
本当にその通りです。zerbinettaさんの演奏評を読むと、そのまま私がNYPとの演奏で感じたことがそのまま的確に記されています。極端に抽象化されながらも、熱さのこもった演奏。私はこの虜になりましたが、ノットの演奏を聴いて、これも好きになりました。節操なくふらふらしていますが、マーラーの音楽が奥が深いと言うことで。
Commented by zerbinetta at 2009-12-11 09:57
音楽っていろんな解釈のされ方、演奏のしかたがあるんだと思います。それがきちんとなされていればステキな演奏になるし、わたしもいろんな演奏が節操なく大好きです。マゼールさんの演奏は、わたしがこの音楽に求めているものとは方向が違いましたが、でもとっても刺激的で共感できました。ニューヨークとの演奏もぜひ聴いてみたいです。マゼールさんの演奏からはたくさん考えさせられることが見つかると思うからです。それに何よりもマゼールさんの好きだし。

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