わたしの好きがふたつ   

shostakovich: five fragments, symphony no.4
szymanowski: violin concerto no.1
carolin widmann (vn), vladimir jurowski / lpo @royal festival hall


実はまた振られました。ほんとは今日はユリア・フィッシャーさんが弾くはずだったんです。とってもわくわくしていたんですが、ユリアさんは出られなくなっちゃってカロリン・ウィドマンさんが弾くことになりました。初めて聴くお名前の人です。がっかり。のハズだったんですが。。。何しろ曲はヴァイオリン協奏曲の中で一番好きと言っていいくらい大好きな曲。そして、大好きなのに初めて生で聴くシマノフスキ。そして、なんと!ウィドマンさんのヴァイオリンが素晴らしすぎることに! 感動するっきゃないでしょう。理想の演奏者を迎えた音楽の幸せなとき。ウィドマンさんの音色はまさにシマノフスキの求めた音楽そのもの。凍えた夜に聞こえる口笛のよう。冷たく澄んででも尖っていなくて。そして音が大きいのです。大きなオーケストラに対座して十分に渡り合える音量(もちろんオーケストラがヴァイオリンに覆い被さるようには書かれていないんですが)は、表現に余裕が出るし音楽が痩せないので美質だと思うんです。ちなみに、キャンセルになったユリアを初めて聴いたときの第一印象が、わ〜音大っきいでした。でも音色や音量のことばかり書くのは片手落ちです。音楽がとっても良かったから。オーケストラの出だしは細かい音符の速めのテンポでしたが、ヴァイオリン・ソロの伸ばした音からは一転ゆったりしたテンポになって、静かにたっぷりと音楽が歌われていくんです。不純物のない水晶のように透明なのに音が豊かで音楽が柔らかい。清廉で、でも精神的なエロスを感じさせる音楽。弦の上を流れる弓の圧力が心地良い。ひとつひとつの音に付けられるニュアンス、音のつなげ方、フレーズ、どれをとっても繊細で歌に溢れてる。音色は凛として冷え冷えと冴えてるのに、音楽には温もりのある歌がある。この人、現代の作曲家の作品をよく演奏してらっしゃるみたいなので、彼女からすればシマノフスキの新しいところも時を経て馴染んだものに映るのかもしれませんね。慈しむように歌われる音楽に心温まります。盛り上がるところも実に自然で澄み切った空のように星がきらめく。あああ、わたしにもっと詩的な言葉があったら。でも、語ることよりわたしの中の宝物にしたい、そんな演奏でした。(こんなこと言っちゃブログ書き失格よね)
ウィドマンさんは1976年生まれだから、ヒラリーやリサの世代とミドリや諏訪内さんの世代とのちょうど間。この世代のヴァイオリニストってわたし、あまり知らないんですよね。ミュンヘン在住だそう。ミュンヘンって確か、ムターさんやユリア、リサも住んでて、女性ヴァイオリニストの住みたい街第1番なんでしょうか。
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もうわたしはシマノフスキに大満足で、あとはおまけ、おまけみたいなモノと決め込んでいたんだけど、そのおまけがまた凄かったんです。これまた大好きなタコ4。ショスタコーヴィッチの交響曲第4番。タコの交響曲の中では8番と共に通好み。って通ってなんだよ、タコヲタなだけじゃないかって感じですけど。もちろん始まりからハイテンション。鋭く尖った高い音の木管楽器が耳に突き刺さります。一瞬にしてタコの世界に。この音なんですよね〜、タコって。そしてそのあとに来る怒濤の行進。速いテンポ、そうだ、ユロフスキさんの基本テンポって速めなのよね。ユロフスキさん、自国の音楽がほんと大好きなんでしょう。ロシアものをもう何回か聴いていますが、いつも自信に溢れて一点の隙もない。このショスタコヴィッチも同じ。音楽に同化するような勢いでオーケストラを完璧にコントロール。それに応えるロンドン・フィルも熱いし上手い。金管楽器も打楽器もそして弦楽器もいいんだけど、今回は敢えて木管。特に狂気の小クラリネットとピッコロは凄かったです。こうでなきゃ。第1楽章の弦楽器が速い音符でフガートで入るところはオーケストラが壊れる寸前のテンポで手に汗握りまくり。でも、ここでもぴたりと合わせてくるオケに脱帽。ほんと凄いもの聴きました。マイクがたくさん立っていたので録音されたのでしょうか。ユロフスキさんの指揮でタコの交響曲全集を出して欲しいです。あっシマノフスキも音盤になればいいな。
実はタコ4は、わたしにはまだよく分からない音楽です。CDでよく聴いてはいるんですけど、謎がたくさん隠されていそうで。引用も多くてどんな意味なのかなぁ〜って考えても分からないことばかり。この曲も多分、モーツァルトの魔笛やマーラーの復活なんかが重要なところで引用されてるよね。最後もハッピーエンドなんだか、悲しい終わりなのかよく分からないし。今日の演奏は例えば、マーラーの交響曲第9番の第1楽章の終わりのように清廉とした終わり方でした。なんか夢の中に墜ちていくような感じ。ユロフスキさんの演奏は、ショスタコーヴィチの持つ意味の難しさや複雑さをひとまず脇に置いて、音楽の凄さを分かりやすく伝えようとする若者らしい演奏だったと思います。精神性よりも音楽のスペクタクルに音楽そのものを語らせようとするような。そこのところでは少し不満が残るかもしれません。でも、交響曲第4番ってショスタコーヴィチ30歳の時の作品なんですね。もしかすると本質は若い勢いに迸る音楽と考えるのが正解なのかもしれません。音楽を聴いたあとの圧倒的な充足感はユロフスキさんの音楽とショスタコーヴィチの音楽がやはりしっかり共鳴している結果に違いないような気がしました。

今日の一番はじめに演奏されたタコの5つの断章はたった10分くらいの音楽。新ウィーン学派の3人の音楽の影響なのかしら、でもタコってミニマムに集中していくタイプじゃなくて拡大拡散していく傾向のある音楽家(だと思う)ので面白くはあるけど無理あるなかなぁ〜。もっと聴きたいって思っちゃうもの。タコらしい冷たいラルゴが聴けたのは良かったけど。交響曲第4番と同じ主題が使われたりしてたけど、作品番号隣り合わせなのね。

今日はバスに思いっきり水をはねられてずぶ濡れ状態になったり、風邪気味で頭が痛かったりしたけど、こんなステキな音楽会を聴けて幸せでした。
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by zerbinetta | 2010-01-16 08:13 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by かんとく at 2010-01-20 02:02 x
シマノフスキは初めてだったのでとっても印象的でした。また、別の曲も聴いてみたいと思います。4番も変化もあるし、奥が深そうな曲でした。お勧めのCDがあったら教えていただけますか?会場でLPOとハイティンクの4番が売ってましたが、その日の演奏とかなりイメージが違いそうな感じがしたのでやめました。もう少し何度か聴いてみたいと思いました。
Commented by zerbinetta at 2010-01-20 06:17
シマノフスキすてきでしょ。ぜひぜひ、他の曲も聴いてみてくださいね。
ショスタコーヴィチの交響曲第4番はわたしはゲルギーのを聴いていますが、今回の演奏と比べて割とゆったりとしてる感じです。ハイティンクさんの録音は結構評判がいいみたいですよ(わたしもイメジが沸かないんですが)。

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