あまりにも名演   

sibelius: luonnotar, symphony nos.4 & 5
helena juntunen (sp), osmo vänskä / lpo @royal festival hall


前回の交響曲第2番と第3番の音楽会があまりにもステキだったので、今日はそれを超えるのは難しいだろうな、ハードル高すぎるって思ってました。なのに、しっかり超えてきたよ〜〜。大感動。曲が前回のよりも深いから、ってのを差し置いてもやっぱり凄すぎた。
始まりは「ルオンノタール」という歌曲。かもの卵が割れて天や月や星ができる不思議に透明感のあるカレワラのお話です。10分くらいの単独曲。歌は前回と同じ、ソプラノのユントゥネンさん。やっぱりステキ。声が好きなんだからどうしようもない。そして声と音楽が幸せなマリアージュ。歌声は天に昇りお星様になりました
歌曲のあとは交響曲第4番。シベリウス好きにはたまらない曲と同時に暗くてとても取っつきにくい音楽。メロディが出てこないっぽいというか(実際には細かな旋律がたくさんあるんだけど)、盛り上がらないというか(たくさんの小爆発はあるんですけどね)、やっぱり親しみにくい。苦渋の音楽。これロマン派の音楽のようにメロディを期待したらダメだと思うんですよ。シベリウスは、和音や音色や強弱やリズムを旋律と同等に扱ってる感じ。調性的ではあるけれどもものすごい現代的。ヴァンスカさんの演奏はまさにその通りなのです。切れ切れの要素を丁寧に実に巧みに音楽の中にはめ込んでいく。音の移り変わりに身を預けるしかない。沈んだ心を持って暗い森の中を歩いているような音楽的風景。そう、シベリウスの音楽って風景のようなものを感じます。直接感情を表現するのではなく、わたしの外に空気を創っていくような。風景に心が共鳴して感動するのです。最後は森の中で妖精たちが盛んに飛び回っている感じ。フィンランドの森の中には今もムーミンやミーたちが住んでいるのかしら。多分それは信じられるもうひとつの世界なんだと思います。わたしにはものすごい演奏に感じられました。多分多くのお客さんもそう思っていたに違いない。休憩前にもかかわらず指揮者を呼び戻す拍手が多かったです。

休憩の後! まだ音楽会は続くのです。交響曲第5番。第4番とは対照的に素直に盛り上がるしポジティヴに感動的です。それにしてもあの第4番のあとに聴くのかぁ。かなり大変。というのはオーケストラも同じだったらしく、最初のホルンに小さなとちり。それからしばらくわたしにもオーケストラにもどことなく集中を欠くような感じが見受けられて、ああ大丈夫かな〜なんて思ったんですが。第1楽章の真ん中の思いっきり粘る箇所でヴァンスカさんがオーケストラにエネルギーをため込んでいって、果敢にアチェレランド。オーケストラを煽る煽る。トランペットとかに冷静さが残っててふふっ。全員で暴走したらそれはそれで楽しそうだけど、音が荒れないのは良かった。ここで完全に吹っ切れた。最初の涙がぽろり。あとはもう熱い音楽。ヴァンスカさんってリズムの取り方がとってもいいんですよね。シベリウスの音楽の中にこんなに舞曲の要素があったなんて。舞曲は音楽の根っこだからね〜。シベリウスの音楽で良く聞かれる弦楽器の速いパッセージの囁き。これが対向配置で振り分けられたヴァイオリンで森のあちこちから聞こえてくる葉っぱの揺れる音、妖精のささやく声のようにとっても魅力的に聞こえるんです。それに、フレージングの上手さ、一瞬のびっくりするような間の取り方、強弱の付け方、音の速さ、もう全部とことん決まってる。そして最後の感動に向かって音楽を追い立てる、絶妙な手綱さばき。最後は一直線にエネルギーを解放するかと思ったら、じらすじらす。ああここでいくと思ったらじらされて、またエネルギーをため込んで今度こそと思ったらまたじらされて。熱いものが身体の中にどんどん蓄積していって。ついに最後の最後、オーケストラのトゥッティの和音の強打の間の焦らされて緊迫した休符。ヴァンスカさんが指揮簿を振り下ろして次の音を引き出すまでの息を飲む緊張感とエネルギーのさらなる蓄積。これが数回繰り返されて最後はティンパニの強打を伴ってついに閃光のようなオルガズム。これ、ほんとに凄かったです。いっちゃった。涙ぼろぼろでした。

今日の音楽会はいつものBBCラジオ3によって録音されました。放送は2月15日午後7時から(グリニッジ時)だと思います。オンデマンドでそのあと1週間聴くことができるんじゃないかしら。交響曲第4番は弱音の表現が多かったのでマイクでどう捉えられているのか心配ですけど。
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by zerbinetta | 2010-02-03 07:29 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by 藤井 at 2010-02-07 13:30 x
BBCの放送楽しみにします。ヴァンスカ・ラハティ響のコメントは上記URLを参照願います。シカゴ響との第五番を聞きましたが、基本的に音楽の作りは変わらないと思います。
Commented by zerbinetta at 2010-02-09 05:52
藤井さんのCD評はいつも読んでますよ。最近は先入観を持ちたくないので音楽会を聴いてからですが。
BBCの放送楽しみですね。全部録音してくれなかったのが残念。MP3ライブラリー増えたのにっ。

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