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かっこいい涙   

ravel: le tombeau de couperin, pavane pour une infante défunte
debussy: nocturenes
fauré: pavane
poulenc: stabat mater
claire booth (sp), yannick nézet-séguin / lp choir, lpo @royal festival hall


ネゼ=セガンさんとロンドン・フィルハーモニックによるフランス音楽の夕べ第2夜。まずはラヴェルの「クープランの墓」から始まりました。この曲、この間BBCシンフォニーで聴いたばかり。どんな違いが出るでしょう。ロンドン・フィルの音色はクリアで重くならないのでラヴェルの音楽には好ましいのですが、わたしにはまだ、オーケストラが暖まってないなって感じがして少しもの足りませんでした。続く2曲目の「なき王女のためのパヴァーヌ」は大大大好きな曲なんですけど、舞曲らしい少し速めのテンポで優雅なんだけど、全体的な統一があまり取れていない感じがしました。各節ごとのテンポが微妙に統一されていないというかかくかくと引っかかっちゃう感じ。
この間はドビュッシーよりラヴェルの方がいいなと思ったんですが、今日は反対にドビュッシーの方がいいなって感じました。「ノクチュルヌ」はステキな演奏でした。音もシャープになって、ドビュッシーの書いた淡い曇り空のような色彩感が生きていました。ただ、合唱が少し弱かったかな。ロンドン・フィルハーモニック合唱団はアマチュアの団体なので比較するのは酷だけど、この間、モンテヴェルディ合唱団聴いたばかりだからなぁ。各パートでも個々の声が統一されていないので(音程が悪いとかリズム、発音が悪いという技術的なものではなくて声質が)、荒く聞こえてしまいます。

でも、今日のメインはドビュッシーの「ノクチュルヌ」でもなく、静かに柔らかな雰囲気で演奏されたフォーレの「パヴァーヌ」でもなく、なんといってもプーランクの「スタバト・マーテル」でしょう。曲自体が力のある音楽だし、わたしもプーランクは大好きなんだけど、それを差し引いても感動的な演奏でした。深刻な部分は深刻だし、プーランク特有のおしゃれな表現もとっても決まってたと思います。最初っから尋常な雰囲気じゃない感じで始まって、悲しいんだけどかっこいい。かっこいい悲しみ方ってあると思うんですね。マリアの悲しみがそれ。彼女の息子は神の御子なんだから。彼女の涙は人類の涙でもあるのです。公の涙。かっこよくなければならないんです。
ソプラノを歌ったのはクレア・ブースさん。リサ・ミルネさんが予定されていてプログラムにも彼女が印刷されていたのですが、急遽代役。2004年のキャスリン・フェリア・コンクールのファイナリストだった若い人。ブーレーズさんのもとでピエロ・リュネールを歌ってるんですね。声で圧倒するタイプではないけれども(キャリアを見ると古典と近現代曲が多い)、表情のある丁寧な歌い方でとっても良かったです。かわいらしい感じの人でしたよ。若い人は好きなので、心に留めて応援していきましょう。
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by zerbinetta | 2010-02-13 10:01 | ロンドン・フィルハーモニック

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