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まるでオーケストラのような音楽   

bach: partita nos. 3, 1, 2
julia fischer (vn) @wigmore hall


振られ続けるとかえって愛おしさがこみ上げてくるのよね。彼女との出逢いは2004年の春だから今から6年ほど前。リサイタルでバッハ、モーツァルト、グリーグ、プロコフィエフとカラフルなプログラムを弾きました。わたしの第一印象は、わ〜音大きいでした。彼女はヒラリーやリサとほぼ同世代とつい今日まで勘違いしてたんですが、実は1983年生まれの26歳だったのですね。なのでヒラリーとアリーナの間の世代ということになります。わたしが聴いたのは彼女が20歳の時だったんですね。ロンドンに来てから、彼女のヴァイオリンがクレジットされてた音楽会は2回あったんです。で、わたしは楽しみにしてたんだけど、なんとどちらもキャンセル。がつーーん。とショックを受けていたところに、ウィグモア・ホールのサイトを見ていたら、なんと彼女がバッハの無伴奏を全曲弾くというじゃないですか。第1日目がソナタを3曲、第2日目がパルティータを3曲。前に聴いた、アリーナの一晩で全6曲を一気に弾くというのも凄かったけど、2日に分けたとは言え全6曲をいっぺんに弾くというのは凄い凄い。1日目は他の音楽会があって聴けなかったけど、2日目、パルティータの回を聴きに行きました。
ウィグモア・ホールは初めて行くホール。チューブだとボンド・ストリート。わたしには場違いの高級ショッピング通りのそばです。日本でいうと銀座とか? ウィグモア・ホールは席数が500くらいの小さな室内楽専用のホールです。残響は決して長くないけれど、とても良い響きがすると感じました。エントランスの雰囲気もなかなかです。

ユリアの第一印象は、やっぱり音が大きい!でした。アリーナがささやくようにバッハを弾いたのに対して、ユリアは朗々と弾いています。最近、無伴奏ヴァイオリンはアリーナの演奏で親しんできていたので、ユリアの演奏に慣れるまでちょっぴり時間がかかりました。ユリアの演奏の特徴のひとつはリズムがおそろしくきっちりしていることだと思います。かちかちかちと正確に刻んでいく感じ。付点リズムがとっても鋭くて、ああバッハはフランス風序曲を書いてるんだなぁって気づきました。今回は聴けなかったけど、ソナタ第2番のアンダンテをどんな風に演奏するのか聴いてみたいと思いました。それから、音色がとっても多彩。一挺のヴァイオリンなのに、まるでオーケストラを聴くようです。伴奏と旋律で音色を分けたり、フレーズごとに違う音色で弾いたり。ピアニストの感覚なんでしょうか。正直これには驚きました。
今日のバッハはどれもとてもステキだったんだけど、クライマックスはやっぱり、最後に弾いたパルティータ第2番の(第3番、第1番、休憩、そして第2番の順に弾きました)シャコンヌでしょう。彼女の音量が大きなことを生かしてのほんと、オーケストラみたいな壮大な演奏だったと思います。全くアリーナとは対照的。同じバッハでもこんなにも違うんですね。どちらが良いか、どちらが好きか、という次元じゃなくて、どっちもステキ。八方美人的だけど、きっと、アリーナのバッハが聴きたくなる日もあれば、ユリアに圧倒されたいと思う日もあるでしょう。音楽の演奏が一通りしかないなんて考えるのはつまらなすぎ、いろんな演奏を好きになった方が楽しいでしょ。節操ないのかなぁ、わたし。
あっ、アンコールにはバッハとパガニーニをミックスした曲。誰の何という曲か分からないけど、きっとヴァイオリニストがバッハの無伴奏とパガニーニのカプリスを融合したアンコール・ピースを書いたんじゃないかしら。怒りの日のメロディががしがしと聞こえてきておもしろ〜い(わたし怒りの日フェチなんです)。
それにしてもまたしても末恐ろしいヴァイオリン女子。若手ヴァイオリニストにはどうして女性が多いのでしょうか。出てこい、イケメン・ヴァイオリニスト!
まるでオーケストラのような音楽_c0055376_8432841.jpg

by zerbinetta | 2010-02-14 08:42 | 室内楽・リサイタル

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