びよら大活躍   

mozart: symphony no. 39
bruckner: symphony no. 4
kurt mazur / po @royal festival hall


またまた懐かしい顔。クルト・マズアさん。わたしのUS時代、ニューヨーク・フィルの音楽監督でした。ニューヨークでは何回か彼の演奏を聴いていますし、彼がニューヨークを離れる年、ワシントンDCでも聴きました。マズアさんって「来るとまず合わん」とかって言われてるんですね。確かにまず合わんかった演奏を聴いたことあるのですが。。。でも、なんか不思議な味のある指揮者なんです。見かけによらず長身だし、見かけによらず高齢だし。指揮台から落ちてみたり。でも、お元気そうで安心しました。もう80歳を過ぎてるのに、椅子を使わず、2曲とも暗譜。凄い凄い。

最初はモーツァルト。わたしの大好きのひとつ交響曲第39番。これがまた不思議な演奏だったんですよ。とってもソフトで。最初のトゥッティからなんか音を抑えた感じ。そして、今日はフィルハーモニアのティンパニの人がいつものアンドリュー・スミスさんじゃなかったんですよ。そしたらティンパニ弱め。オーケストラの中に入って音を支えてるような叩き方。スミスさんだったらばしっとオーケストラに楔を刺すように叩くのに。それは今日のマズアさんの音楽とは違うのですが。わたしとしてはちょっと残念です。ティンパニひとつでオーケストラの印象が、音楽の印象がだいぶ変わってしまうのは面白いですよね。でも、スミスさんがこの音楽でどういう風に叩くのかもききくらべてみたかったな。もちろん無理な相談なんだけど。
ゆっくりと柔らかに立ち上がる第1主題。経過句はちょっぴり活発。わたしはコープマンさんの溌剌とした演奏やアーノンクールさんのアグレッシヴな演奏のCDで聴き慣れてるので、ちょっと戸惑い。それにしても何という演奏スタイルなのかな。一昔前のタイプ? でもそれはそれでのんびり優雅に聴く感じで、ふわふわと音楽は染み込んでくるのです。ぎりぎりのところでイージー・リスニングから画してるのも微妙なバランス。そしてそれに応えてフィルハーモニアの音も柔らかくて綿飴のよう。

そして、休憩後はブルックナー。マズアさんのブルックナーは初めて聴くと思ったのですが、日記をひっくり返してみると2002年にロンドン・フィルと来米したときの公演を聴いてるんですね。そのときの日記のタイトルが、「ブルックナーが。。。」。ふふふ、びっくりしたというか面白かったというか。今日の第4番ではなく第7番の演奏なんですけど、手前味噌ながらそのときの日記を引用してみましょう。

ー引用ここからー
さぁ、問題はブルックナーなの。マズアさんはわたしの記憶ではニューヨークフィルでこの曲や第4交響曲をたびたび採り上げてたので、この曲好きなんだなって思ってたの。だからすてきな演奏になるのに違いないって。そして、弦楽器のトレモロの霧のむこうに聞こえてきた音楽は、あっ?!と心の中で叫んだようなびっくり。遅いの。なんだか旋律が崩れちゃうくらいに。ううむ。第2主題や第3主題は普通のテンポなんだけど、第1主題だけがゆっくり。それから、全部の音は聞こえているのに、対旋律が浮かび上がってこないの。前に、スクロワツェウスキーさんが振ったナショナル・シンフォニーで同じ曲を聴いたときは、対旋律がよく聞こえてきてセカンド・ヴァイオリンを弾いたら楽しそうだなって思ったのだけど、今日は一所懸命耳をこらしてみたのだけど、音がかたまって聞こえて横の線には聞こえないのね。ふぅん、演奏によってこんなにも違うものかって改めて思っちゃった。わたし的にはちょっとタイプじゃないわっても思ったの。それにしても金管楽器が結構鋭い抜けるような音で、あっこれってニューヨークフィルみたい。もしかして、こういう強靱なはっきりした音がマズアさんの目指す音なのかなって思っちゃった。そういわれてみると、思い当たるふしがたくさんあるけれども、なんだかマズアさんの穏やかそうで剽軽な面影とはちょっと違うな。イメジ変えなきゃ。ブルックナーの方は第2楽章に進んだのだけど、奇跡はここで起こったの。演奏は、シンバルや打楽器の入らない版、わたしは版のことは詳しくないのだけどノヴァーク版?わたしとしては、シンバルもトライアングルも入れて盛り上がって欲しいと思うのだけど。音楽の重心をここに持ってきて欲しいから。で、う~ん、盛り上がらないなぁって思ってたの。ところがマズアさんの設計は重心をこのあとに移していたのね。コーダの部分はブルックナーがワグナーの死を聞いて書いた追悼の音楽なのだけど、マズアさんはここに全曲の重心を持ってきたの。ワグナーチューバとホルンが慟哭の叫びのように、荒いけど悲痛な心の痛みを伴う音で鳴ったの。ここで音楽は変わったわ。いままで、何だかよく分かんないブルックナーだわって思っていたのに、ここから真摯な音楽になったの。マズアさんの雰囲気も変わったしオーケストラの音も明らかに違うの。そこからはわたしは音楽に飲み込まれっぱなし。第3楽章のスケルツォは、もうすごくかっこ良くてリズムが切れまくって、今まで聴いた中で一番って思ったくらい。第4楽章も。金管楽器の荒々しい主題が悲しみの叫びに聞こえるの。わたしは、正直に言うとこの解釈はかなりへんてこなことになってると思うけど、わたしのブルックナーではないけど、マズアさんの演奏はとても面白かった(interesting)。すごいものを聞いたって得した気になっちゃった。
ー引用ここまで(zerbinetta complex oct. 2002)ー

曲目が違うので一概には言えないと思うのだけど、今日のブルックナーの第4交響曲「ロマンティック」は、やっぱりわたしにとって不思議な味わいのあるものでした。違う違う〜と思いながら妙に納得できるというか。まず始まりは、弦楽器のトレモロがちょっと弱いなって思ったけど、ホルンはなかなかステキな雰囲気でした。ところが旋律を木管楽器が引き継いでから、素っ気ないというか冷たいというか。前にマズアさんのとおっても無機的で異様なマーラーの交響曲第1番の始まりを聴いたことがあるので、今日の演奏もそうなっちゃうのかなって思ったら、楽器が増えてきてからは普通の感じに戻りました。もしかして上手くいかなかったの?っても思ったけど、再現部の方で同じような進行の部分も同じように演奏していたのでこれがマズアさんの表現なんでしょう。テンポは第1楽章では振り回すことはなかったけど、でも場面場面で微妙にテンポを変えて、スマートな演奏。イン・テンポで押し切る朴訥なタイプではないんですね。第2楽章の行進曲風のところなんかはゆっくりと逍遥するような感じでとても爽やか。結構いい感じでしょ。
そして、以前に聴いたのよりも印象が大きく変わってる部分があります。それは内声の扱い。今日は内声がとっても良く聞こえてきました。それも強調した風でなく自然に。特にヴィオラがステキでした。まず感動したのが、第1楽章の真ん中で金管楽器が朗々と盛り上がってるところに、絡んでくるヴィオラ。トップの人が体を揺するようにして大きく弾いているのをみんなが熱く追いかけて、今日はここが一番じんわりと感動しました。それにしても、この曲ってヴィオラが大活躍なんですね。そこここでヴィオラが一番大事なパートを弾いてます。びよりすと大喜び。びよらって普段日が当たらないですからねぇ〜。びよら・じょーくがあるくらい。でもここでは大活躍。もうみんな嬉々として弾いてる様子でしたよ。ふふふ、それは穿った見方かもしれないけどね。でもトップの人はとにかく熱く、みんなをぐいぐい引っ張ってた。こういうの大好き。演奏のあと、マズアさんはヴィオラだけ立たせてみたり。ヴィオラを立たせるのは珍しいでしょ。
第3楽章のスケルツォはぼんやり聴いてたらあっさり終わってしまったのでびっくり。ダカーポのあとはリピート省いてたのね。律儀に主部をダカーポするブルックナーの書き方はときにくどく感じるのでこういうのもアリかな。だって長いもん。
マズアさんのブルックナーで一番面白かったのは最終楽章。ここではテンポを大きく動かして、聴いたことのない感じのブルックナーに仕上げてました。でも、最初に書いたようにことごとく納得できるんです。それはきっとただテンポをいじっただけではなくて、そのテンポに合った弾かせ方、音作りをきちんとしてたからだと思います。マズアさんって結構狸オヤジ。飄々とした顔をして、指揮棒を使わずに最小限の手の動きしかしないのに、思いも寄らないユニークな音楽を奏でてくれる。わたし、もしかして彼のこと好きかも。いつまでも元気で、まだまだステキな音楽を聴かせてください。
c0055376_10292155.jpg
マズアさん。振り返ってるのはヴィオラのトップの人。今日はゲスト・プリンシパルのジリアクス(ylvali zilliacus)さんでした。彼女、ソロや室内楽でも活躍してるのね。
[PR]

by zerbinetta | 2010-02-18 10:27 | フィルハーモニア | Comments(2)

Commented by G.G. at 2010-02-24 22:28 x
引用は7番の感想ですね?
マズアさんはライプツィヒが長いから、ハース版が馴染んでるんでしょうね。
こっちでももっとブルックナー聴けたらな~(笑
Commented by zerbinetta at 2010-02-25 08:49
あちゃ〜ごめんなさい。紛らわしですね。そうです、交響曲第7番のです。直しておきました。ご指摘ありがとうございました。
こちらでもブルックナー頻度はそんなに高くありませんよ。まだ交響曲の0番から3番までは聴いたことありませんし、ミサ曲なんかも聴いたことないです。

<< うわっまたやっちゃった〜〜とデジャヴ まるでオーケストラのような音楽 >>