男の世界   

shostakovich: suite from the nose, symphony no. 1, the gamblers (operatic fragment)
mikhail urusov (tn), viacheslav voynarovskiy (tn), sergei leiferkus (br),
vladimir ognev (bb), sergey aleksashkin (bs), mikhail petrenko (bs)
irina brown (dir) / vladimir jurowski / lpo @royal festival hall


ロシアってなんだか白黒のウオツカと男の世界だと思う。と勝手にイメジ。ってか、これはムソルグスキーとショスタコーヴィチ(タコ)から。だって、ムソルグスキーのオペラって出てくるの男の人ばかりだし、なんてタコはムソルグスキーのファンだから、すでにバイアスかかってるけど。チャイコフスキーなんかのバレエを観てるとカラフルで女の人もたくさん。
さてそんなモノクロームのマニアックなタコの音楽会。何しろ曲目がオペラ「鼻」からの組曲、交響曲第1番、そして未完のオペラ「賭博師達」の断片。タコ好きにはたまらないというか、実は交響曲第1番以外は聴いたことなかったし、交響曲も実演では初めて。2曲はオペラ関係で歌手も出るけど、男声ばっかり。地味といったら地味だけどかえって女性ファンの心をくすぐる? タコは女性ファンが割と多いのですよ〜。

「鼻」の組曲は序曲と6つのシーンから取った音楽のようです。歌は入るけど、オペラのストーリーを追えるものではなく、っても荒唐無稽の物語なのでストーリーはなくても大丈夫。あらすじはわたしもあとで知ったんだけど、正直会場では字幕を読んでも何のことか分からなかったし、何しろ一人歩きする鼻と自分の鼻を捕まえようとする人の話。でも、音楽は圧倒的に良かった。金管楽器もひとりずつの小さなオーケストラだけど、打楽器は12人くらいいて、賑やかで面白いの。音楽も若い頃のタコの前衛的で力強い感じがとっても良くて、で、この音楽、タコ22歳の頃の作品なんですね! 天才ってほんと、凄いっ。音の煌めきの放つ強烈なエネルギーは若者にして天才にのみ創造を許される特別なもの。演奏もとっても良かったです。バリトンのレイフェルクスさんはメトでもよく歌ってたので、何回か聴いたことがあります。相変わらず張りのあるたっぷりと深い声で、ステキです。安定感抜群。テナーのウルソフさんは初めて聴く人でしたが、こちらもどっしりと安定。暗めのトーンがむちゃステキです。これから世界に羽ばたいていく優れたロシアン・テナーのひとりになるでしょう。オーケストラはピッコロが凶暴で良かったです。ピッコロってオーケストラの楽器の中で一番凶暴なんじゃないかしら。ねっ。

交響曲第1番はタコの出世作。才気溢れた音楽はとってもステキ。希望と野望に輝いてる。ユロフスキさんの演奏は、ちょっと辛口だけど、普通。上手く捌いていたと思うけど、一歩つっこんでいくところがないように感じました。若さゆえの煌めきをもっと表現して欲しいし、そういう全体を壊すようなドキリとする表現があってこそ音楽が生きると思うんです。安全運転はわたしにはつまらないし、タコの若い棘をなめらかに磨いちゃったら、きれいだけど違うものになっちゃうよね。

賭博師達は未完のオペラの作曲された部分です。タコは全25曲のうち最初の8曲を作曲して作曲を中止したそうです。なのでお話は完結してません。字幕はちらちら見る程度で音楽に集中することにしましょう。オーケストラの前にテーブルを配置してセミ・ステージドの演奏です。オーケストラが席について、リーダーと指揮者がテーブルで遊んでます。会場係の人がリーダーに耳打ちをして、音合わせを始めます。そして気の乗らない指揮者に指揮棒を渡して指揮台に追い立てます。音が鳴る前から音楽が始まってたんですね。もちろんユロフスキさんもいやいや演奏を始めた訳じゃないですよ。オペラの公演と違って動ける範囲が狭く、舞台装置もほとんどないセミ・ステージドですから、演劇的要素は少なく、歌手達はほとんど自分の席について歌うんですけど、賭博場での会話で成り立ってるオペラなのでそれで十分。歌手は男声ばかり6人で華がないんだけど(ハナがないって「鼻」とかけてる?)、タコの音楽にぴったり渋い。暗くはないんですよ。ユーモアのあるお話だし。渋いんです。男の匂いって感じかな。歌手では先に歌ったお二人はもちろん良かったんだけど、バス・バリトンのオグネフさん(この人、自然で剽軽な演技も良かった。プロフィールを見ると役者もしてるんですね)とバスのペトレンコさんが印象に残りました。オーケストラの演奏も良かったです。ユロフスキさんはオペラに向いてるんじゃないかしら。劇場で聴いてみたいです。
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by zerbinetta | 2010-02-24 04:44 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by dognorah at 2010-03-04 09:48
このコンサートは最初の2曲がとても良かったです。このように天才だった作曲家のその後はソ連という共産主義によってひどく歪められてしまったんだろうなと感じました。
賭博師達はこのように未完成なオペラをわざわざセミステージ形式でやる意味はあるのかと思いましたが、音楽だけだと良く分からない面もありますからよかったのかも。
Commented by zerbinetta at 2010-03-05 08:06
わたしもそう思いました。特に初めて聴いた「鼻」はぜひ全曲オペラを観たいと思いました。なんなら交響曲第1番のあとに「鼻」を全曲演ってくれてもよかったかも。
賭博師達の方は、確かに凡作かもしれませんね。作曲者も途中で投げ出しちゃったし。

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