それは残念だったけど   

handel: tamerlano
sara mingardo (andronico), kurt streit (bajazet), christianne stotijn (tamerlano),
christine schäfer (asteria), renata pokupić (irene), vito priante (leone),
graham vick (director), ron howell (choreography),
ivor bolton / OAE @royal opera house


久しぶりのオペラ〜〜。実は、今日のオペラにはドミンゴさんがクレジットされてたんです。でも、残念。体調不良で手術されたんですよね。降板になってしまいました。チケット代は通常料金より高い設定だったので、その分払い戻し。ロイヤル・オペラは出演者や演目によって値段設定が変わるんです。メトやワシントン・ナショナル・オペラなんかは誰が出ても同一料金だったんですけどね。ドミンゴさんはもう旬を過ぎたとか、もはや声は衰えてるとかいろいろ言われてるけど、わたしは大好きなんです。何しろワシントン・オペラの監督として切り盛りしてくれてたんですから。US時代、ドミンゴさんは何回も聴きました。指揮するのもね(これが意外とちゃんとしてるの)。なので親しみもあるんです。ドミンゴさんはさすがにオーラがあるというか、自分が歌うだけじゃなくってまわりの人を歌わせる雰囲気があるんですよね。ドミンゴさんと共演した歌手では、イドメネオでイリアを歌った若い頃のネトレブコさんやワルキューレのジークリンデを歌ったカンペ(anja kampe)さんがドミンゴさんにぐいぐい引っ張られて歌っていたのを印象深く覚えてる。今日の公演はキャリアはあるけど若い人が多かった(ロイヤル・オペラ・デビューが4人)ので、ドミンゴさんとどんな化学反応が起きるか楽しみにしてたの。なので、ドミンゴさんの降板はちょっと残念。でも、うんとうんとステキな公演でした。あらすじはこちらで(下の方)。

実はわたし、ヘンデルってあまりよく知らないから、長い(全部で3時間半以上)し退屈するんじゃないかなって心配してました。第1幕は、レシタティーヴォが多くて、オーケストラ・ピットには古楽器オーケストラのOAEが入っていたこともあって音量も小さめで、話の内容もまぁまぁな感じだったので、確かにちょっぴり退屈かも、なんて思ったりもしたんですが、お話が進むにつれて、俄然緊張感が出てきて、音楽も大きなアリアが多くなって特に第3幕はとってもドキドキしながら見入ってしまいました。終わってみるとめちゃ充実したオペラ。むちゃ良かったです。ほんと第3幕は、アステリアとバヤゼットの2重唱から始まって、毒杯を持って対峙するシーン、怒れるタメルラーノのアリア、死にゆくバヤゼットのアリア、最後の4重唱と聴き所満載。まぁ、多分当時の観客が悲劇よりもハッピー・エンドを好んだためか、ちょっとタメルラーノ改心速いよ、というか悲劇の中にお話を終わらて感が残ったんですが、でも、そこはさすがヘンデル、最後の4重唱ではアンドロニコとの結婚が許されて、一応ハッピー・エンドの当事者のひとりでもあるアステリアがステージに出ていなかったのは、このオペラが単なるハッピー・エンドじゃないぞ、と主張してるみたいで良かったです。

舞台は非常にシンプル。白と黒を基調にして、舞台装置としては大きな球体を踏みつけた足が舞台の中央につり下がっているのみ。囚われの象徴ですよね。幕が開いたとき、絵に切り取ったように出演者が動かずにいて、序曲が終わって再生が始まったかのように動き出すのもステキ。歌手以外には、登場人物の心理描写をしたり、群衆として背景にあったり、名もなき小姓となったり、マイムをする役者が十数人出演していました。この役者達は、動きを最小限に抑えたもので、歌手をじゃますることなくオペラの進行に重要な役を担っていました。カーテンコールのときにも全員が出てきて拍手を受けてました。白黒の色遣いはとっても効果的。白は、純粋、無垢の象徴でしょうか、バヤゼットとアステリアの父娘の色です。黒は背景。なのでニュートラル。また、個を消した色でもあります。高貴な色は銀と金。これは単独で使われることはなく、黒い服の上にどちらかの色が刺繍という形で入ってきます。これを着るのはアンドロニコとイレーネ、そして最後のタメルラーノです。さらにこの白黒の世界に緑や赤が闖入します。これらのヴィヴィットな色はタメルラーノの邪な心だったり、黒い感情だったり。

歌手は皆さんとっても良かったです。今日ドミンゴさんが歌うはずだったバヤゼット(実は主役)を歌ったストレイトさんは、もともとダブル・キャストだったので全然問題なしというか、むしろ凄く良かったです。タイトル・ロールのストーティンさんとアンドロニコのミンガルドさんのメゾのコンビは、どちらも声がソフトで全体の中にとけ込む感じだったので、もうちょっと前に出てこないかなぁと始め思っていたのですが、お終いの方の緊迫したアリアはとっても良かったです。シェーファーさんは期待通り。レオーネを歌ったプリアンテさんは出番が少なくもったいなかったのですが、とっても良い声のバスでした。イレーネのポクピッチさんも出番が少なかったですが、象の上でアリアを歌ったとき、大きな拍手をもらってました。この中ではストレイトさんとシェーファーさんがベテランで、他の4人はまだ若いのでこれからがとっても楽しみです。それにしても全員、演技が上手いです。そして表情がとっても細やか。
ボルトンさんの指揮するOAEはとっても充実していました。ほぼ弦楽器のみ、通奏低音にチェンバロは入るのですが、管楽器はオーボエと2本のフルートが数カ所参加するだけ。しっとりとした弦楽器は、とても豊かな音楽を奏でていました。バロック・オペラの古楽の響きって大好きです。
ドミンゴさんは残念だったけど、本当にステキなオペラを観ることができて幸せです。
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シェーファーさんとミンガルドさん、後ろはポクピッチさんとプリアンテさん
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うさ耳のストーティンさんとストレイトさん
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指揮者のボルトンさん
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by zerbinetta | 2010-03-05 09:16 | オペラ | Comments(4)

Commented by dognorah at 2010-03-09 10:29
同じ日に私と同じ左側からご覧になっていたんですね。本当にすばらしい公演で楽しめましたよね。記事のアップがメチャ早いですね。
Commented by zerbinetta at 2010-03-10 08:42
dognorahさん、近くにいらしたんですね。どきどき。
ほんとステキな公演でした。ドミンゴさんがいなくても十分楽しめたし、幕ごとにお客さんが減っていったのは残念でした。
(記事の日付は音楽会の日なんですよ。実際の投稿は少し後です)
Commented by かんとく at 2010-03-15 02:41 x
土曜日に行ったんですが、とっても良かったです。つるびねったさんがあらすじのリンクを張ってくれていたことに気がつかず、バカをしました。
Commented by zerbinetta at 2010-03-15 03:53
ふふふ、わたしもあらすじ見たの公演が終わってからですよ〜。
プログラムのあらすじを読んで観てました。
ほんと良かったですよね。また観たいって思っちゃう。

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