モード系?   

wagner: lohengrin -prelude act 3
tansy davies: wild card
bruckner: symphony no. 7
jiří bělohlávek / bbc symphony @royal albert hall


日本から帰ってきて、まだプロムスやってたので聴いてきました。ビエロフラーヴェクさんのブルックナー聴きたかったんだもん。最近、ちょっぴりブルックナーにはまってるんです。女子なのに。あっでも、交響曲第7番だけはブルックナー苦手なときでも大好きだったので(この世で一番美しい交響曲だと思う)、まっいいか。今日はとっても空いていて、昨日チケットを取ったときもたくさん残席があったし、開演30分前のアリーナ席は半分くらいしか人がうまってなく(最終的にはいっぱいになりましたけど)、なんだかとってももったいない気がしました。ブルックナーは人気ないんですかね。硬派路線は止めて、トレンドを担う女子に人気が出るようにきゃぴきゃぴの装飾音をかぶせたりオーケストレイションを華やかにしたりして受けを狙った方がいいかも。なんて悪い冗談を言ってると、真のブルックナー・ファンの皆様からお叱りを受けてしまいそうです。

音楽会はいきなり、ローエングリンの前奏曲から始まりました。派手派手の第3幕の方です。思いのほか軽めのワグナーで、結婚行進曲をちらっと先取りするクラリネットのソロがひょろろんとなったり、まぁ、軽く小手調べですから。こんな感じでよいのです、音楽会への誘いとしては。
2つ目は、タンシー・デイヴィスさんという方の新作です。今日が初演。ジャングルの底を虫がかさこそと這い回るような細かい音符のリズムや打楽器の音色から音楽が始まります。と書くとなんだか、気持ち悪いような気がしますが、わたしはジャングルも虫も好きなので心地良いのです。音楽も決して気持ち悪いものではないですよ。音が細かく分断されてるとは言え、意外に調性的でメロディアスです(歌えるってことではないけど、真ん中らへんではポピュラー音楽のような光が射しました)。難しいけどとっても聴きやすい音楽。ただ、聴き進んでいくと、短い部分が直列的に連なって構成されていく音楽に、もうちょっと主題の発展みたいな相互関係のある緻密な構成ができないかなぁ、なんてちょっぴり飽きてきました。でも、後でプログラムを読んでみるとこれで良かったんですね。この曲、ワイルド・カードは22枚のタロットカードをそれぞれ音楽で表していてぱらぱらとカードをめくるように構成されているんですから。わたしの聴いた印象がまさにその通りだったので、わたしも音楽を聞き間違えていないことにちょっぴり誉。ただ、だとしたら、タロット占いのように全体のカードの配列になにか意味というか謎が込められているような、もうひとつ深いところで頭を刺激する音楽であって欲しいような気がしました。もちろん、1回聴いたきりなので、そんな謎のヒントさえつかめていないのかもしれないんだけど、でも、音楽って一期一会だから(録音で何回も聴かれることを想定されている場合は除く)、1回聴いて何か心に引っかかるとっかかりは欲しいですよね。といいつつ、後半は、前半との関係性も出てきたみたいで散漫な印象はだいぶ薄れたんですけど。作曲者は30代後半の女の人。プログラムに載ってた写真を見ても、ステージに上がった姿を見ても、ショート・ヘアのファッショナブル系。かっこいい。

タンシー・デイヴィスさん
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お終いはいよいよブルックナーの交響曲。ヴァイオリンは対向配置。シンバルとトライアングルもあったので第2楽章の盛り上がりで打楽器が鳴る版でしょう。静かにトレモロが鳴って始まった音楽。ゆったりと大らかな歌。長い音符は伸ばし気味に上昇する音符たちはほんの少したたみかけ気味に。何もそんなにしなくてもと思ったけど、不思議に引き込まれる演奏です。今日は第2ヴァイオリンがとってもよく聞こえて、弦楽セクションも全体に良い音を奏でていました。BBCシンフォニーの弦楽器、意外にやるじゃん。でも、第1楽章は少し、各楽器間にばらばら感があって、ブルックナーにちょっと手こずってるかなぁなんても感じました。それでも、ビエロフラーヴェクさんとBBCシンフォニーは実に丁寧に音を紡いでいきます。ちょっとしたニュアンスの付け方がとってもステキで、円熟したブルックナーに聞こえました。前に聴いたネゼ=セガンさんの演奏もとっても良いのだけど(一番大好きなブルックナー指揮者であることには変わりありません)、巨匠的演奏を彷彿させる彼の演奏も、今日の演奏を聴いたあとでは、あっ若いなぁって思わせるところがあります。音楽が年輪を経た深いところから沸きだしている感じです。この楽章が終わったとき、会場は音楽に魅入られたようになっていました。第2楽章もメインはゆっくりのテンポ。第2主題ではテンポを速めて対比させます。わたし的にはここまで鋭く対比させなくてもとも思ったんです(インテンポ好き)が、これはもう好みの問題ですね。コーダがワグナーの追悼の音楽として書かれていることもあって、第2楽章全体が葬送曲のように勘違いされがちだけど、ビエロフラーヴェクさんの音楽は、そうではない、もっとすっきりと透徹な感じで、でも人の温もりが感じられる音楽。どこか普段のブルックナーと違う場所に連れて行かれる感じ。宗教的な慰めみたいのは一切感じなくて、音楽そのものの美しさだけ。音楽における精神性ってなんでしょう。この美しさの前には何もかも言葉を失うような気がします。なのにこんなの書いて。矛盾。
第3楽章は溌剌と。トランペットが一瞬だけ早く出てドキリ。そういえば今日の演奏には心臓がドキリとする瞬間が多いです。なんと幸せ。そして今日一番いいと思ったのが第4楽章。この曲、いっつも頭でっかちって言われて、前半の2つの楽章に比べると後半はいかにも軽いってよく言われるけど、今日はそんなことちっともなくて、フィナーレがとっても楽しめた。確かに短い曲ではあるけど、次から次にステキな旋律が出てきて、カラフルで楽しいし、バランスだって古典交響曲の範囲よね。心象的なバランスはベートーヴェンの英雄と同じくらいだもん。それに最初の楽章とも無理のない関連性も上手くいってるし、ブルックナーのフィナーレとしてはコンパクトにまとまってていい感じだし。もちろん、演奏が良かったからそういえるんだけど。
ビエロフラーヴェクさんのブルックナーは第5番に次いでこれでふたつ目だけど、もっと聴いてみたいです。

ビエロフラーヴェクさん、髪の毛とジャケットが見事にコーディネイト
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*音楽会の放送を聴いて少し印象が変わりました。録音で聴くと、ブルックナー、会場で聴いた印象よりずうっとまとまってる感じですね。第1楽章でばらばら感って書いてますが(会場ではそう感じた)、録音ではあまり感じません。出だしの旋律の歌わせ方も録音だとずいぶんスムーズに聞こえました。聴いた場所のせいかしら。大きなステージなので楽器の場所によって音が飛んでくるタイミングが違うからでしょうかね。
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by zerbinetta | 2010-09-08 09:01 | BBCシンフォニー | Comments(0)

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