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まずはお誕生日おめでとう 言いたいこといっぱいあるけど   

wagner: the flying dutchman, overture
stephen mcneff: concertO-duo for two percussion
kaija saariaho: d'om le vrai sens for clarinet and orchestra
stravinsky: the rite of spring
o duo (perc), kari krikku (cl), peter sellars (dir),
david robertson / bbc so @barbican hall


今日はBBCシンフォニーの80年のお誕生日です。80年前の今日、初めて音楽会が行われました。おめでとう。みんなでハッピー・バースデイを歌いました。わたしの声も入ってます。ラジオで聴いてみてね。
その音楽会、ワグナーのさまよえるオランダ人序曲で始まりました。なぜさまよえるかというと、この曲、最初の音楽会で採り上げられたからだそうです。指揮者は主席客演指揮者のデイヴィッド・ロバートソンさん。この人、アンサンブル・アンテル・コンタンポランの指揮者の経験のある現代音楽、得意な人です。現代音楽をレパートリーの大きな柱のひとつとしているBBCシンフォニーにはうってつけの指揮者ではないでしょうか。オランダ人序曲はゆったりするところを思いっきりゆっくりと演奏して、ちょっぴり間延びする部分もあったんですが、なかなか良い演奏でした。
今日の音楽会は、7時始まりで、BBCラジオで中継されるのかなぁって思ったら、いつものように司会者が出てこなかったのであれれと思っていたのですが、ここで司会者登場。来週の水曜日に放送されるようです(そのあとiPlayerでオンデマンド)。今日はお誕生日会なので、ここで、過去の指揮者の短いフィルム。パート1は1935年のボールトから1968年のブーレーズさんまで6人。ステージの上のオーケストラの人たちと一緒に観ました。BBCシンフォニーって昔から上手だったんですね。ブーレーズさんのときのは、その頃開発されたのであろう、最新鋭の映像の切り替え技術を自慢げに採り入れてるんだけど、今観るとかえって古めかしさを感じさせますね〜〜。これ、ここで観られますよ。

左側の人が好き
BBCシンフォニーの特徴は音楽会に現代の作品、委嘱作品の初演が多いということです。1日をつぶした(BBCシンフォニーが全日出演しているわけではありませんが)、ひとりの作曲家に焦点を当てた企画が年3回ありますし、今シーズン初演される(英国初演を含む)作品は10曲もあるんです。予算がしっかりしている放送局のオーケストラゆえでもあるのでしょうが、音楽の世界をリードしている姿勢が大好きです。もちろん、お誕生日のこの日、そのBBCシンフォニーらしく2つの作品が初演されます(クラリネットとの作品の方は英国初演ですが、どちらもBBCが委嘱した作品です)。ひとつ目はステファン・マクネフさんのふたりのパーカッションとオーケストラのための作品。曲名から分かるように今日のソリスト、オー・デュオのために書かれています。オー・デュオは若いふたりのパーカッショニスト、オリヴァー・コックスさんとオウェン・グネルさんのデュオ。ちょっとやんちゃ系の粋なあんちゃん(死語?)。わたしは左側の人がちょっとかっこいいなと思いました。音楽が始まってもソリストは登場せず、おややと思っていると、いきなり両ステージ袖から舞台に駆け上がってきて、バン。音楽を止めました。今日初演された2曲とも、舞台的要素が入った音楽でした。指揮台の左右に振り分けられたたくさんの打楽器を叩くんですが、ささっと移動して右側でふたりで叩いたり、わざと指揮者の前を駆け抜けて移動したり。打楽器って、ホント楽しそう、そして忙しそう。でも、いろんな楽器を叩けないといけないから大変そうです。とても面白い音楽だと思ったけど、実はよく聴いていませんでした。ずうっと打楽器を見つめて。耳に入ってくる音は打楽器の音ばかり。でも、楽しかったからいいや。音楽はネットで聴き直そう。終演後は会場にいらした作曲者もステージの上に呼び出されて拍手を受けてたけど、マクネフさんはごつい感じの人でした。休憩時間、ホワイエで、友達と談笑するオー・デュオのおふたり。意外と背が低かった(ちびのわたしが言うのもなんですが)。わたしと釣り合うんじゃない?なぁんて。

悶絶の超絶技巧
休憩の後はサーリアホさんのクラリネットとオーケストラのための音楽。タイトルは、フランスの中世の有名なタペストリー、貴婦人とユニコーンにちなんで。音楽もそれに合わせた6つの部分からなっています。わたし、これ観に行ったことあるんですよ。職業柄、ちょっと興味があったので。寓意に色取られた大きな、ステキなタペストリーでした。でも、音楽からそれを読み取ることはわたしにはできず、さっきプログラムを読んで初めて気がついたのでした。
この曲も音楽が始まってもソリストはステージにおらず。しばらくしてクラリネットの音が聞こえてきたのは会場の後ろの方からでした。クラリネットのソロ、特殊奏法満載で、と言ってもクラリネットとしての楽器を逸脱したものではないですが、もの凄く難しいと思うのだけど、カリー・クリックーさん、完璧。舌を巻くような超絶技巧の持ち主。っていうかもう神業。音量ゼロからのクレッシェンドも凄かったし、こういう人、ホントにいるんですね。今まで聴いた人では、この人と、あとトロンボーンのリンドバーグさん。奇遇、どちらもフィンランドの方ですね。
音楽の方は、クリックーさんが会場を歩き吹きしながら登場して、ベルをいろんな方向に向けたり回ったり、小さなパフォーマンス付き、ステージに上がっても、座ったり、奥の方で吹いたり、あっ一番奥にはスクリーンがあってそこには色が投影されていました。ステージはピーター・セラーズさんの演出によるもの。この曲も、クラリネットの凄さに悶絶しながらクラリネットばかり聴いていたので全体像がつかめていないんだけど、とってもいい曲だと思いました。ソロ・クラリネットとオーケストラの中のクラリネットの絡ませ方もとってもステキでした。これは最近流行のネオロマンティシズムではない、でもちょっぴり調性のスパイスの効いた正統派(?)現代音楽。これも、ネットで聴き直してみたいけど、会場を立体的に使った作品なので、上手く再現できるかしら。最後はクリックーさんがヴァイオリンの人たちを引き連れてステージを降りていくのだけど(ヴァイオリンの人たちは弾きながら会場に散らばる)、あっハーメルンの笛吹って思っちゃった。終わったあとは作曲者のサーリアホさん(女性の方だったんですね)と、後ろにラフな恰好でヘンな髪型の人って思ったら、演出のセラーズさん、が呼び出されて拍手を受けていました。

アスリートの春の祭典
この後、またフィルム。歴代指揮者のパート2。ルドルフ・ケンペさんから現主席のビエロフラーヴェクさんまで。こちらはカラーです。こうして年代順に指揮者を並べて見ると、指揮法も進化しているのがよく分かります。よりスマートになってる感じ。
最後は春の祭典。この曲のBBCシンフォニーでの初演は1931年の1月。オーケストラができた数ヶ月後ですからずいぶんと早い時期ですね。指揮者はエルネスト・アンセルメ。当時はどんな演奏だったんでしょうか。今日は、現代音楽得意なロバートソンさん(ブーレーズさんのお弟子さん)。ジャケットなしの黒いシャツスタイルで、颯爽と指揮していきます。踊るように、滑るように、スピーディーに。これがめちゃくちゃはまって、結構バーバリズム全開の分析的ではない混沌タイプなのにリズムが切れていて、聴いてるわたしまでカラダが動いてくる。運動性抜群のスポーティーな舞踏の音楽。これは良いですね。今日のオーケストラは弦楽器がとっても良くて、ざくざくとリズムが刻まれて爽快。反面、オーケストラの下の方の席で聴いたせいか、木管楽器が弦楽器に隠れちゃうところがありました。多分木管楽器を見通せるような席で聴いたら印象は変わるのでしょうけど。演奏後のロバートソンさんは終始にこやか。袖に引っ込むときも駆け足。若い若いってホントにまだ50代はじめなんだけど。オーケストラを讃えるときも、オーケストラの中から奏者を立たせたり、舞台の隅で挨拶したり、最後はリーダーの人と耳打ちして、鳴りやまない拍手の中、オーケストラを解散させました。7時に始まった音楽会もすでに10時過ぎ。充実したお誕生日音楽会になりました。

by zerbinetta | 2010-10-22 19:09 | BBCシンフォニー

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