今日のびっくり   

mendelssohn: symphony no. 5
mahler: kindertotenlieder
brahms: symphony no. 3
sarah connolly (ms),
vladimir jurowski / lpo @royal festival hall


ロンドン・フィルはマーラー記念年シリーズです。ロンドン・フィルのは、交響曲以外に重点を置いていて、オーケストラ付きの歌曲とマーラーがした編曲ものを採り上げるという気の入れよう。こういうのなかなかいい。今日は、亡き子をしのぶ歌。大好きなくせに気がついたら生で聴くの初めてでした。それにまずびっくり。

始まりはメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」。ユロフスキさんこの曲お好きなんですかね。聴くのひとシーズンぶり2度目です。前に聴いたとき、あれっ!とってもステキって思ったんです。ユロフスキさん、ハイドンもよく採り上げるし、古典と相性がいいのかなって。ユロフスキさんの演奏は、古楽の良いところを採り入れたもの。始まりのノンビブラートの弦の響きから音楽が際だっていました。そして今日のびっくり第2弾。コントラファゴットが2本も使われていました。2管編成なのにファゴット・セクションだけ4人。これが実に効果的で、コントラファゴットのう゛ぁーう゛ぁーと紙を振動させるような音色がまるで、オルガンの太い管のような響きに聞こえて、教会に鳴るこの音楽の雰囲気にぴったり。ヴァイオリンが対向配置でコントラバスをステージの後ろに並べたのも響きを上手く作るのに役立っていました。ユロフスキさんってメンデルスゾーンを振ると、前に聴いた夏至の夜の夢の演奏がそうだったんですが、もの凄い速さで音楽を走らせるという傾向(って2つしか聴いてないくせに)があるんです。今日もスケルツォでは、オーケストラがついて行けるのかしらってドキドキするようなテンポで音楽を進めました。でも、これがぴたりとはまってるんですよ。とってもステキ。金管楽器の強烈なクレッシェンドがもちょっと丁寧に決まれば満点あげたいんだけどな。でも、ユロフスキさんのメンデルスゾーンやっぱりいいっ。イタリアとかスコットランドとかも演ってくれないかなぁ。そうそう、話変わって、メンデルスゾーンってユダヤ人だけど、熱心なプロテスタントの信者なんですね。それもあってバッハのマタイ受難曲の歴史的な再演をしたり、今日の宗教改革もそんなメンデルスゾーンの心情が聞こえるようです。で、この曲の始まりの旋律、ワグナーのパルシファルで出てくるではありませんか。おお、引用かと思ったけど、ワグナーはメンデルスゾーンをユダヤ人の音楽家として毛嫌いしていたみたい。もともとのオリジナルである、ドレスデン・アーメンをふたり独立に引用したのでしょうか。

ユダヤ人の音楽家としてステレオタイプに語られることの多いマーラー。ウィーン宮廷歌劇場の監督になるためにユダヤ教からカトリックに改宗をせざるを得なかったマーラー。とか言うけど、ほんと? だって、マーラーの音楽からはキリスト教へのアフィニティの強さの方がより感じられる。まぁ、キリスト教と言っても、ゲーテのような、ワグナーもそうかな、女性信仰の気があるけど。
あっ閑話休題。2つ目はマーラーの亡き子をしのぶ歌。歌はロンドンで人気のセイラ・コノリーさん。今日は黒のシックなドレス、光に反射して見える金色が隠し味になっていました。さて、そのマーラー。わたしには少しあっさりしすぎかなって思いました。ユロフスキさんは、もちろんマーラーの音楽についてはよく知ってるし、聴いたこともあるのだろうけど、本人がおっしゃるように、採り上げ方は慎重。交響曲は毎年ひとつずつ採り上げていく姿勢なので、もしかしたら、マーラーの音楽の全体像をまだつかみ切れていないのかもしれません。亡き子をしのぶ歌は中期の曲だから、交響曲はまだ第3番までしか振っていないので(第4番も今シーズン採り上げる予定ですが)、まだ手探りなのかもしれませんね。実年齢もマーラーがこの音楽を書いた歳には達していないし。音楽はきれいだけれども、そのそこに流れる感情まで表現し切れていないように感じました。前に交響曲第2晩ですばらしい名演を聴かせてくれたユロフスキさんだけど、この曲は若さや勢いだけではいかんともしがたいものがあると思うんです。ちょっとネガティヴな書き方でしたが、でも、とっても期待してるんです。将来期待以上のことをきっとやってくれる音楽家だと思うので。

ブラームスは期待に違わぬ良い演奏でした。体験型のマーラーの音楽とは違って、ブラームスの音楽は若い人には若いなりの表現を受容できる大きさがあると思うんです。歳をとるとまた違った味も出てくるんですが。実は、ユロフスキさんのブラームスの交響曲はすでに第1番と2番がCDで出ていて、賛否両論あったのでいったいどんな音楽になるんだろうってわくわくしていたのです。が、わたしにはとってもステキなブラームスでした。ユロフスキさんは基調は速めのテンポで結構テンポを揺らすのだけど、それが音楽の流れをとても上手く誘導していて、自然に淀まず流れていくんです。和音進行でメロディ主体じゃないところでは思いっきりテンポを落として、特に第1楽章の後半の部分や第2楽章でそれが実に生きていました。メロディもためやフレーズを上手に作って丁寧に歌わせていきます。第3楽章の有名なメランコリックなメロディなんてとってもステキでした。それにこの音楽の精緻に書かれたリズムの面白さを鮮やかに聴かせてくれました。ユロフスキさんはオーケストラには自分の表現したいことをどんどん手(特に左手)で指示していくのだけど、見ているとオーケストラの側からも反応をもらってなんだか演奏者と対話しながら音楽を創っていくみたい。顔の表情も豊かで、でも基本ニヒル系、にやりとしたところはちょっと怖くもあり。。。って。そして今日第3のびっくり。第4楽章でホルンの走句で最後に音を延ばすところ(104小節目とか)、ゲシュトップかけたんですよ。楽譜を見るとこれ半音階なので古楽器の奏法から採り入れたんでしょうか。なんか驚いたけど、ぴったり決まってるような気がして面白かった。そしてまたまた第4のびっくり。最後、ティンパニの連打にリタルダンドをかけてトレモロからつぶつぶの音にしたんです。初めて聴いたけど、ステキでした。
今日はマイクがたくさん立っていたので、ブラームスは春に演奏される予定の第4番と合わせてCDになるのでしょうか。楽しみです。
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by zerbinetta | 2010-10-27 08:27 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by voyager2art at 2010-10-30 04:01
つるびねった様

こちらには初めてお邪魔します。僕も行きましたが、とてもいい演奏会でしたね。ようやくこのコンビの良さが納得できたので、これからは僕も頻繁に通うことになりそうです。
メンデルスゾーンでコントラファゴットを2本使っていたうちの1本は、セルパンの代わりですね。普通はチューバで代用することが多いのではないかと思うし、元チューバ吹きの僕としてはチューバで演奏してくれた方が嬉しいのですが、現代のチューバは音が大きいので、小編成で演奏することを考えるとコントラファゴットで代用したのは正解だったと思います。いずれにしても、本当に溌剌としてよく歌うメンデルスゾーンで、素晴らしい演奏でした。
Commented by zerbinetta at 2010-10-31 20:18
voyager2artさま、ここでははじめましてっ。
コメント嬉しいです。
メンデルスゾーン、ホントステキでしたね。2本目のコントラファゴットはセルバンの代わりだったんですね。チューバ吹きのvoyager2artさんには申し訳ないけど、おっしゃるとおり、わたしもコントラファゴットは名案だったと思います。
ロンドン・フィル気に入ってくださいましたか。わたしもロンドン・フィルってロンドンの他のオーケストラより1ランク劣るけど(って言ってもかなり高いレベルですよね)、今一番わくわくする演奏をしてくれるオーケストラだと思います。でも、これから忙しくなりますね。

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