じゃじゃ馬かも   

17.11.2010 @royal festival hall

strauss: death and transfiguration
mahler: rückert-lieder
ravel: daphnis et chloé, suites nos, 1 & 2
nathalie stutzmann (ca),
kazushi ono / lpo


タイトルは、最初の曲、シュトラウスの「死と変容」を聴き終わったときオーケストラに持った素直な感想です。最初の音が小さくヴァイオリンに出たとき、おやっ! ちょっと軽いと思ったんです。シュトラウスの音にしては薄い感じで。わたしはこの音楽はシュトラウスがワグナーの影響をもろに受けてる、ねちっこい音楽だと思うんですね。テーマも死だし。最初重苦しければ苦しいほど、後半の解決が生きてくると思うんです。だから、今日の軽めのトーン、クリアなすっきりした音作りでは、なんだかそれらしくないというか。ゆったりとたゆたう魂のような輪郭の曖昧な音が欲しいと思うんです。そこにあるんだけどよく見えない、音がするけど聞こえない、誰そ彼と心に問うような。そして、いつものロンドン・フィルの弱点が出てしまったというか、各パートの関連性が弱くて、なんだか音楽がひとつにまとまらなかったような気がするんです。指揮者の音楽作りが空回りしてるというか。なので、あまりのれませんでした。冷めた目で、耳で(?)聴いてました。ロンドン・フィルって結構乗りこなすのが難しいじゃじゃ馬かも。そう思うと、この間のジンマンさんは凄かったんだな。何しろオーケストラの音を根本から変えてしまっていたのですから。
紹介が遅れました。今日の指揮者は、日本人の大野和士さん。小澤さんの次の世代では最も活躍しているひとりですよね。だからなのか、今日は日本人っぽい人(ごめんなさい。中国人とか韓国人さんたちと区別つかないので)多かったです。わたし自身は初めて聴く人です。最初の出逢いはあまり上手くいかなかったみたいです。

2つ目はマーラー記念年シリーズ。リュッケルトの歌。もの凄くステキなラヴ・ソング。歌はナタリー・シュトゥッツマンさんです。始まっていきなりびっくりでした。だって突然、細かな音符の走る、「私の歌を覗き見しないで」が鳴り始めたんですもの。わたしの知ってる順番はいつも「私は仄かな香りを吸い込んだ」が最初なので、ポンと香りが弾ける木管楽器の音を期待してたんです。そしたらね〜。ってわけですよ。でも、この5つの歌はそれぞれ独立の音楽なので、順番は決められていないんですね。シュトゥッツマンさんの声は、人の声のような、というと変な言い方だけど、話し声のような味わいのある声。ホントに聴いてすぐ、あっ人の声って思ったんです。不思議ですよね。でも、クラシックの歌の声って、ときに楽器のように扱われるので、普段の人の声とはちょっと違うかもしれないんです(ということに気づかされた)。シュトゥッツマンさんは、響き抑えめで語るように歌ったのでそう感じたのでしょう。ラヴ・レターって全世界に向かって歌い上げるものではなくて、ひとりで密かに読むものだもの。ただ、わたし的にはもう少し、華やかさがあっても良かったかなとも思いました。シュトゥッツマンさんの声は、コントラルトで落ち着いた趣はあるけど、明るい華がないと聴きながら思ったのです。でも、音楽会が終わってしばらくした今はなんかしみじみと心に残っています。やっぱりラヴ・レターだったんだなぁって。そういえば、マーラーは「美しさゆえに愛するのなら」を実際ラヴ・レターとして書いてるんですね。アルマが見ていた、ワグナーのオペラの楽譜に密かに挟んでおいて。でも、アルマがなかなか楽譜を見ないので、焦れたマーラーは、アルマに楽譜を見てごらんと言ったとか。この曲だけは、マーラーはオーケストレイションしていないので、本当に個人的なラヴ・レターとして書いたのかもしれませんね。演奏は、4曲目の「美しさゆえに愛するのなら」と最後の「私はこの世に捨てられて」が良かったです。コール・アングレのソロも良かったし、特に最後の曲の、交響曲第5番のアダージエットの旋律が出てくるところが味わいがあってステキでした。あんな風に弦楽器に出られたら泣かないわけにはいかないじゃない。
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最後のダフニスとクロエは圧巻でした。わたしは全曲か第2組曲しか聴いたことがなかったんだけど、第1組曲というのがあったことを今日知りました。でも、第1組曲は正直、これだけで演奏されると退屈かなって感じで、どうせ演るなら全曲っても思うんだけど、できたらバレエで観たいなぁとも思ったのでした。大野さんがフランスやフランス語圏で活躍されてたことなのか、彼の音楽がフランスに親和性があるのか、オーケストラがフランスものに合うのか、それぞれの理由が少しずつ重なってると思うんですけど、前半で気になったばらばら感がここでは全くなく、ソロもオーケストラから飛び出しつつ音楽のまわりを回る衛星のようにひとつの音楽に留まっていてとっても心地良いんです。これはもしかしたら、よく言えば個性を大事にする、わがままな音たち(まるでフランス人)を上手にコントロールするラヴェルの技なのかもしれませんが、同時に指揮者の大野さんの技でもあると思います。明るく繊細できらきらしてる。大野さんも自信を持って音楽を作っているのが聴いてるわたしにもよく分かります。そして最後は大いに盛り上がって、会場のお客さんも大喜びでした。
大野さん、今、リヨンの劇場にいらっしゃるんですね。リヨンは近くに住んでいたことあるのに行ったことなくて、残念です。とってもきれいな町らしい。ポール・ボキューズにも行ってみたかったな。じゃなかった、大野さん、フランスを足がかりにぜひ、世界中で活躍して欲しいです。明晰な音楽を作るステキな指揮者さんです。

大野さんとリーダーのピーター・ショーマンさん
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by zerbinetta | 2010-11-17 09:46 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by G.G. at 2010-11-19 19:00 x
かれこれ20年前になりますが、大野さんの指揮で京都会館にてリゴレット観ました!
たしかトスカニーニコンクールで優勝してその帰国公演だったかと。
Commented by zerbinetta at 2010-11-20 22:33
20年前と言ったらわたしがまだはいはいしてた頃ですかぁ〜〜〜<ばきっ
わたしも大野さんの指揮でオペラ聴いてみたいです。

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