恋するっ   

19.01.2011 @royal festival hall

beethoven: piano concerto no. 5
mahler: symphony no. 5

nicholas angelich (pf),
yannik nézet-séguin / lpo


若手の中でピカイチの実力を持ち、最高のブルックナーを奏でてくれる指揮者、ネゼ=セガンさん。残念ながら今シーズンはブルックナーはないのだけど、マーラーはどんなことになるかとっても楽しみにしていました。小さな胸が期待ではち切れそう♪

でもその前に、前半は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番。今日は5番どおし、ヘヴィー・プログラムです。ピアニストはアンゲリッチさん。初めて聴く人です。出てくるおふたりをみて、ちょっと可笑しかった。縮尺が狂ってるぅ。だって、ネゼ=セガンさんは小柄、アンゲリッチさんは大きいんだもん。ネゼ=セガンさんが指揮台に立ってもアンゲリッチさんの方がまだ背が高いの。それから、ネゼ=セガンさん、髪の毛を短く刈ってなんだか若返ったみたいって若いんですけど、35歳。でもその音楽は、若々しさと共に風格すら感じるんですよね〜。
ベートーヴェンも堂々とした大きな器の音楽っだったのです。第1楽章のアクセントなんかは鋭く付けてはいたのですが、ゆったり目のテンポでのグランド・スタイルに近い感じ。特に第2楽章は、ゆったりと静謐。ロマンティックかというと、べたべたにはならずに結構さらりとした梅酒みたいな。ぐいぐいと押す、オーケストラだけでも立派な音楽。ただひとつ残念だったのは、最後の楽章にもうちょっと躍動感が欲しかったな。
アンゲリッチさんのピアノは、もうこれがステキステキ。堂々とした体躯から生み出される、余裕のある輪郭のはっきりした美音。いろんな色のフルーツ・シャーベットの固く凍ったキューブみたいに、透明感があって冷たいのに甘い。ひとつひとつの音が混じり合わずはじけるような響き。このピアニストいい。
アンコールには多分バッハの2声のインヴェンション(わたしバッハの曲はよく知らないので、確信はないんだけど、バッハぽかったし、2声だったし)。これがもうとんでもなくステキで、右手とバスの左手の音色をくっきりと弾き分けて、ピアノで同時にこんなに違う音色が出せるのかと、びっくりしちゃいました。右手はきらきらしてるのに、左手はフェルトで押さえたよう。ピアノの他に通奏低音が一緒に演奏しているんじゃないかと聞き間違えるくらいでした。その左手のメロディがとってもステキで音楽的。心臓の鼓動のように音楽の底で静かにでも絶え間なく鳴っているんですね。ものすごく心地良くって、あの左手に愛撫されたいって妄想。。。

休憩の後は、さあ、いよいよ小さな胸一杯のマーラーの交響曲第5番。先週は同じオーケストラで第6番の名演を聴いているので、どうなるのかどきどき。そして、この曲、実はわたし、マーラーの作品の中では苦手な部類。上手く共感できるかしら。
トランペットの灰色のファンファーレから始まって、最初の盛り上がりから、ネゼ=セガンさんの意志がなみなみと注がれていました。トゥッティの3連符の音が重いけれども鋭く切れのあるリズムで打ち込まれると世界は、灰色の広々とした記憶の澱。葬送の行進が、引き摺るように重く続いている。悲しみに泣く者、皮肉に笑う者、叫び声を上げる者、虚無に沈む者、仕切る者、ただみている者、たくさんの人たちが、灰色の薄いカーテンの後ろでモノトーンで行進している。わたしはイメジを視覚に広げすぎ? でも、ストーリー性のあるドラマではないけど、音楽から情景が浮かんだの。ネゼ=セガンさんは、運動選手のような激しい身振りで的確に音楽を紡ぎ出していきます。緩急をものすごく上手く付けて、時間の長さを引き延ばしたり縮めたり。このテンポ感は絶妙で、すべからくわたしのツボ。葬送行進曲のゆっくりとした歩み、第2楽章のファンファーレでのアチェレランド。第3楽章の伸縮自在ワルツ。分析的ではないロマンティックな解釈。それでいて聞こえる全ての絡み合う音。第4楽章は、ゆっくりと思い入れたっぷりに弾かれると思ったら、絶妙なアダージエットのテンポ。やっぱりさらりとした梅酒だわ〜。ロンド・フィナーレの幸福感っていったらどうでしょう。ネゼ=セガンさんが音たちに口づけするような仕草。本当に音楽を愛してしまってるのでしょう。スキップしたくなるような楽しさ。そして最後の最後のファンファーレに至るたたみかけるようなアチェレランドとアレグロで突入したファンファーレ。2度目にファンファーレが戻ってくるときには思いっきり引き延ばして。ああ、この音楽がこんなに歓びに満ちたものだったなんて。終わった瞬間、うわ〜って叫んでしまった。
オーケストラもとても良く鳴って、そして、こんなにもというくらい歌いまくり。主旋律だけじゃなくてそれに絡みつく短い音符もしっかり歌っていました。今日のMVPはチェロだと勝手に決めたけど、そう、それはチェロが最も歌う楽器だから。ティンパニも粒立ちの良いいい音で叩いていましたね。要所要所で出てくる凶暴なまでのクレッシェンドもステキ。
惚れ惚れするようなマーラーでした。ネゼ=セガンさんったら。ますます好きになってしまうではないですか。わたしと背丈の釣り合いも取れそうなのでどうですか、わたしたち。振り向いてくれなくても一方的に恋しちゃうから。
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by zerbinetta | 2011-01-19 02:08 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

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