椅子の上にも30分 だるまさん?   

26.01.2011 @royal festival hall

peter eötvös: shadows
liszt: piano concerto no. 2
zemlinsky: lyrische symphonie

sue thomas (fl), nicholas carpenter (cl)
alexander markovich (pf)
melanie diener (sp), thomas hampson (br)
vladimir jurowski / lpo


実はデスねぇ〜、持病持ちなんです。それが10年ぶりくらいに復活しやがって(怒っているので言葉汚いです)、同じ姿勢をとってるのが辛いんです。なので音楽会を聴くのも結構辛い。どんよりと痛み続けると体力も気持ちも削がれちゃいますね。最近のエントリーが短いのも、タイプを打つのが苦行のようだからなのです。そこまでしなくてもって感じもするけど、1回切れちゃうと絶対三日坊主になっちゃうし、基本的には元気なので心配いらないのですが(痛みは2週間くらいすれば自然に消えると思う)。

そんな言い訳をしつつ、音楽会。楽しみにしていたんですよ〜。だってツェムリンスキーの抒情交響曲大好きだし。なんとこの曲聴くの2回目。2年前にサロネンさんの指揮で聴いています。ロンドンってなんて良いところなんでしょう。こんな珍しい曲が聴けるんですから。という前に、最初はエトヴェシュさんの「影」。会場に入ってくるとステージの上が変。指揮台を囲むようにして椅子が並んでるの。指揮者から奥に向かってドラムセット、フルートとクラリネットのソロ、チェレスタ、ティンパニ(と大太鼓)の順で並んで、指揮者を挟んで左右にふたつの弦楽オーケストラ、指揮者の手前に会場に背を向けるようにして、左側に木管楽器、右側に金管楽器が並びます。エトヴェシュさんの曲を聴くのは実は初めてかも。前に彼の指揮したのを聴いたときには自作の曲は入ってなかったから。分かりやすいかどうかは別にして、聴きやすめの音楽です。美しい。といってもネオロマンティックとか調性的、そんなのではなくて響きが繊細でステキなのです。特にオーケストラがほぼお休みでソロが主体になる第3楽章は、堀口大学の月光とピエロの世界。クラリネットのピエロがつぶやき、フルートの月が応える。それとも揺れる影? そんなことを思いながら、プログラムで曲名が影と知る。エトヴェシュさんとわたしのみる思いは違うけれども、なにか同じものを共有することができたみたいで、ほんのり嬉しい。

この曲と2曲目のリストの協奏曲との間に、ステージの隅っこで、ユロフスキさんへのインタヴューがありました。椅子の配置を変えたりピアノを動かしたり、今日は放送用に録音もされていたのでマイクのセッティングを直したり、その間を利用してのことです。ユロフスキさん、語るなぁ。マーラーやリスト(どちらも記念年)への思いや音楽会の構成について語ってくれました。
準備もできて、いよいよ協奏曲。で、出てきたピアニストをみて、うわ〜〜〜反則だぁ〜!って心の中で叫んでしまいました。だって、マルコヴィッチさん、でぶ。とっても太ってる。だるまさんみたい。えええっ、座ったらお腹つかえちゃうんじゃない、鍵盤に手が届く? とか変な心配ばかり。で、さらに反則は、マルコヴィッチさん、わたしの心配をよそにむちゃ上手い! 腕も良く動くし指も回る。むしろうヴィルトゥオーゾ。予想外の驚きは、近所の太ったおじさんが走ったらオリンピックの選手より速かったみたいな。そして彼の持っている雰囲気。とっても楽しそうで、聴いてるわたしもつられて嬉しくなる。この気持ちはみんな同じだったらしくて、わたしのまわりの人もにこやかに驚いていた。
リストの協奏曲は有名なトライアングルの入る第1番と違って、なんだかとりとめがない。インタヴューのとき、ユロフスキさんは、ピアノとオーケストラのために初めて書かれた交響詩だとおっしゃっていたけど(交響詩はリストの発明)、わたしは、もっと自由な奇想曲のように思えました。どこに行くのか分からない、輿の赴くままに音楽が紡ぎ出されていて、まとまりのないような感じもするけど、初めての町のお散歩みたいで、景色が楽しい。
アンコール。オーケストラの人も笑顔で拍手。弾かれたのは、スケーターズ・ワルツの超絶技巧編曲版。これがもうマルコヴィッチさんのエンターテナーぶり満載で、上手に弾くのではなくて、にやにやとホイリゲでの演奏のように俗っぽくて楽しいんですね。指はものすごいことになってるんだけど。ステキな笑顔の、そこにいるだけで楽しくなるような方。もともと、伴奏ピアニストとして名をなして、ヤルヴィさん(パパビー)にソロを勧められて活動を始めたそう。この人のピアノ、酒場で友達と楽しく飲みながら聴きたいな。それができれば最高の贅沢。

いよいよ、抒情交響曲。歌うのは、メラニー・ディーナーさんとトーマス・ハンプソンさん。ディーナーさんは、メトのドンジョヴァンニで、途中思いっきり転んで、そのあと代役が歌った、というのを今でも覚えているのでその印象が付きまとっちゃう(ごめんなさい、ディーナーさん)。そしてハンプソンさん、大好き〜。
オーケストラの出だしは、ざらざらした音で今日は甘さ控え目かなって思ったら、音の艶やかさは前に聴いたフィルハーモニアには及ばないけれども、十分ロマンティック。ツェムリンスキーは、マーラーより若くて新しい音楽を作っていたのに、響きに教え子のシェーンベルクに聞こえるような音をちらりと感じたりもするけど、結局はマーラーより先には行けなかった、退行的なデカダンスな雰囲気がいいんですよね。大地の歌をもしてるけど愛の歌だし。長調短調が不明瞭なたゆたう感じは脳みそとろりと溶かしちゃうし。だから好きなんです。女の子はいつも愛に心をとろかしたいんだもん。
主役はやっぱりハンプソンさん。ハンプソンさんの歌は演劇的というか、オーケストラの伴奏の最中も歌詞の世界に没頭していてステキ。そしてあの笑顔。もちろん、歌は自家薬籠中のマーラーに連なる音楽だから揺るぎのないステキさ。それはオーケストラにも伝染してる。ディーナーさんは真っ青な衣装で、こちらの歌もステキ。楽譜の自分のパートは青の蛍光ペンで塗ってあったけど青が好きなのかなぁ。
生クリームのようなとろける甘さじゃなくて、カスタードクリームのような芯のある甘さ。いわゆる(19世紀)世紀末と呼ばれる混沌としたこの雰囲気大好きです。脳みそが甘くしびれるツェムリンスキー、やっぱりいいっ〜。
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by zerbinetta | 2011-01-26 11:11 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(6)

Commented by YU at 2011-01-30 22:13 x
つるびねったさん、痛みは大丈夫ですか?
辛そうですね。早く回復するのを日出ずる処よりお祈りしています。

カスタードクリームのような芯のある甘さ・・
甘いもの好きの私にはとても魅力的な表現です。
こんな風に書かれていると、ツェムリンスキーに興味が湧いてきました。聴いてみますね♪
Commented by Miklos at 2011-01-31 03:32 x
この演奏会も行きたかったんですよねえ。でも27〜29の3連ちゃんが確定していた後で、さすがに4連ちゃんは無理だろうと断念しました。でも、結局26日は風邪ひきかけの中にやむなく拉致され連れて行かれたカラオケのおかげで一気に体調が悪化。その後の3連ちゃんは何とかしのぎましたが、こんなことなら26も演奏会に行っとけば体調はまだマシだったかも。

しかし、堀口大学「月光とピエロ」とはまた、渋い例えですね。シェーンベルクも少し入ったような音楽だったのだろうと、イメージがさらに膨らみました。
Commented by voyager2art at 2011-01-31 08:03
つるびねったさんこんばんは。
痛みは収まりましたか? 無理しないで下さいね。タイプが大変なら返事もいりませんよ。一日も早い回復を祈っています。

僕もこの演奏会に行きたかったんですが、仕事で泣く泣く断念しました。僕は去年のプロムスで聴いたシュレーカー以来、この時代の音楽にすごく興味を持っているのです。
その他の曲も良かったようで、なんだかロンドンフィルを聴きたくてうずうずしてます。(でも、仕事が・・・)
Commented by zerbinetta at 2011-01-31 09:47
YUさん、ご心配どうもありがとう。
痛みは日々ますます増量中です。痛みがあった方が原因がはっきりしてる感じがするのでいいのですが。

ツェムリンスキーはいいですよ〜。マーラーとかシュトラウスとか初期のシェーンベルクとがお好きでしたらぜひ。この音楽会、ラジオ3でも放送されるのでぜひ聴いてみてくださいね。ちなみにわたしはハンプソンさんの笑顔にうっとりとろけてました。
Commented by zerbinetta at 2011-01-31 09:55
Miklosさん、
わたしは今日5連ちゃんを走りきりぐったりと放心しております。しばらく休憩。ほっ。

そうですね。最後の楽章のソロの使い方、その下の打楽器の置き方はピエロ・リュネールやル・マルトー・サン・メートルに似てるかもしれませんね。

また寒くなったので風邪をこじらせないように気を付けてくださいね。
Commented by zerbinetta at 2011-01-31 10:02
voyager2artさん、
お気遣いありがとうございます。こればかりは待つしかしょうがないので気長に治るのを待ちます。

いわゆる世紀末の音楽(といっても実際は20世紀初頭ですが)、わたしも大好きです。あの時代の音楽って寒流と暖流のぶつかった海が豊かなように、そして厭世観がブレンドされて独特の雰囲気を持ってますよね。ロンドン・フィルもますます上り調子で聴いてて気持ちがいいです。フィルハーモニアにもちょっと見習って欲しい(上手さでいうとフィルハーモニアの方が上な気がするけど)。

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