わたしの予知能力   

10.02.2011 @barbican hall

strauss: don juan
ravel: piano concerto in g major
strauss: also sprach zarathustra

hélène grimaud (pf)
daniel harding / lso


昼間、仕事をしながらなんとなく気になって(なぜ? わたしにも分かんない)、ゴジラについて調べてた。ふふふ、わたし意外と怪獣とか好きなんです。もっと好きなのは本物の恐竜なんですけどね。そして、今ボスのお父さんは昔ゴジラにエキストラか何かで出たことがあるらしい。
と、ちっとも音楽会に関係のない話で始めてみたけど、なんと、音楽会に行ったら曲目が変更になっていてラヴェルのピアノ協奏曲が! この曲、第3楽章の音楽がゴジラのテーマに似てるんですよ。わたし、予知したんでしょうか。なんてヘンなこと言ってないではじまりはじまり。

音楽会のメインはシュトラウス。ラヴェルを挟んで、ドン・ファンとツァラトゥストラ、1週間後には、死と変容が組まれています。
まずはドン・ファン。好きなんですよ〜〜。今日のロンドン・シンフォニーは、リーダーの方が3人ともお休みで副リーダーのトモ・ケラー(tomo keller)さんがリーダー。この方、日本人の血がちょっぴり入ってるんでしたっけ? ご兄弟がウィーン・フィルで弾いておられますよね。と、本職のリーダーがいない今日の音楽会。オーケストラは大丈夫かしら、ちょっといつもより劣るんじゃないかしらと思ったら大間違い。全然大丈夫どころか、いつも以上にいい音を出していました。最近聴いた中でも最高かも。と思えるぐらい。ロンドン・シンフォニー今絶好調ですね。こういうのを聴くと、このオーケストラ世界でもトップクラスにあることをまざまざと感じます。ハーディングさんは時折、なんか壁に当たってるというか迷いを見せることがあるんだけど、今日は自信を持って振ってましたね。シュトラウスの音楽と相性とても良さそう。

あっドン・ファン。もう贅沢にオーケストラを鳴らした絢爛豪華な音楽です。シュトラウスはこうでなきゃ。ハーディングさんは激しいところは激しく、抒情的なところはゆっくりたっぷり歌って音楽の良さを引き出していました。各パートのソロもめちゃんこ上手い。今日もオーボエは前回に引き続き、フランス国立管弦楽団のシスモンディさん。上手いよ上手いよ、この人、うちの楽団(ってどこよ?)に欲しいなぁ。

ラヴェルのソロはグリモーさん。ロンドンにはよくいらっしゃるのね。去年リサイタルもあったんだけど、他の予定があってそれは聴けず。わたしの好きなピアニストのひとりです。でも今年の初めに病気で演奏活動を休んでいて、夏に復帰したんだけど、秋に聴いたときはまだちょっと安全運転かなぁ〜って感じて、今日はどうかしらって思っていたのです(リサイタルを聴いた友達はとっても良かったと言っていましたが)。で、楽しみにしていたのはモーツァルトのピアノ協奏曲。グリモーさんのピアノって漢な感じで、モーツァルトどうなるんだろうって思っていたからです。でも、最初に書いたように曲目がラヴェルに変わってしまいました。でもいいんです。前にグリモーさんで聴けると思ったのにキャンセルになってしまったので、聴きそびれてたから。
グリモーさんのピアノ、とっても良かったです。きらきら弾けてラヴェル的。輪郭がはっきりしていてクリアで、音楽が鮮明に聞こえるの。わたしが勝手に調子のバロメーターだと思ってる、吐息も聞こえてきて、ああ戻ってきたんだなって一安心。これであの艶めかしい母音が混じってきたら完璧だな。バックのハーディングさんとロンドン・シンフォニーも明るい音で色彩的に音楽を盛り上げます。洒落た感じででも力強さもあってステキなラヴェルでした。それにしてもグリモーさんって美人だな。男子の友達がファンだというのも分かる。
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そして最後はツァラトゥストラ。びっくりしたのは、音楽が始まる前にツァラトゥストラの最初のペイジが朗読されたことです。ああ懐かしい。ツァラトゥストラが山を下りるシーン。それにしても平易な英語で訳されているのね。わたしはこの本を中学生の頃、文語調のいやに格調高い役で読み始めて(だってほら、思春期の頃って誰でも背伸びをしたがるでしょ)、すぐに挫折したことを覚えてる。でも最初の数ペイジは読んでいるので(あと有名なところをぱらぱらと)最初だけは知っているんです。すれ違った僧侶を憐れんで、「彼は未だ知らないのだ、神は死んだと」と独白するところを強烈に覚えています。ところで、シュトラウスの音楽の方は、ニーチェの思想を深く音楽にしているのでしょうか。わたしは、やんちゃ坊主の32歳のシュトラウスが、こんなことも音にできるんだって誇らしげに書いた音楽に聞こえます。でも、しかし、ツァラトゥストラの冒頭シーンの最初の壮大な音の伽藍は、神は死んだと宣言するニーチェの新しい思想への深い共感を示しているのではないかと思えます。そうでなければあんなにも肯定的に壮大に書けないよ。そして今日の演奏、ティンパニの行進曲のリズム、最初の回と2回目3回目の回とではバチを変えて叩いてました。音色を変えて芸が細かい。舞踏の歌の終わりを告げる鐘は、ずいぶんと長いチューブラベルが使われていたけど(音程の指定があるんですね)、音がオーケストラの中にとけ込んじゃってちょっと残念。ここはオーケストラを凌駕して外から鳴って欲しかった。
この曲って最初がもの凄くかっこよくて有名で、頭でっかち尻すぼみって言われちゃうけど、わたしは、そこから始まる静かな部分が好きです。弦楽セクションがこれでもかと言うくらい分奏されてて透明感のある薄い響き、から喜びと情熱の厚いゴージャスな響き。ありとあらゆる音響をオーケストラから引き出してる。そしてそれを存分に演奏してくれるハーディングさんとロンドン・シンフォニー。今日のハーディングさん、特に弱音の響きが吸い込まれそうで良かったです。オーケストラをここまで自在にドライヴできるハーディングさん、やはりただ者ではない。わたしは、オーケストラの上手下手はあまり気にならないし、ロンドン・シンフォニーよりもロンドン・フィルにむしろシンパシーを感じるんだけど、ここまで完璧な響きを聴かせられたら、曲が曲だけに至福の時。まいりました。

演奏のあと、ハーディングさんが、奏者をひとりひとり立たせてねぎらっていたとき、ケラーさんにオーケストラみんなが足踏み拍手していました。見事リーダー役を務めた(ソロも上手かったしね)副リーダーのケラーさんへのオーケストラからのあたたかい気持ちが感じられました。

呵々と笑うハーディングさん、前にいるのがケラーさん
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by zerbinetta | 2011-02-10 10:21 | ロンドン交響楽団 | Comments(2)

Commented by Miklos at 2011-02-14 00:50 x
こんにちは。曲目変更はLSOから12月にメールが来ていませんでした?

私は哲学書や難しい文章の本は苦手でして、ニーチェも読んだことありませんので、最初の朗読はすんなり頭に入ってきませんでした。冒頭のティンパニ、ばちを変えているのは気付きませんでしたが、流石LSO、こういう見せ場にはしっかり太鼓の音作りをしてチューニングも完璧だなー、と感心しながら聴いていました。

私もこの曲は、冒頭ももちろんかっこいいんですが、その直後の静かな曲や、最後の舞踏の歌と、エンディングも大好きですね。冒頭のドソドが再現され、折り返した後の(例のトランペット跳躍の)ところも好きですし、全編に渡って捨てるところがないですよね。最後のチューブラベルは私ももっとガーンと来て欲しいと思いました。
Commented by zerbinetta at 2011-02-14 01:29
へへへ、メイルをちゃんと読んでないのがばればれですね。

それにしてもLSO良かったですね。なんだか、ますます絶好調って感じです。今の状態なら、グラモフォン誌の世界のトップ・オーケストラの第4位っていうのも分かります。

わたしもシュトラウスの音楽大好きです。もう難しいことつべこべ言わずに、音の洪水を素直に楽しむのがいいです。わたしは2階で聴いていたのですが、かぶり付きで聴くと音に飲み込まれて気持ちがいいでしょうね。あっベルはMiklosさんのブログを読んで同感!!って思いました。

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