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始まる前に泣かせるなんてずるい   

18.03.2011 @royal opera house

tchaikovsky: swan lake

tamara rojo (odette/odile)
carlos acosta (siegfried)
gary avis (rothbart)
alastair marriott (the tutor)
akane takada, deirdre chapman, valentino zucchetti (pas de trois)
leanne cope, emma maguire, romany pajdak, sabina westcombe (cygnets)
hikaru kobayashi, itziar mendizabal (two swans), etc.

anthony dowell (production),
marius petipa, lev ivanov (choreography),
boris gruzin / orchestra of the roh


清水の舞台から飛び降りました。1回くらいバレエをとても良い席で観よう、計画でロホさんの白鳥を平土間で観たのです。80ポンド以上。ついにわたしのロンドン音楽会生活、最高値超高級チケットです。バレエの怖さは、1度良い席で観てしまうと、もう戻れなくなってしまうこと。バレエ破産もしかねない。とは言え、いつもと違った感じで、場違いさにちょっぴりおろおろしてしまったのも事実。あああ、でもやっぱり良い席は良い。年に1度くらいはここに座りたいなぁ。

今日は舞台が始まる前になんと、ロイヤル・バレエの監督、モニカ・メイスンさんが舞台に登場。なになに、メイスンさんが登場するほどのキャスト変更、なんて会場はちょっと緊張に包まれましたが、わたしは知ってるもんね。白鳥の湖、東北大震災で大変な思いをしている日本のために捧げるってこと。でも、直接、メイスンさんから穏やかな声でお話があると、もうダメ。幕が開く前から涙の海。ロイヤル・バレエは1970何年(正確な年は忘れてしまいました)から日本へは何度も行って、日本の皆さんとは関係が深い、とおっしゃっていましたが、それだけではなく、ロイヤル・バレエで活躍している日本人も多くいるので、個人的な親密な関係もあるでしょう。こうして人が世界中へつながっていることを肌で感じて、今回は日本のことを覚えてみんなで思っていてくださることはどんなにか嬉しい勇気づけられる思いか、本当にとっても嬉しく思いました。

今日は、この間観たタマちゃんアコスタさんの配役なので余裕を持って観ていられます。それに双眼鏡を使わなくてもいいので、いろんな表情がよく分かるんです(双眼鏡は確かに細かく見えるけど、1点を集中的に観てしまうので、回りとの関係が飛んじゃったりするんです)。こうして改めて観てみると、アコスタさんがとても細かく丁寧な演技をしているのが分かりました。王子の気持ちがとてもとてもよく分かりました。それから王子に振られるお姫様たちの気持ちも。それにしてもこの舞台ほんと良くできていて、多分誰も見ていないだろう脇役の人に至るまでしっかりと演技しています。そんな全体があるからこそ王子の物語が映えるんだなって思います。そして酔っぱらい先生のマリオットさん。舞台にポンとユーモアを落としてお話を小さくしないようにしています。子供たちもとっても可愛らしくて、踊りも上手だけど、ふらふらと子供の相手をしている酔っぱらい先生の方がほんとはずっと踊りが上手いのにね、なんて思っちゃって、酔っぱらい先生にほ。
今日のパ・ドゥ・トワには高田茜さんとチャップマンさん。それからズチェッティさん。茜さんはフレッシュでステキ。ぶれないし上手いです。ソリストまでスルリと上がっちゃいそうですね。あっ、チャップマンさん、挨拶のときちょろりとよろけて、ちょっと可笑しかった。まわりもくすくす。

第2幕で、タマちゃんのオデットが出てくると、今度はタマちゃんに目が行っちゃいます。悲しくも強いオデット。相変わらず踊りは切れていて、アコスタさんとのゆっくりとした踊りのなんて美しいこと。王子が一瞬で恋に落ちて、でも、そろそろと躊躇しながらオデットを誘っていく。心揺れながらも少しずつ王子に心を開いていくオデット。最後のとろけるような抱擁(王子はオデットを後ろから包むように柔らかく抱いてその中で(心が)溶けていくオデット)。うっとり。でも悪魔に無理矢理引き裂かれて、白鳥に戻されるオデット。ここの表現はタマちゃん全く隙がなくて(わたしとしては、もう少し不完全さがあった方が完璧すぎるより好きかも知れないのですが)、見事すぎ。今日も4羽の白鳥は良かったです。タマちゃんとアコスタさん、あとエイヴィスさんも、が舞台を引っ張って、みんなその3人に引き摺られるからかしら。

うって変わってタマちゃんのオディールは魔性の女。怖〜い。ロットバルトとなにやらひそひそと相談しながら王子を誘惑して、男を誘惑する手練手管をわたしにも教えて欲しいよ、ロットバルトさん、恋人を見つけて騙されたとは知らず、さっきまでの鬱いだ表情から一変してぱっと明るく嬉しげなアコスタさんの王子。タマちゃんとアコスタさんの踊りはやっぱり圧巻。アコスタさんなんて歓びの活力に満ちちゃってるから回転は速いしジャンプは高い。アコスタさんってジャンプの途中で足をピットさらに伸ばして止まるのよね。完璧できれいなジャンプ。タマちゃんも瞬間瞬間決めのポーズで止まりながら切れ切れの踊り。タマちゃんの32回転から、アコスタさんの高速回転まで独楽のように回って、このおふたり踊りだけで人を感動させてくれるの。そして最後はやっぱりタマちゃんの大きく口を開けた高笑い。いやあ怖い。わたしも1度でいいからあんな風に男を手玉にとってみたい。そして高笑い(似合わん)。
今日はスパニッシュ・ダンスの蔵さんをしっかり観ました。この間はロットバルトにやられてましたからね。今日はしっかり踊りの方を観てたのよ。ユフィさんのナポリタン・ダンスはこの間より切れが増してたな。ユフィさん一時の低迷脱したかも。

第4幕は、本当はもうちょっとオデットと王子がロットバルトと戦うシーンを多くして欲しいと思うんだけど(ちょっとあっさりしすぎ)、ほとんど役に立たない王子に比べて、王子を守って勇敢に戦うオデット。タマちゃんの強さが生きるんだけど、タマちゃんだったらロットバルトをやっつけられた気がして止みません。で、そのままハッピーエンドで大団円。そのくらいの強さを持ったオデットなんですよ。女だって今は戦う戦士。愛のため生きるために戦うんだわ。とバレエから逸脱した感情を持ってしまったわたしでした。
でも、今日の公演は最初のメイスンさんの挨拶も含めて記憶に残るものとなるでしょう。白鳥はまだ続きます。いよいよ、大好きなヌニェスさん。それからこの間のアリスを好演した地元期待の新星カスバートソンさんです。どんな白鳥になるのでしょう。

悪魔も祝福するタマちゃん
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今日も嬉しい4羽の白鳥。もちろんわたしの応援してるコープさん(左から2番目)も。
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2羽の白鳥のメンディザバルさんとひかるさん
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by zerbinetta | 2011-03-18 10:21 | バレエ

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