悩んだ末に   

19.03.2011 @barbican hall

rachmaninov: the bells
walton: symphony no. 1

viktoria yastrebova (sp)
frank lopardo (tn)
vladimir vaneev (br)
semyon bychkov / bbc sc, bbcso


実は今日、サウスバンクであるわたしの応援するオーケストラ、ロンドン・フィルハーモニックの音楽会のチケットも持っていました。というか、そちらに行くつもりでシーズンが始まる前にチケットは取ってあったのでした。そのときも悩んだんだけど、バービカンで同日あるBBCシンフォニーの音楽会も捨てがたい。ロンドン・フィルの方は確か、ユロフスキさんのチャイコフスキー。BBCはラフマニノフの鐘。ううむ。でまた再び悩んだ末に、ロンドン・シンフォニーのチケットを2つリファンドして(MTTが来ることになっていたのが変わったのでいいやと思って。でも、ひとつ目の音楽会のレビュウを見てあっしまった、と。とっても良かったらしい)、今日のBBCシンフォニーに振り替えてもらいました。

ラフマニノフの鐘は、録音も含めて初めて聴く曲です。3人の独唱と合唱、大きなオーケストラによる4楽章からなる交響曲のような作品です。指揮は、これまた初めての、年末に聴きそびれたロイヤル・オペラでのタンホイザー、とここまで書いたところで、あれ待てよ、前に聴いたローエングリーンは確かこの人が指揮したんじゃないかしら、と自分のブログを紐解くと、ありゃりゃ、聴いてる、というわけでビシュコフさん2度目です。
音楽は第1楽章の銀のソリの鐘をテナーが、第2楽章の甘美な結婚式の鐘をソプラノが、第4楽章の追悼の鉄の鐘をバリトンの独唱がそれぞれ歌います。第3楽章のけたたましい警報ベルだけ、独唱が入らず合唱とオーケストラのみです。とても大きなオーケストラで大人数の合唱。鐘の音を模倣するオーケストラが面白い、うんと迫力のある曲です。ラフマニノフの代名詞、とろけるような叙情性は控え目なんだけど、でもやっぱりソプラノ独唱が入る緩徐楽章は、ラフマニノフ満載です。
重厚で、音楽会のメインにぴったりのこの曲を(でもプログラム前半)BBCシンフォニーは、そのまま重厚に演奏しました。BBCシンフォニーは音色が重いので(リズムが悪いとかじゃないです。っていうか、ビシュコフさんとBBCシンフォニーはリズム切れ切れ)、こういう曲はぴったりですね。ビシュコフさんはきっちり指揮して、しっかりとオーケストラを従わせるタイプの指揮者ではないかと思いました。歌手は3人とも良かったです。ロパルドさんは、メトで何回か観ているハズなんですがすっかりお顔を忘れていました。バリトンのヴァネーエフさんは、ロシアらしい太いバリトン。そして、ソプラノのヤストレボワさん。この方もロシア(マリインスキー劇場)出身だけど、プロフィールの経歴から推測するとめちゃ若い。そして美人。この人、第2のネトレプコさんになれるかな。それにしてもマリインスキー劇場ってどんどんすごい歌手輩出してくるな。なんだか凄い。

休憩の後はウォルトンの交響曲第1番。滅多に演奏されることがなさそうな曲なのに、聴くの2回目。イギリスの作曲家だからかな。前に聴いた、ヴァンスカさんとLPOのは、シベリウスっぽさが強く感じられたんだkど、今日はなんだか、心を紙ヤスリでざらざらと削られていくような感じの苦汁の音楽。この曲って戦争に関係あったかしら。そんな思いを抱かせられる耳あたりの悪い音楽。ビシュコフさんは外面のかっこよさには目をくれず、現代的な響きで、音楽の真相をえぐっていきます。耳にするのが苦痛になるほど。容赦ない。わたしは苦しくて、途中で逃げ出したい気持ちでした。でも、これは決して演奏が悪かったということではないんです。むしろ良かった。楽譜に書かれたひとつの真実を紛うことなく音にしてしまったんですから。現代音楽を弾き慣れてるBBCシンフォニーの良さが上手くいかされてましたね。複雑なテクスチュアがきれいに分離していたし、リズムもきっちりと切れていて、縦の線がしっかり揃っていました。第2楽章のスケルツォも攻撃的で、殺伐とした感じだし、第3楽章も荒涼として救いがない。唯一第4楽章が前向きの音楽なんだけど手放しで歓びを解放するという感じではなく、苦しみの勝利という感じ。わたしは、この音楽を聴いて、東北大震災を思い浮かべてしまいました。もちろん、ビシュコフさんはそれを想いに入れて演奏したとは思わないし、聴いているわたしの問題であるのは間違いないんだけど、試練のときというのは、人が生きていく上で必ず訪れるものなんだ、そこからの勝利は決して開放的ではなく、苦汁を口に含んだままの勝利もあるんだって思ったのです。音楽って癒しとか慰めとかそんな作用ばかりが強調されるけど、苦渋の音が心を沈めてしまうこともあるし、上へも下へも心を揺さぶってしまうものなんですね。甘いチョコ食べて気持ちを戻さなきゃ。

ヤストレボワさんとヴァネーエフさん
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ビシュコフさん
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by zerbinetta | 2011-03-19 09:39 | BBCシンフォニー | Comments(0)

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