異形の音楽   

20.04.2011 @royal festival hall

bach/mahler: orchestra suite
shostakovich: violin concerto no. 2
webern: five movements for string orchestra
beethoven/mahler: string quartet in f minor

janine jansen (vn)
vladimir jurowski / lpo


わ〜〜お久しぶりのユロフスキさんでした。ロンドン・フィルハーモニックのマーラー記念年の音楽会シリーズ。今日は編曲もの。バッハの管弦楽組曲とベートーヴェンのヘ長調の弦楽四重奏曲、弦楽オーケストラ・ヴァージョン。どちらも初めて聴きます。記念年なので交響曲は、もういいよと言うくらい聴いてるんだけど、こういう珍しい曲が聴けるのは嬉しい。変わった物好きのわたしですからね。

さてその前に、今日は音楽会での順番はとりあえず脇に避けて、2曲目、休憩前に演奏されたタコ(ショスタコーヴィチ)の第2ヴァイオリン協奏曲から。ソリストはこの間、ロンドン・シンフォニーとのブラームスの協奏曲を聴いたジャニーヌ・ヤンセンさん。ブラームスのときはわたし的にはちょっと疑問符が付いたんですけど、今日はどうでしょう。なんてもったい付けずにさっさと書くと、めちゃくちゃ良かった! この暗い曲は、やっぱり先日、カヴァコスさんのソロで、ゲルギーとロンドン・シンフォニーのバックで聴いてるんだけど、あのときも深く感動したんだけど、今日も感動してしまったんです。カヴァコスさんの演奏を超える演奏は、もう聴けないかもなんて思っていたのに、それとは別のアプローチですっかり感動してしまった。だから音楽って面白い。
ヤンセンさんの演奏は、粘りけがあって糸を引くというか、蜂蜜のような密度の濃い粘り。情念のようなものすら感じさせました。音もとっても豊かで幅のある音。譜面は見ながらでしたが、タコの音楽を完全に自分のものとして消化していて、一点の隙もないというか、聴いてるわたしも最初から最後まで音楽から耳を離さずにはいられませんでした。暗い鬱々とした音楽という印象があったんですけど、今日は鬱々とした感じではなくて、暗さが純化されて透明な、光りがあれば彼方まで見渡せそうな、固い結晶のようなものを心に感じました。
さて、ここまで書いて気がついたんですけど、この間カヴァコスさんで聴いたのは第1番でした。あれれ。第2番はもちょっと前にやっぱりゲルギーとロンドン・シンフォニーの伴奏でハチャトリアンさんのソロでしたね。恥ずかしいので消して書き直せばいいのですが、恥を忍んでいい加減さ加減を晒します。でも、前は確かに鬱々とした印象だったんですけど、今日は暗いけれども屈折して出口のないものではありませんでした。ヤンセンさんの演奏の大らかさが、そして太い筆で一筆で書ききるような大きな音楽が、タコの魅力を引き出していました。
ユロフスキさんとオーケストラもとっても良かった。ユロフスキさんってゲルギーよりタコに対する適性みたいものがあるように思えます。ゲルギーのタコもとても良いのですが、わたしにはユロフスキさんの語り口の方が好みです。

休憩の後の始まりは、弦楽器だけで、ウェーベルンの弦楽オーケストラのための5つの断章。もともと弦楽四重奏曲だったのを作曲者が後年弦楽オーケストラに編曲したんですね。5曲でたったの11分。ウェーベルンらしいミニマムな音楽です。初めて聴きましたが、とっても密度の濃い(といっても音は少ないです)充実した音楽。演奏も充実。ロンドン・フィルの弦楽セクションって定評ありますからね〜。すっきりとした音色でステキです。
ユロフスキさん、カーテンコールに出てきたと思ったら、そのまま指揮台に上がって、ベートーヴェン。わたしは元の弦楽四重奏曲を聴いたことがないのだけど、聴いた感じでは、ほとんど曲をいじってなくて、弦楽四重奏曲の楽譜をそのままオーケストラの弦楽器のパートに割り振って、ところどころチェロを補強するコントラバスを加えたという感じでした。全くベートーヴェン。弦楽四重奏曲の方を知らないせいか全く違和感ありませんでした。ただあまりにそのままなので面白味に欠けたかな。大人数になってスケールが大きくなったとも言えるのかも知れないけど、ベートーヴェンの音楽って四重奏でも十分スケール感大きいですからね。編曲する意義があまり見つけられませんでした。演奏は、これも良かったです。ベートーヴェン初心者のわたしが言うのもなんだけど、やっぱりベートーヴェンって凄いですね。音楽が作り込まれてるし、最後突拍子もないところに飛んですとんと終わってちょっと虚に包まれてしまいました。さすがベートーヴェンです。

それとは対照的に、始まりのバッハはもうバッハの素材を使ったマーラー、というかロマン派の時代の音楽でした。ユロフスキさんが出てきて、にこにことオーケストラを見回してから始まった音楽。バッハのものとは違うアーティキュレイション、オルガンまで使って(わたしオルガンのそばに座ってたのでオルガンの音にオーケストラが消されてしまいました)、もったりと大時代的。マーラーにとってバッハからモーツァルト、ベートーヴェンに至る100年は時間が止まってたような、というより1個2個たくさんの、昔でひとからげにできる時間なんですね。あっこれはマーラーが悪いんじゃなくて、マーラーの時代はまさに歴史は進化すると信じられていた時代だし、今みたいに過去を過去の目線で研究するという時代ではなかったんですから。マーラーの時代の人だったらこれがバッハの音楽として楽しめたかも知れないけど、バッハを割と良く知っているわたしたちには甘〜いショートケーキをホールで食べさせられてるような感じで、ちょっと胃がもたれます。ただ、基本的にはバッハのオーケストレイションを意外に尊重している感じであまり余計な楽器は加えていません。
ユロフスキさんの演奏はバッハの、ではなくマーラーの音楽として割り切って演奏していた感じです。もちろんマーラーのスコアからバッハの音を出そうとするくらいならはじめからバッハのスコアで演奏すればよいことなので、それではわざわざこれを演奏する意味はなくなってしまいますから。イージー・リスニングふうのバッハ、それはそれでたまにはいいかな。そうそう、最初の序曲で、主部に入ってフルートが活躍するところ、ユロフスキさんは導入部と同じようなテンポで大変ゆっくりと演奏したんですけど、これはマーラーの指示でしょうか。楽譜がないのでよく分かりません。このテンポ感がショートケーキに追加で生クリームをのせたみたいでもたれました。でも、初めて聴いて面白かったです。今となってはあまり演奏されない理由もよく分かりました。

そうそう、全然関係ないけど、今日は第2ヴァイオリンのゲスト・プリンシパルに来られていた方がかっこよかったです。カメラ持っていかなかったことを後悔しています、いつも来てくれればいいのに。eugene tichindeleanuさんという方です。
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by zerbinetta | 2011-04-20 09:19 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by ありこ at 2011-04-25 14:02 x
あ、これがつるびねったさんが聴いていらっしゃったタコ2番なのですね!
ジャニーヌ・ヤンセンさん、当初ちょっとパワープレイヤーなイメージが強くて苦手だと思い込んでいたのですけど、最近色々な曲をたまたま聴く機会が出来たら、好きになりました。

先日のコメントつながりですが、女性には珍しく、太い音が出せるヴァイオリニストの一人だと思います。「粘り」まさにその通りですね!

私の勝手な解釈と好みですが、タコは軽快なスタッカートなどをあえてつま先歩きで音も立てず忍び寄るようにひそやかに湿っぽく弾くと、鬱々じゃなく、そこはかとない不気味さ、光があるから出来る影みたいな雰囲気が出せるのじゃないかなと思っています。

2番も大好きですvvvいい演奏が聴けると、心の栄養を補充したような気分になりますね♪

Commented by zerbinetta at 2011-04-26 06:29
この音楽会、BBCラジオ3で放送される予定なのでぜひ聴いてみてくださ〜いっ。
ヤンセンさん、わたしもブラームスを聴いたときはあれれって思ったんだけど、今回のタコはとおっても良かったですね〜。そうなんです! 女性だけど大柄な音が出せるヴァイオリニストさんなのです。彼女もオランダ人に違わず大柄なんですけど。でも、女性的じゃないと言えばそうではなく、やっぱり女性的な感覚は聴いていて感じるんですね。母なる大地みたいな。豊穣さなのかなぁ。

音楽はいろんな演奏があるのがいいと思います。今まで聴いたタコもみんなそれぞれステキなんです。つま先歩きの不気味なタコもよさげですね。きらきらと明るく輝く異形のタコも聴いてみたい気がします(1回だけ)。あっ交響曲だと、きらきらと闇に輝く小さな光りが出てくるのですが。

わたし、心の栄養補充しすぎで、太った気がしますよ。ロンドンって良い音楽会が多いので、不必要に耳が肥えちゃったみたいな感じがして、減点法で音楽を聴かないように気を付けなきゃと戒めてます。

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