マゼールさん、あなたの変態にわたしついて行きます   

08.05.2011 @royal festival hall

mahler: symphony no. 3

sarah connolly (ms)
lorin maazel / philharmonia voices, tiffin boy's choir, po


と勢いよく言ったものの、はじめに断っておきます。わたし変態ではありません。じゃなかった、マゼールさんのマーラーの交響曲第3番とわたし、ウマが合いません。実は、今日の音楽会のチケット、取っていませんでした。理由は、7年くらい前にニューヨークで、マゼールさんのこの曲を聴いて(CDになっているのです)、つまらないと思ったからです。長い第1楽章で飽きちゃって。でも、やっぱりマゼールさんの変態ぶりは聴いておこう、この先、滅多に聴けるかどうか分からないし、フィオナちゃんもいるし(やっぱそこか)。

で、予想は当たったんです。最初のホルンのユニゾンはとても期待の持てるものでした。今日のホルンのユニゾンと金管楽器はとってもいい音出してました。最初の切り立つような峻な山肌感の暗く澄み切った音楽もとってもステキだったんです。もちろん、マゼールさんはアクセントを強調したり、フレーズを伸縮させたり、極端過ぎはしないけど、いろいろやってそれは面白かったんです。一転して夏の日が昇る野原も、時間を伸び縮みさせてマゼールさん流の世界を創っていきます。ところが、行進曲にはいると頑ななまでにゆっくり目のインテンポを貫くんですね。この部分って音楽的には退屈な部分だと思うんですね、特にこういうやられ方をすると。木管楽器とか結構はちゃめちゃなことをやってるので、それを強調してテンポを揺らせばもっと面白くなると思うんですけど、マゼールさんって普段はテンポとか揺らすくせに、どうしてここだけインテンポを守るんでしょう。行進曲だから? ニューヨークでわたしが退屈した理由が今日分かりました。なんか、わたしの思ってることの反対のことばかりやってるので、わたしとウマが合わないんですね。それでも、退屈感はもう経験済みだったので、今日はいろんな音に耳を済まそうと思って聴いていたから楽しめました。リーダーのヴァイオリンソロが、わたしの音程感とずれていたのは気のせい?
第2楽章はあっさり少しだけ速めのテンポで始まったと思ったら、またテンポ感を失って、でも、爽やかな風が吹いているようでステキ。実はこの曲の中でこの楽章がずうっと一番好きだったんですね。あまり仕掛けてこない、マゼールさんにしては普通の演奏かな。
第3楽章はとってもまとも。とはいえ、マゼールさんソロの部分も一所懸命振っていて、ちょっとリハーサル足りないのかしらと思いました。とっても上手いのだけど、全体的にこの間の第5番ほど音楽がこなれていないような感じもしましたし。今回は(多分フィルハーモニアとのマーラー・チクルスは)レコーディングもされてCD化されるんでしょうが、ひとつの曲に対して1回しか本番がないというのは(地方での公演もあるので少しの例外はあるけれども)きついのではないかと思いました(ニューヨークでのライヴ録音はニューヨーク・フィルの音楽会が4回ずつあるので4回の本番があることになります)。中間部のポストホルンのソロは、本物のポストホルンを吹いていました(この楽章が終わって奏者がポストホルンを持ってステージに帰ってきたので分かりました)。とぼけた感じの独特な音色だけれども、吹くの難しそうですね。そもそも楽器じゃなくて郵便屋さんのラッパだったわけだし。そういえばベルリン・フィルのときはトランペットで代用してましたね。音楽的な完璧さをとるか鄙びた音色をとるかは、難しい選択だなぁ。

歌の入る、第4楽章は遅くならないテンポで。歌い手は、病気降板のストーティンさんから先日聴いたばかりのコノリーさんへ。コノリーさんの歌はいつもながら安定していて安心して音楽に浸ることができます。弦楽器の音の揺らし方が面白いと思いました。
今日一番、面白かったのが第5楽章。まず鐘の音。普通、音程の整ったチューブラ・ベルを使うと思うんですけど、マゼールさんの選んだのは音程の曖昧なベル。頭に聞こえたときはどうして?って思ったけど、教会の鐘みたいで面白い。楽器のチューブラ・ベルだと、音程は正しいけど、楽器なんですね。ここは、教会の鐘としての音色を取ったということでしょうか。ポストホルンの選択といい、マゼールさんの音色へのこだわり筋が通ってますね。それから、例えばチェロに出てくる旋律に普通ではないアーティキュレイションを付けていたのも面白かったです。なんだかぱっと明るい音楽ではなくて、どういう訳か枯れた感じ。
最終楽章は聴くだけで感動してしまう音楽だけど、さすがにマゼールさんはあんまり奇をてらわずに、でもフレージングとかはとっても丁寧に演奏してくれました。特に弱音はきれいで、1回目の爆発と2回目の爆発の間の静かな弦楽合奏の部分は、本当に美しく、彼岸の音楽でした。やっぱり、マゼールさんの今回のシリーズのマーラーは、マゼールさんの到達点を示していると思います。マゼールさんももう80歳を超えて、これから先、マーラーの曲を全曲振るということは難しくなってきます。集大成として演奏に望んでいることは想像に難くありません。そんな気迫が演奏にも感じられるし、音楽そのものが、好き嫌いは別にして、ひとりの芸術家の究極の到達点を聴くことができる僥倖に幸せを感じます。

マゼールさんの音楽は、この間の第5番でみせた変態的なものではありません(他の人から比べればそれでも変態的なのかも知れないけど)。多分110分くらいのとってもゆったりとした演奏で、やっぱりマゼールさんの世界観が詰まっていました。ただそれが人工的に感じたのも事実。とても美しいものを聴いたのですが、それは自然のものではなくてあくまでも人工物。西洋音楽(芸術)はあくまでも人工物の美だと思うのですが、マーラーのこの曲は自然の美しさをそのまま音楽に写したという局面もあると思うのですね。そこが、マゼールさんとわたしのずれだと思うんです。わたしはこの曲を野原の風の中で聴くのが好きで、中学生の頃、カセットプレイヤーを持って野原に寝ころびながら聴いていたのです。自然の音として音楽が聞こえる。求めている世界が違うんですね。

フィオナちゃんと後ろの人(名前分かりません)
c0055376_9433161.jpg

[PR]

by zerbinetta | 2011-05-08 09:42 | フィルハーモニア | Comments(5)

Commented by かんとく at 2011-05-10 07:39 x
フィオナちゃん、オペラグラス持って、しっかり見てきました。私はどちらかと言うと後ろの人の方が好みかも。関係ないコメントで失敬しました。
Commented by Miklos at 2011-05-10 08:04 x
こんばんは。フィオナちゃんの後ろの人、今回も私の席からよく見えなかったのですが、うーむ、この写真だとビミョーですね…。私の苦手なタイプかも。でも実物見ないとわからないので、次回よく拝見して、両方いただくかどうか考えます。

(って、話はそこだけかいっ!)
Commented by zerbinetta at 2011-05-11 05:01
もうっおふたりともったら〜。フィオナちゃんの話ばかり。音楽はっ?
おふたりのステキなレポートは、トラックバックされてる記事にまかせるとして、それにしてもフィオナちゃん人気は凄いですね。フィルハーモニアの看板娘?
Commented by voyager2art at 2011-05-11 08:10
この記事の写真いいですね! お宝写真って感じで。僕も今回初めて生フィオナちゃんを見ましたが、なるほどーって思いました。
Commented by zerbinetta at 2011-05-14 23:54
褒めてくださってどうもありがとう。でも写真はどうもなんか上手くいきません。粒子が粗いですよね。
やっぱり生フィオナちゃんですよ!どしどし見に行ってくださいね。

<< ユフィ・チェさんと遭遇 ワンランクもツーランクも上の酔... >>