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妹萌えじゃないの   

14.05.2011 @royal opera house

massenet: werther

rolando villazón (werther), sophie koch (charlotte)
eri nakamura (sophie), audun iversen (albert)

benoít jacquot (dir)
antonio pappano / orchestra of roh


わたしの知識が正しければ、妹に萌える男子は多いらしいんです。わたしは残念ながら妹ではないのでちいっとも分からないんだけどね。でも、若きウェルテルは、姉一途。妹が好意を寄せてるのに妹には萌えなかった。ってウィキペデアで調べたら、姉萌えもあるんですね。ウェルテルは姉萌え。一目会ったその日からふたりは秘かに恋し合い、でもウェルテルが告白するのはときすでに遅し、姉、じゃなかったシャルロットは許嫁がいるんですね。好きだ好きだとだだをこねるウェルテル、大人なシャルロットはそれを拒み許嫁と結婚する。ショックを受けてどこかに行ってしまうウェルテル。秘かに彼に思いを寄せていた妹、ソフィーも悲しみに暮れる。そして月日が過ぎて、クリスマスにウェルテルが帰ってくる。またまだ好きだ好きだとだだをこねるウェルテル。拒絶するシャルロット。シャルロットから借りたピストルで自殺してしまうウェルテル。死に際にお互いに実は愛し合ってると確認し合うふたり。
とまあこんな物語なんですけど、ゲーテが書いた若きウェルテルの悩みを読んでも感動しない不感症な大人になってしまったわたし。ウェルテルってガキだなぁ、そして自殺してしまうなんて、最悪の結果をまわりの人(自分ではなく)に残してしまう最低の人間。自分のせいで、自分のピストルで自殺されたシャルロットはこれからどう生きていくのでしょう。そんなことばかりがひしひしと心配になってしまったわたしは、この小説を読む時機を逸したな。多感な高校生の頃読んでいたら涙もしたし、自殺までしたかも知れない。なあんてね。

そんなあらすじ(どんだけすっ飛ばしてるんだか)のオペラは、最近バレエのマノンを観まくったり、去年はオペラのマノンを観た、マスネの作曲。マスネってタイスの瞑想曲ばかりが有名だから誤解していたけど、音楽的にすご〜く豊かな人。ウェルテルもなんか、ワグナーばりの官能的な、のたうったりたゆたったり、息の長い音楽で、堪能しました。パッパーノさんとオーケストラも冴えていて、でも、パッパーノさんって結構うるさいんですね。そして常に口をもぐもぐ。わたし何か食べてるんじゃないかと疑いましたよ。

で、今回のウェルテルは、病気でずうっとお休みしていた(2度と歌えなくなるかも知れない声帯の病気だったみたいです)ヴィラゾンさんのROH復帰作。なのでお客さんの大半はヴィラゾンさん目当て。わたしはそんなことつゆ知らず、中村恵理さん目当てでチケット買ったんでした。で、そのヴィラゾンさん、良かったです。声量はないかもって感じた瞬間もありましたが、熱がありました。そしてこの人、演技が上手いんですね。子供子供しただだっ子のウェルテルを過不足なく演じて歌っていました。こんな人に迫られたらいい迷惑だろうな(他の役だったら迫られたい)。この役、最初から最後まで歌はおいしいとこだらけ。特に最後の死に際の歌は、ヴィラゾンさん渾身の歌でした。カーテンコールではヴィラゾンさん、思いっきり叫んでましたよ。よっぽど嬉しかったんでしょう。

お目当ての恵理さんは、とっても好調そうでした。おきゃんな感じの妹をとても上手く演じていましたし、声も良く伸びていて、とても良かった。去年ロイヤル・オペラの若手研修コースを卒業して、今はミュンヘンのオペラハウスで歌ってるのですが、久しぶりのロイヤル・オペラ、凱旋復帰ですかね。これから、どんどん活躍していって欲しいです。

今日他に目立ったのは姉妹のお父さん役のヴェルンヘス(alain vernhes)さん。声量もあるし、しっかりした低音で好感度大。他方、アルベルト(シャルロットの許嫁)を歌ったイヴァーセンさんはちょっと存在感が薄かったです。

で、最後になりましたが、今日一番良かったのが、シャルロットのコッホさんです。歌も演技もとってもいい。なんか堂々としていて情に流されず、強い意志の女性を見事に歌っていました。声量もあるし、この人がこんなに上手い人だとは思ってなかったのです(わたしが知ってるのはアリアドネのDVDで歌ってる眼鏡をかけた作曲家)。ほんとに良い歌い手さんですね。

不思議なことに、今日は劇場を出てから涙がこぼれ始めました。カーテンコールでのヴィラゾンさんの喜びようになんだか心を動かされたし、コッホさんの強い内面を表現するような歌が、胸の中によみがえってきて、じんわりと感動したんです。とても良いオペラを観たと、きっといつまでも心に残るでしょう。3つ星の心の糧を頂いてまた心が豊かになったような気がします。
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by zerbinetta | 2011-05-14 08:51 | オペラ

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