トランペット吹きはマックもできなければ   

24.05.2011 @queen elisabeth hall

arvo pärt: fratres
joanna macgregor: lost highway, gospel and blues from the deep south
arve henriksen/helge sunde: four pieces from cartography
james macmillan: piano concerto no. 2

arve henriksen (tp)
joanna macgregor (pf) / britten sinfonia


現代音楽を演奏する演奏家って、ときどき予想外に大変。以前に弦楽四重奏の人が水の入ったホラ貝を回してぴちゃぴちゃと水の音のする音楽を奏でていたし(とはいえ、ずうっとホラ貝を回すだけなので弦楽四重奏団じゃなくてもいいのかも。専門のホラ貝奏者がいればいいんだけど、ホラ貝回すだけじゃ食べていけないよね)、今日はトランペット奏者がマックのコンピューターをいじりながら吹いていました。

今日の音楽会はジョアンナ・マグレガーさんとブリテン・シンフォニアの音楽会。マグレガーさんは去年、ゲルギーとロンドン・シンフォニーでメシアンを弾いたとき、うひゃ〜〜かっこいい〜〜ステキ〜って思って、ちゃんと聴かなければと思った人なのです。去年、シティ・オヴ・ロンドン・フェスティヴァルでも弾いたのですが、のんきに構えてたら当日チケットが売り切れちゃってて聴けなかったんです。なので今日は楽しみにしていました。バッハを弾くのよね、ってるんるんしながら会場に着いてプログラムを買うと、全然別の思ってもみなかった曲。全く勘違いしてたのでした。まあいいや。全てが現代曲。なのに、クイーン・エリザベス・ホールはほぼ満員。誰が人気があるのでしょう。

始まりはペルトのフラトレス。美しい曲です。一時期わたしもペルトにはまったなぁ。ステージにピアノはでんとあるけれども、弦楽器(と打楽器ひとり)の静謐な音楽。ブリテン・シンフォニアは初めて聴くけど、結構上手いですね〜。少人数の室内アンサンブル。少し堅めの音色で、濁りのない澄み切った世界を表出していました。
2曲目からマグレガーさん登場。自身のロスト・ハイウェイという曲です。副題通り、ゴスペルとブルースを編曲した音楽。そして、トランペットのヘンリクセンさんも参加。ステージの右手にはマックブックが置いてあって、マイクが2本立っていたのだけど、トランペットはそのマイクに向かって吹くんです。マイクを通した音をコンピューターで加工してスピーカーから会場に届けるという趣向です。特殊な吹き方もしてるんでしょうが、息が漏れるフルートのような(むしろ尺八)音色になったり、靄がかかったり面白かったんですけど、たまにはマイクではなく会場に向かって吹いて欲しいと思いました。マグレガーさんの好みなのかなと思ったんですが、あとで聴いたヘンリクセンさんの曲もそんな趣向だったし、この曲は違う編成のオリジナル曲をヘンリクセンさんのアドヴァイスの元、今日のように編曲しているので、マックをいじりながらトランペットを吹くというのはヘンリクセンさんの得意技なんでしょう。先にも書いたとおり、わたしとしてはこればっかりじゃなくて、トランペットの直接音も聞きたかったです。
マグレガーさんの曲は、なんだか懐かしい感じの、原点を思い出させるような音楽です。マイクを通して加工した音(ときにはピアノの音や弦楽オーケストラの音も加工しています)が、輪郭をぼかしたソフトフォーカスみたいな感じになって、膜を通して脳みそに届くような感じで、それがなんだか、過去のもう手の届かない思い出のような音に感じたのかも知れません。♪い〜つくしみ深〜き〜、わ〜が君イェスよ〜♪のメロディが聞こえたときわたしも、思春期の頃、教会に通っていたのを思い出しました。思い出は誰でも美しい。でも、もう永遠にないもの。消えていく音と同じですね。

休憩の後はヘンリクセンさんの曲。彼はクラシックの奏者というより、ジャズ、フュージョン系を中心としていろんなスタイルの音楽を演奏しているのですね。静かな心安まる音楽でしたが、わたしにはちょっぴり退屈でした。眠くなっちゃった。というかそういう音楽なのかも知れません。お休みなさいの音楽。
もうひとつは、マクミランさんのピアノ協奏曲第2番。マクミランさんの音楽はときどき好き、ときどき苦手、という感じで聴いているのだけど(マクミランさんの曲、ご当地イギリスでは結構よく演奏されます)、今日のは圧倒的に良かった。さすが、職業作曲家って思っちゃった。やっぱり演奏家が作ってる音楽よりも専門の作曲家が作ってる音楽だけに、説得力が違いました。マクミランさんの音楽としては分かりやすい系(基本的に彼の音楽は分かりやすいのですが、ちょっと小難しいのになると何言ってるんだか分からなくなります)。これは良い曲でした。ピアニストは小太鼓も(手で)叩きます。面白い面白い。

アンコールにはまたヘンリクセンさんが出てきて静かな音楽。
でも、今日の音楽会はやっぱり、マグレガーさんでしょう。年齢不詳というかとても若く見える51歳。やっぱりめちゃかっこいい。なんかすごい特別なオーラみたいなものを持った人なのよね。最近わたしが、かっこいいと憧れてる女性は、マグレガーさんとロイヤル・バレエの総帥モニカ・メイソンさん。わたしもできたら、あんなかっこいい人になりたかったな。ぼーっとした豆電球のような人じゃなくて。。。どうすればなれるんだろう。ごまめの高望み?
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by zerbinetta | 2011-05-24 08:14 | イギリスのオーケストラ | Comments(2)

Commented by voyager2art at 2011-05-27 07:44
えええええっっっっっーーーー!!!!!
マグレガーさん、51歳なんですか??
僕もLSOのトゥーランガリーラで彼女を聴いて、その演奏に非常に魅力を感じたのですが、てっきり30代か、ひょっとすると20代かもなんて思っていました。
51歳・・・ 衝撃です。
Commented by zerbinetta at 2011-05-28 18:31
おや、そこに反応ですか。
わたしもプロフィールをネットで見たとき、我が目を疑いましたよ。絶対50過ぎになんて見えない。30代だと思っていましたから。
クラシックの演奏家としては、ユニークでちょっと道に外れた経歴の人みたいなので、もっと聴いてみたいとますます思いました。バッハとか聴きたいです。

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