ロンドン・フィルのトランペットの鉄の規律?   

28.05.2011 @royal festival hall

haydn: symphony no. 88
mahler: songs from des knaben wunderhorn
brahms: symphony no.4

hanno müller-brachmann (br)
vladimir jurowski / lpo


音楽会が始まる前、ロンドン・フィルハーモニックでは、トランペットのパートでちょっと面白い(?)儀式が行われます。トランペットの主席は、ポール・ベニストンさんというにこやかでフレンドリーそうなおじさん。そんな、ベニストンさんが作る鉄の規律。って大袈裟な。ロンドン・フィルハーモニックの人は、音楽会が始まる少し前に三々五々、ステージに出てきます。トランペットも。でも、トランペット・パートの中でベニストンさんは必ず最後に、満面の笑みでにこやかにコントラバスの人やトロンボーンの人に声をかけたりしながらステージに現れます。そして、下っ端トランペット部員は、それを立って待っているのです。そして、必ず、ベニストンさんと握手して挨拶して、それがひとりひとり終わったところで、ベニストンさんが着席するのを合図に全員で着席するのです。こんなことをやっているのはトランペットだけ。最近は、先に出てきた部員が座って待ってて、ベニストンさんが来たら立って挨拶することもあるのだけど、主席を必ず立って迎えることには変わりがありません。いつも見ていてふふふと笑ってしまいます。ぜひ機会があったら、ロンドン・フィルのトランペット、観察してみてくださいね。ちなみに休憩後のときはこんなことはしません(もうすでに挨拶してるから?)。

と余計なことを書きつつ、ハイドン。交響曲第88番は、どなたかが、それぞれの楽章が独立した個性を放っていて、ハイドンの交響曲の中でも一番の傑作のひとつとおっしゃっていましたが、わたしも好き。ユロフスキさんはいつもハイドンをステキに演奏してくれるので楽しみでした。ティンパニは昔の小さなタイプ、トランペットはピストンのないナチュラル・トランペットを吹いていましたが、ホルンは普通のフレンチホルンです。
ところがこれ、今日は不思議なハイドンでした。いつもみたいな快活さがないの。ユロフスキさんはにやりとニヒルな笑みを浮かべて振っていましたが。テンポがゆっくり目で、コントラバスがオクターヴ下を弾いているのではないかと思えるほど重く、速めのテンポで古典作品を振るいつものユロフスキさんらしくないの。かといってそれがつまらない演奏なのではなく、何か部品を精緻に磨いてそこここに置いてるみたいな、実を言うと先日のパッチワークのようなマゼールさんのマーラーの演奏を思い出しました。機械仕掛けの時計の歯車のようなハイドン。新しい発見がたくさんあって面白かったけど、この演奏が良い演奏なのか悪い演奏なのか、わたしには戸惑いが残りました。

マーラー記念年シリーズの曲目は少年の不思議な角笛から7曲。全てバリトンの独唱です。「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」「高い知性への賛歌」「ラインの伝説」「不幸な時のなぐさめ」「この世の営み」「少年鼓手」「死んだ鼓手」が選ばれました。実は、ごめんなさい。わたしダメでした。歌手の背中が見える席で聴いていたのでちゃんとしたことは書けないけれども、ミューラー=ブラッハマンさんの歌はわたし好みではありませんでした。声が、思いっきりバス寄りのバリトンで、ここで思いっきり戸惑ってしまったのがいけなかった。そして彼がスロウ・スターターというか声が暖まるまで時間がかかったようだったこと。第一印象が悪かったんです。なんか歌えてないところを身振りや語りでごまかしているような気がして。上手だったのは高い知性のロバの声。とても失礼なことを感じながら聴いてしまいました。反面オーケストラは上手く(弦楽器は少人数(第1ヴァイオリン12人)の演奏でした)、ユロフスキさんの指揮でマーラーの中期の交響曲を聴いてみたいと思いました(来年はマーラーは採り上げないのね)。でも、会場からは大きな拍手を貰っていたので、違和感を感じていたのはわたしだけだったのかも知れません。わたしの席ではあのバスの声をちゃんと聴くのは難しいですし。でも、ミューラー=ブラッハマンさん、ハンサムだったので、今度はかぶり付きの席でちゃんと聴いてみたい。

休憩の後はブラームスの交響曲第4番。確か、ユロフスキさんとロンドン・フィルはブラームスの交響曲第1番と2番をCD出だしているので、この曲も秋に採り上げた第3番と一緒にCDで出るのでしょうか。
いきなり、ヴァイオリンのアウフタクトの音をしっかり溜めて思わせぶりに粘るというロマンティックな解釈。ゆったり目のテンポで、いつも快速テンポのユロフスキさんなのでびっくりしました。そんなブラームスの演奏は、なんだかとても美しくて哀しい。雨の日の朝。雨粒が空気に浮かんだ汚れを落として、森を透明にするような音楽。想い人のいる故郷を離れて、遠くに離れていく悲しみ、秘かに想っていた人が親友と恋仲になってしまう、そんな手の届かない幸福、憧れを想う悲しみに満ちた音楽でした。
とても集中力のある演奏。弦楽器の美しさは格別でしたが、特に第2楽章中間部のチェロの歌がステキでした。フルートもがんばっていましたね。オーケストラは今日一番の大編成で(打楽器をのぞく)、コントラバスはステージの後ろの左右に4人ずつ振り分けて並ばせていたのがちょっと珍しかったけど、音の厚みが増したように聞こえました。
曲の良さもあって、心の洗われるような演奏でした。
[PR]

by zerbinetta | 2011-05-28 08:39 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

<< マノンになりたい これを怪演と言わずして何を怪演... >>