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ベートーヴェン、キターーーーーーー!!!   

02.06.2011 @barbican hall

haydn: symphony no. 99
beethoven: piano concerto no. 1
nielsen: symphony no. 6

mitsuko uchida (pf)
sir colin davis / lso


サー・コリンさんとロンドン・シンフォニーのニールセン交響曲全曲演奏シリーズ、3回目の今日は交響曲第6番。単純な交響曲です。で、このシリーズ、今回から(ニールセンの交響曲第6番の音楽会は2回あって(録音する関係?)、今日は2日目なんですが、内田光子さんのピアノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏シリーズと重なって、今日はピアノ協奏曲第1番が演奏されます。数日前の音楽会では第2番でした。

まずはハイドン。今日は99番の交響曲です。ついこの間、88番をロンドン・フィルで聴いて、ぞろ目が続いているんですけど(次は111番?)、前にブログに書いたように、ロンドン・フィルと今日のロンドン・シンフォニーがロンドンではハイドンを得意としていて、しかも、全く違うスタイルの演奏をするんですね。今日は、柔らかい音色でほんとに典雅なハイドン。こういうハイドンをさらりと演奏してくれるから、サー・コリンさんとロンドン・シンフォニーって好き。活躍する木管楽器がとっても優しくてきれい。

今日はちょっと悲しいびっくり。サー・コリンさんを聴くのは半年ぶりだけど、ステージを歩く姿はずいぶんゆっくりで、指揮台には椅子が。前は80歳を過ぎてるのに若々しい方だとびっくりしていましたが、この間ご病気されていたせいかしら、ずいぶんと老け込んでしまった感じです。でも、音楽は矍鑠と若々しかったんですけどね。それは一安心。

ピアニストの光子さんは、ロンドン在住。ロンドンっ子にとても人気があります。今日もホールは満員。この曲目ですから光子さん人気でしょう。光子さんの方は相変わらず元気いっぱいで、ステージをささっと歩いてきて、おや、ゆっくり歩いてくるサー・コリンさんを待ってあげて、いよいよベートーヴェン。ほぼ初めて聴く曲です(CDでは聴いたことあるはずだけど、全く記憶にありません)。光子さんの言葉を借りれば(といいつつ、どこで見つけてきたか忘れちゃって、光子さんの言葉か記憶は曖昧なんだけど。しかも英語なのでむちゃ意訳)、ベートーヴェン、キターーーーーーー!!!って音楽。わたしもそう思いました。若くて野心的で。それにしても光子さんのピアノからは奇をてらうところもテクニックも聞こえません。上手いとか下手だとか、フォルテとかピアノとかクレッシェンドとかフレージングがどうとか全然なくって、聞こえてくるのは音楽だけ。光子さんは真の芸術家の領域に達している類い希な音楽家のひとりだと思います。心地良い緊張感の中に音楽にとっぷりと浸ることができてとても幸せです。第1楽章の弱音でスケールを惹くところなんてものすごく神秘的でうっとりと惹きつけられるの。ペダリングがとっても繊細にコントロールされてるふう。それに、今日の光子さんのピアノの音色が、ピアノ線の響きを思い起こさせるような、びんとした強い音色で、モーツァルトやシューベルトを弾くときと明らかに変えていた感じで、ベートーヴェンにはそれが良かった。サー・コリンさんとの相性もとっても良くって、ステキなベートーヴェンでした。会場からは万雷の拍手とブラヴォー。カーテンコールのときもとっても可愛らしくって(あのお歳の女の方に可愛らしいというのも失礼なのかも知れないけれど、でもそれしか言葉が浮かばないし、とっても洗練された意味でかわいらしいんです)、ステージの隅に控えてるサー・コリンさんに代わって、フルートを立たせたりしてほのぼのとした雰囲気。来シーズンの後半の協奏曲も凄い楽しみです。

ニールセンの交響曲第6番も初めて聴く曲。単純な交響曲と愛称が付いてるのに(作曲者自身が付けた副題です)、可愛らしいところもあるけどちっとも単純じゃなくってフクザツ。いきなりグロッケンのキンと冷えた透明な音が響き渡って、うふふ、タコ・テイスト(タコ味じゃないですよ〜。このブログでタコといったらお正月の凧でも明石の蛸でもなく、もちろんショスタコーヴィチです)。でもすぐ弦楽器が入ってくるとああニールセンって思うんだけど、打楽器の扱いはなんかタコの最後の交響曲みたい。透明で純度の高い境地はやっぱり作曲家の到達点なんでしょうか。第2楽章はなんと打楽器と木管楽器、それにグリッサンドを吹くトロンボーンのソロという珍しい編成でしたが今度はメシ・テイスト(風呂、飯、寝るの飯じゃないですよ〜。このブログでメシといったらメシアンです(今決めました))。なんだかトランガリーラIIIを聴いてるみたい感じ。この曲って全体に音色へのこだわりが強くって、ソロが多くて室内楽的。そういう意味ではシンプルな音楽作りなのね。ロンドン・シンフォニーの奏者は腕達者の人が多いから、難なくきらきらとこの音楽を演奏しちゃいます。この曲を聴くのが初めてだけど、とっても良い演奏だと思いました。CD化は楽しみかも(交響曲第4番は振り切れるような快速演奏で、CD評はとても良いものだったけどわたし的にはちょっと疑問符)。

この音楽会、BBCラジオ3で現在オンデマンドで聴くことができます。ぜひ。

by zerbinetta | 2011-06-02 01:14 | ロンドン交響楽団

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