さわさわと無言劇   

09.08.2011 @royal opera house

shchedrin: anna karenina

diana vishneva(anna karenina)
islom baimuradov (alexei karenin)
yuri smekalov (vronsky)
yevgenia obraztsova (kitty), etc.

alexei ratmansky (choreography)
alexei repnikov / orchestra of the mariinsky theatre


恥ずかしながらトルストイの小説って読んだことがありません。読んだのは「イワンのバカ」と「光あるうちに光の中を歩め」くらいで、しかも「イワンのバカ」なんて子供の頃だから、かいつまんだお話でしかありません。そんなわたしが、アンナ・カレーニナのバレエを観に、ウィキペディアで付け焼き刃の予習をして出かけました。そして早速他人(ひと)のせいにして文句を言うのですけど、ウィキペディアのいう主題「不倫という神の掟をやぶる行為に走ったアンナは不幸な結末を迎えざるをえない。しかし、自分の気持ちに誠実に生きたアンナを同じ罪人である人間が裁くことはできない。虚飾に満ちた都会の貴族社会で死に追いやられたアンナと、農村で実直に生きて信仰に目覚め、幸せをつかんだリョーヴィンとが対比され、人の生きるべき道が示されている」、ってあまりに簡単すぎない? トルストイってそんなことを長編小説で書きたかったのかなぁ?
と、簡略なあらすじを先入観にバレエを観てしまったため、ちーっとも分かりませんでした。あらすじでは幸せをつかみトルストイがこう生きるべきとしているリョーヴィンとキチイが最初にちらりとしか出てこず、アンナとその夫カレーニン、不倫の相手ヴロンスキーの物語。だから、幸福な人生は省かれてるし、アンナの没落のお話だけど、最後は自殺するアンナが果たして単純に不幸な人生だったのかも分からない。正直、長編小説を1時間半ほどのバレエに詰め込んだら、ぱっと理解するのも大変(あとで物語の刈り込み、展開のしかたはとても上手くなされているときが付くのですが)。さらに悪いことに、登場人物の顔が覚えられなかったので途中、誰が誰だか分からなくなったりして。もうなんだか。

と物語には混乱したもののバレエ自体は楽しめました。マリインスキーっていうと、ロシアの伝統って思うけど、シチェドリンさんの音楽によるこのバレエがマリインスキーで初演されたのは去年(作品そのものはボリショイで1972年に初演されています)。ラトマンスキーの振り付けはとってもモダン。マリインスキー・バレエは古典だけではなく、モダン・バレエもきちんとできるんだということを示す、マリインスキーの本気(マジ)を感じました。

まず音楽について書きましょう。シチェドリンさんは、好きな作曲家です。昨シーズンはゲルギーとロンドン・シンフォニーが積極的に採り上げてくれたのも記憶に新しいです。奥様が伝説のバレリーナ、プリセツカヤさんだけあって(このバレエもプリセツカヤさんの振り付け、彼女の踊りで初演された)バレエのことを良く知っているという印象です。そして、偉大なロシア・バレエ、特にチャイコフスキーへのオマージュがところどころで聞こえました。現代でもこんなバレエ音楽が作曲されているロシアにちょっぴり嫉妬を感じました。
オーケストラも今までずいぶんと心ない演奏をしていましたが、今日は良かったです。これが、この曲のせいなのか(気を抜くと弾けない)、指揮者がレプニコフさんに替わったせいなのかは分かりません。初めて(?)ちゃんと音楽が楽しめました。

振り付けは、わたしが語るのは124年早いのですが、物語バレエの中に現代的な振り付けがとっても新鮮に感じられました。そしてなんだか無声映画を観ているようです。音のない動き。もちろんバレエですから声は無いんですけど、ロイヤル・バレエだったら、あたかも声が聞こえてくるように演じられるのです。公演全体を通して、マリインスキー・バレエからは声が聞こえてくるような感覚が無くて、それがマリインスキーの特徴なんだと思います。顔の表情もどちらかというと無表情。気持ちが顔に表れるロイヤルとは違います。とはいえ、踊りから内容はとても良く伝わってきました。とにかく踊っているダンサーのレヴェルがハンパ無く高いです。アンナ・カレーニナは2回公演があるのだけど、どちらもベスト・メンバーで臨んでいるのでしょう。

タイトル・ロールを踊ったのは、ロパートキナさんと共にマリインスキーのバレリーナの2枚看板のひとり、ヴィシニョーワさん。今回の公演では初めて観ますが、10年くらい前、まだわたしがバレエにはまる前に胡桃割り人形で観たことがあります。マーシャの役で、最初みんなの中で踊っていたのだけど、ひとりだけ光ってる人がいて、それがプリンシパルのヴィシニョーワさんと気がついたとき、バレエの素人でも分かるオーラの凄さにびっくりした思い出の人です。そして今日もやっぱり素晴らしかった。踊りがとってもきれい。ああ、なんで今回、ヴィシニョーワさんもっと観に行かなかったんだろう。ぐーんとかなり後悔です。最後、自殺を決心するところの心の崩壊ぶり、目の表情だけの演技でしたが、ドキリとしました。暗闇が彼女の中に広がって。表現者って死の影すら自分の体の中に取り込むことができるんだなって。
カーテンコールのとき、息子役のロマン・スルコフくんをまるでほんとの母親のように気遣っていたのが印象的でした。心が温かくなりました。

アンナを取り巻く男。アンナの夫、カレーニンにはプリンシパル・キャラクター・アーティストのバイムラドフさん、ヴロンスキーにはセカンド・ソロイストのスメカロフさんでした。スメカロフさんは火の鳥で王子を踊っていた人ですね。どちらの男性もステキでした。カレーニンにはくるくる回るような派手な踊りはないのですが、妻の不貞を知ったときの神経と筋肉が上手く協調しない動きは、気持ちを良く表していて凄いと思いました。

あまり出番はなかったけど(第1幕の最初の方だけで踊った)、キティを踊ったオブラツォワさんもとても良かったです。そういえば今日は、小柄コンビですね。

この演目また明日も観に行きます。

終演直後のヴィシニョーワさんとスメカロフさん
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オブラツォワさん
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スルコフくんとヴィシニョーワさん
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ヴィシニョーワさん、スルコフくん、スメカロフさん。リラックスしたときのヴィシニョーワさんとっても可愛らしかった
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by zerbinetta | 2011-08-09 05:55 | バレエ | Comments(0)

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