久しぶりに上手いオーケストラを聴いた気がした   

17.08.2011 @royal albert hall

shostakovich: the age of gold
shostakovich: violin concerto no. 1
stravinsky: petrushka
tchaikovsky: francesca da rimini

lisa batiashvili (vn)
esa-pekka salonen / po


タコ好きです。わたしの元祖ヴァイオリン4人娘のひとり、リサ(・バティアシュヴィリさん)がヴァイオリン協奏曲を弾くとあればそりゃあ聴きに行くでしょう。といいつつ、チケット取れなかったんです、最初。ロンドンではそれほど人気がないと思われるフィルハーモニアなのに(わたしの感じでは、音楽会がコンスタントにいっぱい(ソールド・アウトではない)になるのは、一にロンドン・フィル、二にロンドン・シンフォニーです)、ほとんど売り切れ?と不思議に思いつつ、何とかゲットしました。

始まりは、タコの「黄金時代」の組曲。元々フットボールを主題にしたバレエの音楽だそうです。若い頃の作品で、ジャジーでとっても楽しい音楽。そして管楽器のソロが大活躍。でも、バレエは失敗だったんだって。こんなステキな音楽なのに。いや〜出だしからびっくりしてしまいましたよ。フィルハーモニアってこんなに上手かったかなって。久しぶりに上手いオーケストラを聴いたような気がしました。この間の、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニックもとってもステキだったけど、あちらは地元のステキなオーケストラという感じで、フィルハーモニアの方はカラーがないけど、国際的というか、超トップレヴェルのオーケストラという感じ。ソロが上手い上手い。サロネンさんもびしっと決めてましたね。

2曲目にいよいよタコ、ヴァイオリン協奏曲第1番。これが全く素晴らしく良かった。最初っから最後まで引き込まれっぱなし。リサは、終始美音で丁寧に丁寧に歌って音楽を紡いでいきます。じんわりと歌が静かにわき出てきて、わたしの心を少しずつ湿らせていく。リサのヴァイオリンは、ねっとりとしたふくよかで暗い低音から静かに始まって、冷たく澄んだ高音、ヴィブラート控えめの美音は凛としていて、強い意志の力を感じさせる。第1楽章はショスタコーヴィチの月の世界。世界は人の内側に浸みていく。静かに静かに音楽はそよぐ。そんなリサのヴァイオリンをオーケストラも見事にサポート。ソリストとオーケストラの相互作用。協奏曲はこうでなきゃ。
速い楽章はアグレッシヴに疾走。実はわたし、リサって4人娘(元祖)の中では、テクニック的には1歩後ろかなって思っていたけど、全然そんなことない、正確なテクニック。全くごまかしなしで全ての音が豊かに鳴ってる。リサの演奏には濁りがなく透明で暗闇にきらきら。月明かりの中の泉。タコの音楽に見え隠れする皮肉が薄まるので、これは賛否あるかな。わたしは好き。
でもやっぱりリサさんの最高の美質は、ゆっくりした楽章にあると思うんです。ティンパニ(もちろんスミスさん)の凶暴な打ち込みから始まるパッサカリア(ちなみに今日のスミスさんは、舞台の1番上で、ちゃんとオーケストラの中で叩いていました。今日はオーケストラが絶好調だったのでスミスさんがひとり気を吐いて楔を打ち込む必要はなかったんでしょう)。ここでリサさんは息の長い歌を紡いでいきます。それが少しずつ高揚していく様がとっても素晴らしかった。この哀しい、でも美しい音楽が心に満ちてきます。リサさんの強い想い、強い音、にわたしの全てが共鳴します。リサの音楽からはいつも風景が見えます。それは、具体的な風景とは言えないけど、心の中に大切にあった風景。大事にしまっておかれた想いが涙と共に静かにあふれてきます。会場の空気もぴーんとリサのヴァイオリンに焦まっていく。
心も体も完全にリサの音に縛られたような長大なカデンツァのあとの温度がぐんぐん冷えていくような不思議な興奮を湛えたブルレスケ。なんだかリサはこの長大な協奏曲を一筆書きで弾ききった感じです。
正直、リサがここまでの成長を遂げているとは思いもよりませんでした。ロンドンで聴くのは、何回かのキャンセルがあったので、シベリウスの協奏曲に次いで2回目だけど、音楽の深化にびっくりしました。そして、応援しているわたしはめっちゃ嬉しかった。
アンコールにはなんと、オーケストラ伴奏付きで、タコの7つの子供の小品「人形の踊り」から叙情的なワルツ。この選曲も粋。協奏曲で張り詰めた気持ちを優しくほぐしてくれました。大好き、リサ。
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休憩のあとはペトルーシュカ。これもソロの上手さを生かした音楽。サロネンさんは手綱を締めつつも、ソロには自由に思い切りよく吹かせている。このさじ加減が絶妙。あっトライアングルは凶暴すぎでしたけど。そして、とにかくいろんな音が聞こえてくる。ストラヴィンスキーが書いた複雑で(複雑さ、新奇性は春の祭典以上でしょう)カラフルな音楽を見事に音にしている感じ。細かいフレージングにもしっかり目が行き届いていて、とってもわくわくするペトルーシュカでした。

そして最後はチャイコフスキーの「フランチェスカ・ダ・リミニ」。あまり聴かない曲ですよね。わたしも初めてです。なのであまり面白くない曲かなぁって思ってました。最初のうちは、勢いはあるけど荒っぽくてやっぱりちょっとつまらないかなぁなんて思ってたんです。でも、聴いてるうちにぐいぐいと体の芯に来て。何しろサロネンさんとフィルハーモニアの演奏が、血管が沸騰するほど熱い。サロネンさんがばりばりロマン派のこういう曲を採り上げるのは、ちょっとびっくりしたのだけど、いやはや名演だったと思います。曲の内容よりもいい演奏。いや〜凄かったです。サロネンさんって実はとっても熱い人なんだ、と今日気がつきました。
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スミスさんと銅像
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全然関係ないけど、ハープのウェッブさんの名物お髭、さらにふさふさ
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by zerbinetta | 2011-08-17 01:47 | フィルハーモニア | Comments(0)

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