BBCラジオ3新しい世代の音楽家育成プログラム方式
2011年 09月 10日
例えばメトは、リンドマン・ヤング・アーティスト・デヴェルティメント・プログラムというのがあって、若い歌手を育てているし(出身者にはドーン・アップショウさんとかダニエレ・デ・ニースさんとかがいらっしゃいます)、ワシントン・ナショナル・オペラはオペラリアで賞を取った歌手を呼んで舞台経験を積ませています(ドミンゴさんつながり? 森麻季さんがそのひとり)。ロイヤル・オペラのジェット・パーカー・ヤング・アーティスト・プログラムからは、昨年、中村恵理さんが巣立っています。日本のオペラ・ハウス、新国立劇場と日本オペラ振興会(藤原歌劇団等)でも、研修制度があるようですけど、授業料を払わなければいけないんですね。大学院もそうですけど、日本ってプロフェッショナルの育成に吝いですね。(USもイギリスも理系の大学院はボスが学生にお給料を出します(出せなければ学生を取れない))
でも、すぐに制度を変えてお金を出して若手を養成するようにするのは難しいかもしれません。じゃあもう少し難易度の低いところで、BBCラジオ3ニュウ・ジェネレイション・アーティスト・スキームを真似してみるってどうでしょう。
BBCのこれは、2年間のプログラムで賞金の他にロンドンでの、リサイタルやオーケストラとの共演が約束されます。リサ・バティアシュビリさんやスティーヴン・オズボーンさんたちが最初の受賞者で、他にもアリス・クートさんやティベルギアンさん、アリーナがいます。アリーナはこのプログラムの出身者とたくさん共演していて、同じ釜の飯つながり活用しまくりですね。過去の受賞者で、今活躍している人の顔ぶれを見ると、どういう選考のしかたをしているのか、残念ながら分からないんですけど、選考する人たちの耳がめちゃ肥えてると思います。
もちろん、賞金は出すんですけど、このプログラムの最大の利点は、なんと言っても音楽会。プロフェッショナルの音楽家ですから、演奏すること、それもたくさんの耳の肥えた聴衆の前で演奏することが、将来のキャリアに繋がると思うんです。そして、それは、東京でもできると思うんですよ。東京って、世界最大のクラシック音楽受容都市のひとつだから、愛好家の耳は肥えてるし、オーケストラもたくさんあるから、共演しやすいと思うんですよ。プログラムの主催者のひとりに、オーケストラやホールが入ってると、そこでリサイタルや共演ができると思うのです。もちろん、プロフェッショナルの演奏家としてギャラは出します。それでも、収益は多少あると思うので、全くゼロから始めるより、お金の面でも始めやすいと思うのは素人考えかな?
選考は例えば国内のコンクールとタイアップしてもいいし、公募でもいいとは思うんだけど、最初はクローズドで、選考委員が選ぶのがいいと思います。もちろん、不公平のないような人選をしなきゃいけないけれど、例えば、内外のオーケストラやソロで活躍している日本人が推薦するとか、あっもちろん外国人の選考委員がいた方がいいと思うんだけど、きちんと若い音楽家を見つける耳を持った人が、選考に参加できるようにした方がいい。そしてもちろん、対象は国籍とか問わずです(もしかすると特徴を出すためにアジア人(系)に絞っても良いかもしれません)。
多分、そうして年に5人くらいとっても、本物の音楽家になる人は、年にひとりいるかいないかかもしれません。でも、若い人を育てるってどういうことでしょう。100%上手くいくことなんてあり得ないし、それを前提としてはダメだと思います。お金は無駄遣いしなければ、いいものは得られないんです。少なくともこういうことは。
でも、将来、日本発のプログラムで、素晴らしい音楽家が育っていけば、音楽ファンとしても嬉しいじゃないですか。音楽ファンも聴くだけじゃなくって、音楽を創っていかなきゃ。演奏することだけが音楽活動ではない、音楽文化への参加が音楽を豊かにしていくことだと、心から信じます。
by zerbinetta | 2011-09-10 01:19 | 随想