ロンドンのお客さんステキ! ユロフスキ&LPO ムソルグスキー・トリビュート   

21.09.2011 @royal festival hall

mussorgsky: night on a bare mountain (original)
mussorgsky / zimmermann: in the village; on the southern shore of the crimea
raskatov: a white night's dream (homage to mussorgsky)
zemmermann: stille und umkehr
mussorgsky / raskatov: songs and dances of death

sergei leiferkus (br)
vladimir jurowski / lpo


オーケストラは、我らがユロフスキさんとロンドン・フィルハーモニックが先駆けて開幕。一昨年はマーラーの交響曲第2番、昨年は第3番とマーラーの大曲で開幕していましたが、今期はなんと、ムソルグスキー! しかも、「はげ山の一夜」のオリジナル・ヴァージョン、ツィンマーマン編曲によるピアノ曲、ラスカトフさん編曲による「死の歌と踊り」。その合間に、ツィンマーマンのオーケストラ・スケッチ、ラスカトフさんの「白夜の夢」の初演が挟まるという、意欲的というかマニアックなプログラム。「展覧会の絵」が入らないという潔さ(ラヴェル編曲じゃないマニアックな「展覧会の絵」はそれはそれでいいけど(わたしは他に2種類聴いたことがあります)。お客さんの入りはまあいい方だけど、満員というわけにはいきませんでした。
シーズン始まりって独特の雰囲気がありますよね。久しぶりに顔を合わせる近所のお客さん。ロンドンの音楽会は1シーズン同じ席でというシーズン・チケットの売り方をしていないので、隣の席がいつも同じ人ということはないのだけど、いつも近所にいる人は何人かいるのです。わたしは、声をかけないけど、顔を見知っている人には心の中で、こんにちは。またよろしくお願いしますって言いました。仲間が集まるという感じで嬉しいのです。

まずは「はげ山の一夜」オリジナル。大好きなんです。ムソルグスキーの音楽のかっこいいのなんの。広く演奏されるリムスキー=コルサコフの編曲(編曲元はこのオリジナル版ではなくて合唱の入る版)の艶やかでセンスのいい、言い換えれば毒を抜いたのよりも断然好き。そして、ユロフスキさんの演奏はまさにその音楽。わたしにこの曲を教えてくれたアバドさんのCDの演奏がスマートで都会的に聞こえるほどごつごつして野暮で粗野。曲の構成とかテンポの動きとか不器用なところを不器用なまま表出した感じ。ゆで卵を一所懸命立てたような不安定感。それがいいんです。わたし的にはつかみOK。ってか最高。

次は、ムソルグスキーのピアノ曲2曲をツィンマーマンがオーケストレイションした小品。全く知らなかった曲です。ムソルグスキーのピアノ曲って展覧会の絵くらいしか知らないし、彼がどんな曲を書いてきたのかすらあまりよく知らないのです。でも、穏やかでとっても美しい音楽でした。

そしてその次に、ツィンマーマンのオーケストラ・スケッチ「静止と反転」。弦楽器がヴァイオリン1、ヴィオラ1、チェロ3、コントラバス3の変則編成で、打楽器や管楽器のソロが加わる小さなアンサンブルのための10分くらいの音楽。ツィンマーマンは初めて聴く作曲家ですけど、これがもう本当にむちゃくちゃ良かったの。雨がしとしと降る音でかえって静寂さが強調されるように、楽音で静けさが奏でられる音楽。曲もステキだし、演奏も相当ステキで心から感動しました。それはなんと、会場にいた人たちも同じようで、びっくりすることに、こんな耳に優しい音楽とは言えない音楽に、心のこもったブラヴォーが何回も。ユロフスキさんは楽譜を掲げて音楽に敬意を表したけど、ロンドンの音楽を良く知っているお客さんにも感動しました。あの拍手とブラヴォーは本物の音楽に対する尊敬の気持ちがこもっていました。

休憩のあとは、ラスカトフさんの「白夜の夢」、ムソルグスキーへのオマージュです。この曲は、ロンドン・フィルとフェラーラ、ブリュッセルの委嘱で、今日がその初演。とてつもなくたくさんの打楽器を含む大きなオーケストラのための作品です。打楽器はステージの上だけではなく、後ろのオーケストラを見下ろす合唱席にもたくさんあります。ラスカトフさんは1953年生まれのロシアの作曲家。もちろんわたしも彼の曲、聴くのは初めてです。
音楽は、耳障りな部分もなく、聴く人を拒絶する独りよがりの音楽ではないし、すぐ理解できるかと言えばそうではないのだけど、聴きやすい音楽だと思いました。たくさんの打楽器の扱いを含めてとっても良く書けてる優れた作品だとは思ったのですが、休憩前に聴いたツィンマーマンの音楽があまりに素晴らしかったので、少し力の差を感じてしまいました。

最後は、レイフェルクスさんを迎えて、ムソルグスキーの「死の歌と踊り」。しかし今日のプログラム、記念すべきシーズン開幕をちょっと無視してますね。いや、開幕だからこそこんな粋なプログラミングが可能なんでしょうか。オーケストレイションはラスカトフさん。「白夜の夢」でも使ったたくさんの打楽器とエレキ・ベースも使います。彼のオーケストレイションはムソルグスキーの雰囲気を残すというよりも自在に自分の世界でお化粧しているという感じです。わたしは、ムソルグスキーのかさかさ感のあるショスタコーヴィチがオーケストレイションしたものの方が好きですが(だってタコ好き)、第2曲のフォーク・ソング風のセレナードの伴奏にエレキ・ベースやギター、ドラムを使ってポピュラー・ソング風だったのが、上手いっ!雰囲気があってとっても良かったです。レイフェルクスさんは久しぶりに聴きましたが、背広が似合う感じで、重厚な歌は盤石です。
それにしても、最後、ラスカトフさんも舞台に上がって、ロシア人の男性が3人舞台にそろい踏みすると、なんだか濃いいなぁ。ロシア人って、勝手な思いこみかもしれないけど(友達には当てはまる)、ねっとり濃いですよね。

まあそれはおいといて、挑発的なプログラムで始まった我らがロンドン・フィルの今シーズン。これからどんなステキな音楽が聴けるのでしょう。楽しみでしかたがありません。

♬この音楽会の模様は、ロンドン・フィルのListenAgainで聴くことができます。10月12日までです。ぜひ。
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by zerbinetta | 2011-09-21 07:52 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(0)

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