ムーミンはいなかったけどトロールはたくさんいたよ オラモ、BBCSO シベリウス他   

28.10.2011 @barbican hall

bax: tintagel
saariaho: leino songs
sibelius: luonnotar, symphony no. 3

anu komsi (sp)
sakari oramo / bbcso


今シーズンのBBCシンフォニーの目玉のひとつは、シベリウスの交響曲全曲演奏でしょう。シベリウスの交響曲全曲演奏は1昨年のシーズンにロンドン・フィルがオスモ・ヴァンスカさんでやっているのですけど、BBCシンフォニーのは、ひとりの指揮者ではなく、6人の指揮者によるシーズンを通しての音楽会です。今日がその第1段。なんと!意表を突いて一番マイナーな第3番から。わたしは大好きなんですけどね。イギリスはシベリウスを高く評価した外国のひとつなので、こうしてシベリウス頻度が高いのが、シベリウス好きのわたしにはとっても嬉しい。そういえば、オラモさん、プロムスでも交響曲第6番のしみじみと良い演奏を聴かせてくれたので期待してたのです。

始まりはバックス。フィンランドの作曲家だと思ってたら、イギリスの作曲家でした。音楽会が終わるまで気づかないでいて、ばかね〜わたし、今日はフィンランド特集って独り合点してました。ってよく考えたら、この人の音楽、オラモさん、プロムスでも聴かせてくれたんだった。。。すっかり忘れてた。「ティンタジェル」は交響詩。解説を読んでいないので、どんなことを音楽にしているのか分からないけど、なんだか海の香りがしました。とても聞きやすくて、ちょっとかっこよくて、吹奏楽っぽくて(前に聴いたバックスの音楽もそんなこと思ったっけ)、知らなかったステキな曲を教えてもらって嬉しい気持ちです。つかみOK!

でも今日の刮目は(使い方合ってる?)、サーリアホさんの「レイノ歌曲集」。これがもうステキなのなんの。サーリアホさんの音楽はこの間バレエでさんざん聴いてたし、前にも何曲か聴いたことあるんだけど、この4曲からなるちいさな歌曲集は、とっても親しみやすくて、透明できれいでとってもステキ。そしてこれを歌った、アヌ・コムシさんがまたきらきらな透明な水晶のような声でステキなの。こんな紋切り型の言葉使いたくないけれども、もの凄い透明度で底の砂や水草やお魚まで見える北の国の湖のようなきれいさ。そして、フィンランド人の彼女にとって自分の言葉。それに、この曲、彼女のために書かれているのですね。だから、わたしには言葉は分からないけれども、彼女の言葉と音楽と意味が自然に結びついているのが、とても強く感じられました。音符だけを歌ってるんではなくて、言葉の持つ意味が込められているように感じられたんです。

休憩のあとの、シベリウスの歌曲「ルオンノタール」。この曲もとってもステキでした。交響曲第2番を思わせるな旋律があって、夜の月明かりに暗く銀色に光る波頭のよう。それはもうきらきらときれいで、でも、なんだか哀しい。空や星や月の誕生を歌った神話の物語なんですね。真っ暗な世界にわたしも浸れていたような気がします。お客さんもたくさんの拍手をコムシさんに贈っていました。

最後は交響曲第3番。わたし、この曲ってちっちゃくてさりげなくて、秘やかに咲く花のようと思っているのですね。大曲交響曲第2番と孤高の苦渋に満ちた交響曲第4番に挟まれて、ほのやかな光に満ちていて心が安らぐ。という曲だと思ってたんだけど、オラモさんの演奏は、雄大で少し重々しいものでした。わたしの好きとは違うと思ったんだけど、音楽の雄弁さに心が揺れて、最後はどっしりと感動しちゃいました。オラモさんの演奏にはフィンランドの森の空気をしっかり感じました。BBCシンフォニーもオラモさんに相応して、深い森の静けさ、愉しい不気味さを音にしていました。BBCシンフォニーの音はもともと地味(あっこっちの漢字の方がいいかも。滋味)で派手やかさはないので(色彩感がないということではなく、それぞれの色にいぶし銀色が混ざっていて、いぶし銀色がオーケストラの基調のトーンとなっている感じ)、それがオラモさんの音作りにぴたりと合うのです(わたしはもう少し軽いのが好きなのですが)。
フィンランドの森はムーミンの森。でも、ムーミンはいなかったけど、ムーミンの仲間のトロール(妖精)たちはそこここにいました。風が木木を揺らしたり、遠くに山が見えたり、葉がずっと覆い被ってお日さまを曇らせたり、そんな森の中をわたしは音楽に誘われてずうっと歩いていたような気がします。ときには駈けてみたり、立ち止まったり、歌ったり、完爾としたり、泣いたり。音楽はわたしの記憶も呼び覚まします。それは、現実だったり、お話の中の世界だったり、心は妖精と一緒に自由に飛び回ります。そんな音楽でした、オラモさんの音楽は。

大きな風が木々を吹き抜けるように、会場からは大きな拍手。BBCシンフォニーの音楽会は、暗黙の了解みたいのがあって、どんな良い演奏でも指揮者を呼び出すのは2回(あれっ?3回だったかな)というのがいつもですが、今日は1回多く呼び出されました。お客さんが少し変わったのかな。北欧の人多かったのかな。でも、BBCシンフォニーの音楽会は、おいしいお米を食べてるようで本物のごちそうを食べた幸福がいつもあるようです。
[PR]

by zerbinetta | 2011-10-28 09:29 | BBCシンフォニー | Comments(0)

<< ワグナーに愛は語れない さまよ... 極限の孤独 ズウェーデン、ロン... >>