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一線を越えてしまった ヌニェス、マノン。ロイヤル・バレエ   

05.11.2011 @royal opera house

massenet: manon

marianela nuñez (manon), nehemiah kish (des grieux)
thiago soares (lescaut), christopher saunders (monsieur g.m.)
claire calvert (lescaut's mistress), elizabeth mcgorian (madame), etc.

kenneth macmillan (choreography)
martin yates / orchestra of roh



もう今日はマリアネラ讃で許して〜。わたしのまわり、何故かアリーナさん派とタマちゃん派に分かれていて(あとアコスタさん派がひとり)、マリアネラさんのファンいないんだもん。ブログを私物にしてって怒られそうだけど、だって私物だもん。もう今日は、(ファンということは抜きにしても)徹底的にマリアネラさんを褒め称えるわよ。でもその前に。

素晴らしかったまわりの役の人たちのことを書きます。まずは誰を置いてもデ・グリューのキッシュさん。観る前は、大丈夫かなぁ合うのかなあって思っていましたが、すごく良い。最初はちょっとぎこちなかったけど、ウブで一途な若者を上手く演じていましたし、リフトの安定感もやっぱりプリンシパルだなって思わせるものがありました。マリアネラさんが安心して飛び込んでいけるような。
そして、ムッシュGMは、大好きなギャリーさんではなかったけど、もちろんサウンダーズさんのもすこしお上品なのもステキ。サウンダーズさんは、エロじゃなくて王様が似合う人だけど、背が高くて落ち着いた風情でかっこいいし、ちゃんとエロいし、でも育ちの良さは感じられて、これもアリです。ちなみに、ギャリーさんは今日は憎っくきエロ看守。嫌あぁ〜マリアネラさんがかわいそう。そして、エロ看守に目を付けられる解放される囚人(売春婦たち?)に茜さんが!怪我でオーロラを降板したので心配してたけど、姿を見つけて喜。嬉しい♪
そして今日は日本人は、娼婦館のお客に平野さん、張り合う娼婦にユフィさんとひかるさんが出てらっしゃいました。あっそれから娼婦の中に扶生さんの姿も。ユフィさんとひかるさんのユーモラスな喧嘩のシーンを観るのは、2度目ですけど、ほんと仲が悪そう。そしてこのおふたり、表現のしかたに共通の土台が見て取れるので、ふたりの絡みがとってもフィットしてるんです。表情が日本の漫画チックというか、テレビドラマ的というかそれがとっても上手いし、日本人のわたしにはちょっと懐かしかったりして、日本的なものを発見して嬉しかったり。
今日のレスコーの愛人はクレア・カルヴェートさん。この春のマノンでこの役デビュウしたんですよね。ファースト・アーティストの彼女にしては大役ですけど(そういえば彼女、眠りではリラの精を踊っていましたね)、とっても期待されてるんでしょう。とても良かったです。

さて、レスコーと言ったら圧倒的にティアゴさんなんです、わたしにとって。彼の仏頂面での酔っぱらいぶりやっぱり最高。彼、王子さま役よりもこういう小悪党役ぶりが絶対似合ってる。ほんとステキなんだから。正直この役3人くらいの人で観ていてみんなそれぞれ上手いし良いのだけど、でも、ティアゴさんがやっぱり圧倒的にいいんだな。デ・グリューにマノンを売ったことを告げるときも、プリンシパル同士のティアゴさんとキッシュさんの踊りは迫力あるし。そして今日は特別。だって、マノンは最愛のマリアネラさん。兄と妹の役柄なのに観てるといちゃつきぶりが恋人同士のよう。でも、この小悪党、マノンをそそのかしてデ・グリューにいかさまやらせるのよね。マリアネラさん、インタヴュウの言葉じゃないけど、「ティアゴ、こんなところで何してるの?」でしょうね。

さあ、いよいよマリアネラさんを褒め称えるわよ〜〜。
まず出てきたとたんから、圧倒的にかわいらしい。実は、このマノンの髪型ってわたしの好みじゃないし、マリアネラさんに似合ってるのかなっていうと疑問なんだけど、それでもこう圧倒的にかわいらしいの。彼女から出る雰囲気が全てを凌駕してるのね。そして、マリアネラさんのマノンは家を出て、外の世界に好奇心を持った少女。冒険心に溢れてる。見るもの見るもの新鮮で興味を惹かれてる感じ。だからそんな目線で彼女に見られる男の人も彼女を見て惹かれちゃうんでしょうね。彼女にはまだ邪念はないけど、男の人も彼女の好奇心の対象。デ・グリューのアプローチに、今日気がついたんですけど、デ・グリューがわざと後ろ向きでマノンにぶつかってきっかけをつかむときって、デ・グリューが本を落とすのではなく、マノンが老紳士にもらったバッグだったんですね。このときはまだ、お金には興味がないというのを印象づけてるのかしら。ここで、マノンの好奇心、冒険心に火が付いて、デ・グリューとふたりで旅立つ。マリアネラさんのそんな表現がとっても自然でまるで言葉があるよう。
寝室のシーンでは、手紙を書くデ・グリューの羽ペンを取って投げるところが、いたずらっ子ぶりがもうマリアネラさんにぴったり。そしてパ・ド・ドゥ。ものすごく幸せな気持ちになった。ほんとに愛し合ってる感じ。マリアネラさんの踊りは羽のように軽くて、空に浮いてるみたい。うっとり。ここまでの軽さは、年始めに観たジゼルにはまだなかったの。マリアネラさんものすごく上手いのにますます上手くなってる。そして、デ・グリューの留守中にレスコーと現れたムッシュGMのお金に引かれていくところもごく自然な表現で無理がないの。心が少しずつ変心していくようで、最後までデ・グリューへの愛を持っていたけど、最後の最後に彼を捨ててムッシュGMについていくところでは完全に新しいマノンに生まれ変わってる。女は怖いってほんとに思った。
第2幕からは、だから全くの別人。自分の魅力を知って男たちを手玉にとる女になってる。怖いくらい自然に。完璧なファム・ファタル。デ・グリューをいかさまに誘うとこなんてもう本当に悪女。もう一度デ・グリューとのパ・ド・ドゥがあるけれども、もうここではデ・グリューを以前ほどには愛していない。ふたりの心はすれ違ってる。そして破滅。
第3幕では、彼女は完全に魂を失ってるよう。踊りも力なく相手にされるまま。看守に蹂躙されるところなんて悲惨すぎて目を背けたくなるし、最後の沼地のパ・ド・ドゥの苦しさと言ったら。この舞台、もう第1幕からずっしりと感動して席を立てなかったくらいなんだけど、ここに来て心に重くのしかかる悲しさ。マリアネラさん一線を越えたって思った。もう死力を尽くして、本当に、命の灯火が消えゆこうとする最後の力を振り絞って踊っているように見えるの。お願い、もう止めて、これ以上苦しまないで、死んじゃうよおって叫びたくなるくらい。息を飲んで涙も涸れる。もうこれは踊りではない。観てはいけないものを観させられてしまったように苦しい。わたしは本当にこんな結末を観たかったんだろうかって思わず思っちゃった。お芝居だと分かっていても、いえもうこれはお芝居なんかじゃない、瀕死のマノンがそこにいるの。目の前で人が死んでいくのを観るなんて。。。舞台が終わったあと写真は撮ったけど、わたしも放心状態。抜け殻。マノンの人生がわたしの裡にずっしりと沈殿して。

マリアネラさんを「発見」して以来、大好きでずうっと観てきたけど、彼女の成長ぶりが手に取るように分かるってすごいこと。特に、今年の始まりのジゼルからの表現者としての充実ぶりは素晴らしかった。そしてついに今日、さらに途方もない高みに昇ったと思います。マノンはこの春、ロール・デビュウして、今日がオペラ・ハウスで踊るの2回目だと思うのだけど、フレッシュでいて完成されたマノン。マリアネラさんの良さは、物語への理解度の高さ。この物語を完全に読みこなして自分の踊りに昇華させてる。もともと、物語の表現はとっても上手かったんだけど、そしてそれをとっても分かりやすく表現していたんだけど、ときにそれが分かりやすすぎてあざとく感じられることもあったんだけど、今日は全くそれがなくて、全く自然にマノンに一体化してた。そして彼女のマノンは短い舞台の中できちんと大胆に成長していったの。それも自然に必然の流れとして。なんという凄さ。マリアネラさん自身も深化しすぎ。
あのいつも幸せいっぱいで、わたしまで嬉しくなるステキな踊りを見せてくれたマリアネラさん。それが、悪魔に魅入られた真の芸術家のみが持っているような世界に引き込まれている。彼女の技術や表現力云々なんてもうどうでもいい。そんなレヴェルではもはやないんです。まさにマリアネラさんはわたしにとってわたしの何かを変えるファム・ファタル、運命の女なのかも。これ以上彼女の深化を観るのは怖い気もするしわくわくもする。もう彼女はバレリーナの枠を越えている表現者です。

舞台直後のおふたりは魂を抜かれたように放心状態
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花束を贈られてやっと笑顔。視線を交わす?おふたり
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マノンの音楽を構成して編曲した指揮者のイェテスさん
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ユフィさんとひかるさん、そして看守のギャリーさん
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クレアさんとマクゴリアンさん、そしてサウンダーズさん
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苦み走ったティアゴさん
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マリアネラさんとキッシュさん なんかいい感じ
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キッシュさんから逃げるマリアネラさん
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by zerbinetta | 2011-11-05 07:41 | バレエ

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