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琥珀のように純化した想い出 ロイヤル・バレエ セクスタプル・ビル その1   

19.11.2011 @royal opera house

royal ballet triple bill

barry wordsworth / roc, oroh


ロイヤル・バレエのトリプル・ビル、土曜日のマチネとソワレ続けて2回観てきました。重くない演目なハズなのできっと大丈夫。たくさんの人が出るので、2回でロイヤル・バレエのプリンシパルを12人(予定されていたのは13人でしたが、ゼナイダさんが怪我で降板のため)も観れるのでお得。ゼナイダさんの降板はちょっと残念でしたが。

-asphodel meadows

liam scarlett (choreography)
poulenc (music)
robert clark, kate shipway (piano)

sarah lamb, leanne cope, yuhui choe,
johannes stepanek, josé martín, steven mcrae, etc.

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最初は、ロイヤル・バレエの現役ダンサー(ファースト・アーティスト)でもあるリアム・スカーレットさんの振り付けの「asphodel meadows」。死者の魂の休むところ。プーランクの2台のピアノのための協奏曲に振り付けられたこのバレエを観るのは2度目。去年、主役は同じキャストで観ています。なのに、さあ始まるぞ〜って頭の中に流れていた音楽と違った音楽で。わたしの頭の中の音楽、ピアノ協奏曲だったんですね〜。出鼻をくじかれつつも気分を持ち直して、第1楽章の速い快活な音楽はラムさんとステパネクさん。白黒の現代水墨画を思わせるような背景の中、照明を絞った舞台で、言葉のない静かな踊りが踊られます。わたしの見方が、まだしっかりしてないからだと思うんだけど、コンテンポラリーのバレエってわたしには無言劇のように感じられるのです。古典、例えば白鳥の湖とかマノンとかは、もう舞台からたくさんの言葉が聞こえるのに(もちろん言葉は発せられていないけど)、コンテンポラリーのはとっても静か。それが不思議に感じられるのです。ラムさんとステパネクさんの踊りはとってもきれい。ラムさんやっぱり上手い。そして音楽が、第2楽章に入ったのかなと思わせる、ゆっくりとした静かな最後。向かい合って立っているラムさんが、何か話したそうにしているステパネクさんの口を手でふさぐシーン。ああ、ここには言葉にしてはいけない秘密があるんだなと思いました。
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第2楽章になって、あっこの曲!とやっと思い出して、そうでしたそうでした、モーツァルトへのオマージュなのでした。そしてうっとりととろけるようなプーランクのハーモニー。もしかして、このバレエのテーマは、言葉にするとふわっと消えてしまう(生者への)想い出なのかも知れないって思ったのでした。この典雅でメランコリック(ふたつの対比する性格が過去と今をつなぐみたい)な楽章を踊ったのは、ファースト・アーティストのコープさんとファースト・ソロイストのマーチンさん。マーチンさんの踊り、最近ちょっといいなって思っているんですよ。そして、コープさんは胡桃のクララで最初に観て以来、なんだか応援してるんですけど、かわいい系の役が多いので、しっとりとした大人の役は珍しい。でも、この演目はもう何回も踊ってらっしゃるのでとても良かったです。
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第3楽章は、ユフィさんとスティーヴンさん。このふたりはもう言うことなしでしょう。ステキ。
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-enigma variations

frederick ashton (choreography)
elgar (music)

christopher saunders, christina arestis, etc.


エルガーの「エニグマ変奏曲」は音楽も大好き。作曲家が、親しい知人のイニシャルを曲に添えた音楽は、有名な「ニムロット」だけじゃなく、音楽全体に温かい想いが込められている。そしてセピア色の舞台も、幸福な想い出に満ちあふれてる。まるで絵のような静かな慈愛に満ちたバレエ。踊りが少ないのでバレエというより、演じられる舞台にも近いのだけれども、絶対にバレエ・ダンサーにしかできない舞台。そして、演劇的なバレエに他の追従を許さないロイヤル・バレエならではの作品。音楽もそうだけど、まさに古き良き時代の英国的。アシュトンって天才。
最近ちょうど江國香織さんの小説を読んだんだけど、その本の後ろに川上弘美さんが「江國さんのひみつ」と題して寄せている文章が、とってもわたしの気持ちを代弁してるんです。最初の段落を引用しますね。

このお話、わかる。
・・(略)・・
とにかく、わかるんだ。
いい匂いのするもの。少しだけしめったもの。でもさらさらとした手ざわりのもの。
深く、しみこんでくるんだ。それが。私だけにね。僕だけにね。

琥珀のように固く柔らかく純化していた子供の頃の想い出がわたしの中にくるくると浮かび上がってきて、静かに静かに溢れてくる涙が止まらなかった。音楽もいいし、舞台もいい、心が洗われるようなあたたかい時が流れました。

セピア色の舞台。真ん中のルーツさんがめちゃかわいらしかったです。後ろにいつものコープさん。
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このところ大活躍のカルヴェートさんとピカーリングさん
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ニムロットのガートサイドさんがステキでした。フィルピさんとマッカロックさん
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サウンダーズさんとアレスティスさんはエルガーとその婦人
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-gloria

kenneth macmillan (choreography)
poulenc (music)
anna devin (sp)

edward watson, leanne benjamin, heheniah kish, etc.

最後は、プーランクの「グロリア」にマクミランが振り付けたバレエ。この間観た、「レクイエム」の姉妹作品だと思うのだけど、実はちっとも分からなかったの。肌が焼けただれて」ぼろぼろになった感じの衣装、カッパみたいな帽子、あまり喜んでいる様子のない踊りは、神への讃歌「グロリア」からはかけ離れてる気がするし。よく分かっていないのに感想を書くのも難しいなぁ。でも、好きなんですよ。うんうん頭をうならせながら抽象画を観るもの好きだし、分からないものに挑戦するのって面白いじゃないですか。しかも踊ってるのは世界最高峰の人たち。踊りは、よく分かっていないわたしの心にも何らかの作用を引き起こすもの。特にプリンシパルの3人、その中でも特に、こういう踊りできらりと光るベンジャミンさんはステキでした。いつかこのバレエのことが少し分かってもっとちゃんと感想を書けたらいいな。

今日の指揮者はロイヤル・バレエの音楽監督、ワーズワースさん。オーケストラそして特に合唱はとっても良かったです。
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ベンジャミンさんとキッシュさん
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by zerbinetta | 2011-11-19 02:11 | バレエ

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