ブーイングするならそれなりの覚悟を ユロフスキ、ロンドン・フィル 「ファンタジア」   

03.12.2011 @royal festival hall

julian anderson: fantasias
mozart: violin concerto no. 5
tchaikovsky: manfred symphony

janine jansen (vn)
vladimir jurowski / lpo


また、ロンドン・フィル。わたしのホーム・オーケストラだから。またしても地味なプログラム。人気のジャニーヌ・ヤンセンさんを迎えてのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲はあるけど、メインはチャイコフスキーのあまり演奏されない「マンフレッド交響曲」。

始まりは、ジュリアン・アンダーソンさんの「ファンタジア」。アンダーソンさんは1967年生まれ、現在ロンドン・フィルの座付き作曲家みたいです。彼の音楽を聴くのは初めて。どんな曲なんでしょう、わくわく。大きなオーケストラで、5つの部分からなる25分ほどの曲。最初の曲は、金管楽器のみのファンファーレ。金管の人全員立っての演奏です。最初からとっても魅力的な音楽でした。カラフルで輝かしく、ペトルーシュカとトゥランガリーラを足して2で割ったような感じ。旋律っぽいものを奏でるソロの楽器は調性的だけど、それぞれが別々の調なので多調的。わたしは気に入ったのだけど、やっぱり気に入らないおじさんがいてブーイングしてました。でも今日のおじさんは声が通らないので、会場の大部分にはちっとも聞こえてない感じで、まわりの人だけ、何でブーイングするんだってそのおじさんに怒ってました。ブーイングって難しいですね。確かに、悪いものを聴いたらブーイングして態度を表明するのは、あっても良いことのようにも思えるけど、昔みたいに派手にブーイングする音楽習慣はなくなってきてるし、価値観が多様になってるので、人の好みはそれぞれ、その中でブーイングするのはかなり覚悟がいると思う。気に入って聴いてるのにブーされたら嫌な気持ちにもなるし。難しいですねぇ、正しいブー。

2曲目のモーツァルトは、もっと小さな曲かと思ってたら30分くらいかかる充実した曲なんですね。オーケストラは小さいし、モーツァルトらしい爽やかな軽快な音楽なのでそう感じていたんでしょうか。
ユロフスキさんの工夫は、通奏低音(?)のチェロとコントラバスのパートにところどころファゴットを加えていたこと。そしてユロフスキさんのモーツァルト、初めて聴いたけど、めちゃいい!陳腐な表現だけど緑のそよ風がさらりと吹くみたいな、気持ちをわくわくさせてくれるような静かな幸福感に包まれてるの。どこにそんな魔法が秘められてるんでしょう。彼の古典はステキだって日頃から思っていたけど、モーツァルトは特別なのでどうかなって思ってたりもしたけど、モーツァルトもいいなんて最高。
とヴァイオリニストが出る前から大喜びだったんだけど、ヤンセンさんのヴァイオリンもステキでしたよ。浮遊感のある軽めの音に仕上げてきて、でも、ヤンセンさんって音をつなげて弾くのが好みなんですね、もう少しハキハキと切ってくれたらって思うところもありました。
第3楽章にはトルコ行進曲風の音楽があるんですね。弦楽器の皆さんがばちばちとコルレーニョ風に弾くのでちょっとびっくりしたんですが、あとで調べてみたら、そう書かれているんですね。モーツァルト侮りが足し。ああでも、本当にステキなモーツァルトでした。それにこの曲、モーツァルトの音楽の中でも最高に粋な音楽のひとつですね。始まりの旋律が伴奏になっちゃうところといい、お終いの人を食ったような終わり方といい、モーツァルトの笑顔が見えてくるようです。

休憩のあとは、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」。チャイコフスキーの番号なし交響曲だけど、聴いて納得。交響曲と言うより物語のある交響詩風。こうして聞き比べるとチャイコフスキーって(番号付き)交響曲は、純音楽的に表題を排して書かれているんですね。
でも、この曲、円熟期に書かれたわりには少しチャイコフスキーらしからぬ退屈。叙情性に欠けるというかのめり込めるロマンティックさが不足気味。大編成のオーケストラにオルガンまで使ってマッシヴなオーケストラ・トーンを楽しめるんだけど、でもやっぱりチャイコは叙情よね〜。ユロフスキさんとロンドン・フィルの演奏は、ものすごい充実。ここ3回のロンドン・フィルの音楽会の充実ぶりは凄い。なんか、ユロフスキさんオーケストラにますます磨きをかけてる? 彼の指揮でナショナル・ユース・オーケストラのライヴの放送を聴いたけど、オーケストラを徹底的に訓練して演奏してる感じ。ロンドン・フィルのリハーサルも結構きつくしてるんじゃないかと想像。オーケストラも生き物だから、停滞する時期も落ち込んでいく時期もあるけど、目の前で伸び盛っているのを聴いていくのは喜びですね。ロンドン・フィル、まだまだ良くなるんじゃないでしょうか。それにしても、数年前にユロフスキさんを主席指揮者に選んだのは慧眼だなぁ。
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by zerbinetta | 2011-12-03 08:29 | ロンドン・フィルハーモニック | Comments(2)

Commented by かんとく at 2011-12-12 08:58 x
LPOは今シーズン、まだ1回しか行けてないんです。もっち行きたいんだけど、なんかタイミングがあわなくて。ユロフスキさんとLPOますます好調のようですね。無理矢理でも、行かなきゃですね。
Commented by zerbinetta at 2011-12-13 05:34
そうですよそうですよ。ロンドン・フィルは良いですよ。ロンドンでも一番人気ですしね。次のユロフスキさんはプロコフィエフですか。これは体調を万全にして聴かねばですね。

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