無窮の青天 クルターク、シベリウス サラステ、BBC交響楽団   

16.12.2011 @barbican hall

bartók: dance suite
kurtág: ... concertante ...
siberius: symphony no. 6, 7

hiromi kikuchi (vn)
ken hakii (va)
jukka-pekka saraste /bbcso


BBCシンフォニーのシベリウス交響曲全曲演奏シリーズ、今日が第2回目、第6番と第7番というわたしの一番大好きなふたつです。指揮者はサラステさん。一昨年のシーズンに、ロンドン・フィルがヴァンスカさんと同じくシベリウスの交響曲全曲演奏シリーズをやっていますが、BBCシンフォニーのは、回ごとに指揮者を変えています。それにしても、シベリウスはイギリスでは人気ですね。ラッキーなことに、ロンドンに住んで3年の間に、大好きな交響曲第6番を聴くのは今日で4回目です。今日は2階席までお客さんがいっぱい入っていました。

始まりは、バルトークの舞曲組曲。千秋先輩がフランスの指揮者コンクールで振った課題曲のひとつですね。初めて聴きましたが、変拍子がすごくて、指揮者大変そう。とはいえ、サラステさんはもうヴェテランなので余裕というか、緩急を自在に付けてぐいぐいと音楽を動かしていました。フォーク・ソングのメロディがベースにあるので、バルトークの音楽にしては聞きやすいしのりのり。とはいえ、変拍子のタイミングはかなりスリリングですけどね。BBCシンフォニーは現代曲慣れしてるので余裕で弾いていましたが。今日は、千秋先輩大変だったなぁと変な感慨をいだきながら聴いていました。

2曲目に演奏されたクルタークの「コンチェルタンテ」が圧巻だったんです。クルタークもハンガリー出身の作曲家。2002年から3年に書かれた、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏曲です。今日ソリストを務めたのが日本人のカップル(あっ実際ご夫婦です)キクチ・ヒロミさんとハキイ・ケンさん。キクチさんはソロで、ハキイさんはロイヤル・コンセルトヘボウのヴィオラの主席としてもご活躍中です。
クルターク自体あまり聴かないし、この曲も初めて聴くのだけど(イギリス初演)、全く分かりやすい音楽ではないのに、音楽の力強さに涙が出るほど感動してしまいました。音楽もいいけど、演奏もとっても良かったんです。特にソリストのおふたり。指揮者を挟んで左右に並んだんですが、弾き出すときのアイ・コンタクトの豊富さ。相手がすぐ弾き始めないのにアイ・コンタクトするのは、音楽を確認しているかのようです。そして、プログラム・ノートによると、クルタークと長年仕事をされてるキクチさん(彼女に献呈された曲もあります)、クルタークの音楽を隅から隅まで知り尽くしている感じで、まさに演奏者としてこの曲の魅力を最大限に表現していたと思います。彼女のヴァイオリン歌う歌う。もちろん、口ずさめるようなメロディが出てくるわけではないんですが、ロングトーンや無機的な音の羅列の中にも叙情的な歌があって、とってもしっとりと人の感情に訴えかけるものがあるのです。最後の方で使われた、胴のない楽器。エレクトリック・ヴァイオリンでしょうか。スピーカーは用意してあったけど、ヴァイオリンには線がつながってなくて(コードレスで信号を飛ばすの?)、仕組みはよく分からないのだけど、聴いた感じでは音を電気的に増幅していなくて、楽器から出てくるそのままの音が聞こえていたと思います。でも、それがとても音楽に合っているよう思えたので、きっとそう書かれているのでしょうね。印象的な音楽でした。サラステさんとBBCシンフォニーのバックもふたりのソリストをしっかりサポートしてとっても良かった。新しい作品が、最高の演奏者を得て演奏されること、作品の力を示す上でもとっても大事なことですね。わたしはこの曲がとっても気に入りましたが、それは今日の演奏者たちの力によるところも大きいと思います。
あっそうそう、キクチさんとハキイさんのご夫婦、芸術家というより、なんだか街の商店街でお店をやっているような感じの方たちでした。

休憩のあとはシベリウスがふたつ。
交響曲第6番はわたしが一番大好きなシベリウスの交響曲です。なので演奏に対する思い入れもハンパ無くあります。最初に聴いたのがカラヤンの指揮のものだったので、それがわたしのデフォルト。本当は、そんな自分の中の音楽(でもそれは自分で作ったものではなくて、与えられたイメジ)と比べちゃうのは良くないと知りつつも、なかなか無垢で音楽を聴くことってできない。といった感じで聴き始めました。サラステさんの演奏は、この曲は、快速テンポ(というかカラヤンの演奏がむしろかなりゆっくりなテンポ)で、結構緩急を付けたり。そして、BBCシンフォニーの音色が硬質なので、凛とした感じ。わたしのとはちょっと違うと思いつつも、音楽の中に引き込まれていきました。サラステさんは結構熱を帯びた音楽をするし、BBCシンフォニーの面々もそれに応えて自発的にアグレッシヴなフレージングで入ってくるのだけど、オーケストラの音色が澄んで冷たいので、音楽が熱くならずに、冷たい白色の光りをまばゆいばかりに発するよう。30分間一度も緩むことなく聴き通すことができました。とってもステキな演奏。

そしてさらに素晴らしかったのが第7番。第6番との間をどうとるのかなって興味津々で見ていたら、拍手のあと指揮者はいったん退場。オーケストラのメンバーも数人退場して(第7番の方が編成が小さいので)、軽い音合わせのあと仕切り直しての始まり。第6番と第7番って性格が似ているところもあるし、第7番は単一楽章なので、続けて演奏するのもありかなって思っていたので、どうするか興味あったんです。
この曲ではサラステさんは少し遅めのテンポ。音楽が緊張を高めながら少しずつ盛り上がっていって、トロンボーンのソロにふっと解決するところは、あまりの感動に涙。音楽も演奏もお互いに高め合って素晴らしい化学反応を生み出していました。白く冷たく発光する音楽。なんだか宇宙の果てから光りのメッセージが届いてくるようで、精神の高みにわたしも引っ張り上げられるような、なんだか永遠の謎の答えを見せてもらえたみたいな、完全な結末。のように会場では感じられて、しみじみと感慨に浸ってました。オーケストラの人たちからも、そんな雰囲気が見えてきて、チェロの主席のモンクスさんはパートの人たちに振り向いて握り拳で称えていました。魔法から解き放されたのはずいぶんとあと。地下鉄の駅を出て自分の家に歩き出したときでしょうか。ふっと冷たい空気にやっと我に返りました。これでシリウスが輝いていたら最高だったんだけどな。

サラステさんかっこよかった。実はかなり好きかも。なんかオーケストラとも上手くいっていそうで(以前に主席客演指揮者だったのですね)、BBCシンフォニーの次期主席指揮者のダーク・ホースなのではないかとふと勘ぐってしまいました。
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by zerbinetta | 2011-12-16 22:33 | BBCシンフォニー | Comments(2)

Commented by Miklos at 2011-12-18 07:07 x
この演奏会は用事で行けなくなったため、Voyage2Artさんにチケットを引き取ってもらいました。波木井賢さん(と漢字で書くようです)は、確かに楽器持ってなければとてもミュージシャンには見えない、日本の普通のおっちゃんですよね。でもコンセルトヘボウ管のステージでは絶大な信頼でヴィオラパートを引っ張っておられるので、そのギャップに戸惑います。ちなみに「クルターク」はドイツ語読みですか。ハンガリー語だと素直に「クルターグ」でよいと思います。
Commented by zerbinetta at 2011-12-18 07:54
バルトークがあったのでMiklosさんいらしてるとてっきり思っていたのですが、そのような事情があったんですね。ハキイさんのヴィオラはとっても上手かったです。ソロの人というよりアンサンブルの人という感じでした。でもほんと、お姿とのギャップが。。。
クルタークは持っていたCDの解説書に確かそう書いてあったとうろ覚えの記憶で考えなしに書いていました。確かにクルターグですね。

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