無意味な闘い ショスタコーヴィチ交響曲第8番 ソヒエフ、フィルハーモニア   

09.02.2012 @royal festival hall

brahms: piano concerto no. 2
shostakovich: symphony no. 8

arcadi volodos (pf)
tugan sokhiev / po


なんだかわたし置屋のやり手婆みたいだな。でも、どういう訳かこのブログ、美人音楽家で検索してくる人が何故かいつも一定割合でいらっしゃるし、ロンドンの音楽ブログ仲間にも美人音楽家好きが多いんです。もちろんわたしもそうなんだけど。。。(イケメンくんのことを書くのはなんだか生すぎてこっぱずかしい)
で、今日の美人さんは、フィルハーモニアのチェロに乗っかっていた、シモンセンさんとマクモナーグルさん。シモンセンさんはフィルハーモニアのメンバー、マクモナーグルさんは、いわゆるトラです。シモンセンさんはソロでも活躍していて、ウォーミングアップしているときの音が聞こえてきたんですが、上手かったです。黒めがねのマクモナーグルさんは、現代音楽のアンサンブルでも活躍中みたいです。

シモンセンさんとマクモナーグルさん
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あっ、そんなことはよかったんです。それよりも音楽♪ わたしの偏愛している若手指揮者のひとり、ソヒエフさんがタコ8を振るというのでそれはもう楽しみにしてたんです。裏ではロイヤル・バレエが「大地の歌」をやってるのに、マラとタコを天秤にかけたらやっぱりタコの方が重かった。「大地の歌」は2回観たし、続けて観るような作品じゃないし。で、確かピアノ協奏曲が前プロであったな、モーツァルトかなと思ったら、なんとブラームスの第2番。重い。重すぎるプログラム。ブラームスの協奏曲はメインになるくらいの大曲。あああ、今日は10時過ぎそう。
ピアノのヴォロドスさんって、あとで調べたら、前にユジャがアンコールで弾いてくれた「トルコ行進曲」の変態超絶技巧版を作った人なんですね。そんなこととはつゆ知らず、あごのないおじさんだな(実はわたしより若かったり、それもあとで知った)、ぬいぐるみの熊系かな、上手なのかななんて失礼なことを思っていたら(今日は大変疲れていて、タコ8目当てですから、ブラームスでは居眠りしちゃうなって思ってました。ってか積極的に居眠りしちゃおうかなって)、そして、最初、わたしの座った席が悪いのか、ピアノの打鍵の音と、あとから来るピアノ線の響きが分離して聞こえて来ちゃって、これはダメかなって思っていたら、だんだん耳が慣れたせいか、ピアノの弾き方を変えたのか、全然気にならなくなって、そしたら、もう正統派盤石なピアノにうっとり。むちゃ上手いのですよ。そしてどっしりと構えた音楽。ソヒエフさんとフィルハーモニアもとっても良くって(去年はポゴレリッチさんの勝手し放題に為す術もなかったですからね)、全く予期せぬ名演。ぼんやり寝ちゃおうと意気込んでたのに、しっかりとぼんやり聞き惚れてしまいました。上手を越えて音楽だけに浸りきれる演奏でした。そういえば、フィルハーニアの美人音楽家追っかけのMiklosさんご推薦のホルンのケイティさん。柔らかなとろける音でとってもステキ。第3ホルンから去年主席になった人ですけど、まだ20代前半。フィルハーモニアで一番若い人で、なんと初めての女性金管楽器メンバーだそうです。フィルハーニアは将来を嘱望されるすごい人を採ったものです。美人はおいといて(とてもきれいな人です)、彼女のホルンの音からは耳が離せませんね。

ヴォロドスさんは、アンコールを弾いてくれました。バッハかな、バッハのトランスクリプションかな、と思ったんですが、シューベルトのD600の「メヌエット」でした。これがもの凄く繊細でステキだったんです。短く切りそろえられたバスの上に、響きを残しながら音が重なっていく高音のメロディ。凛として高貴。静かな哀しみと幸せ。音の全てがじわりと心にしみ込みました。静けさが音をいとおしく包みこむようです。

休憩時間に窓の外を見たら、雪! あらやだ、帰りの電車を心配しつつも、雨交じりの湿って雪とはいえ、街灯に流れる白い光りは幻想的。まさにわたしのタコ8のイメジと一致してとたんに気分が盛り上がる。

タコ8は、これはとってもいけないことだと思いつつも、まだ、去年のズウェーデンさんとロンドン・フィルの圧倒的な演奏の記憶が鮮明に残っていて、どうしても、それと比較してしまいがちな自分から免れる自信がないのです。
ねっとりと始まりました。遅めのテンポ。擦れるような枯れるような生気のないヴァイオリンの高音。と書くとなんだか酷い演奏のようになっちゃうのですが、そうではなく、そういうものを目指した演奏。虚無的というか、諦めというか。感情の入り込む余地のない冷たく降りしきる雪。そうだ、この音楽って涙が涸れたあとの音楽だ。
それにしてもまだ30代の若いソヒエフさんがこんな音楽を作ってくるとは。それに、フィルハーモニアが上手い。このオーケストラ、今まで無色透明、味がないとかいろいろ言ってたけど、本気出すとめちゃ上手い。それに、透明な暗闇がまさに作り出されているのみならず、余裕を持った柔らかさを上手く併せ持っていて、ああやっぱりさっきの雪景色のよう。雪はいつまでも降り積もって世界を変えていくのです。楽器の音色のブレンドのしかたもとっても上手く、第1楽章の真ん中のホルンの高い音の3連符ってチェロが重なって柔らかく響くことに初めて気がつきました(今までホルンのパート・ソロだと思ってたの)。
第2楽章は一転して速い音楽。第2楽章も第3楽章も楽器を思いっきり鳴らすけれども、決して荒れず、美しい音楽性を保ったまま、でもしっかり暴力的。このさじ加減の巧みさ、やはりソヒエフさんただ者ではありません。初めて聴いたときから妙にわたしと波長が合うんです。今日のタコも記憶の中にある雪の日の想い出を思い出させてくれて、ふうっと涙腺が。
フィルハーモニア、みんな上手いけど、楽器の音色もいい。第3楽章のトランペットの行進は重い音色でステキだし、トロンボーンの荒れぶりも益荒男ぶり。ティンパニは残念ながらスミスさんではなかったんですけど、でも今日のゲスト・プリンシパルの方もとっても上手。さらには第4楽章の綿のようなホルンのソロの点描。打楽器、特に大太鼓のクレッシェンドの迫力といったら。ジャンプするように身体全体を使ってばんばんと重い音で打ち込んできました。
もう何もない荒れる大地に取り残されてしまった心。謎めく春がやってきても、心は温まらない。ばかりか有無を言わさぬ凶暴なオーケストラの強奏が、大地を、心をえぐるように再現して、もはや行き場を失い心は空っぽ。再び巡り来る春の気配も完全に否定されてしまって、虚無のまま音楽が終わってしまう。最後は希望が芽生える音楽だと思っていたのに。なんの希望もない。勝ってもそこには何もない、虚しいばかりの闘い。音が消えたあとの長い間の沈黙は、心の虚しさを計るもの差しみたい。

なんかすごい音楽聴いちゃったなぁ。交響曲第7番のあとで、これかぁ。ショスタコーヴィチにとってはほんと、全否定されるべき無意味な戦争だったんだな。世界大戦も彼個人のスターリンとの闘いも。

ソヒエフさんとじゃまっけな指揮台のバー
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by zerbinetta | 2012-02-09 21:07 | フィルハーモニア | Comments(2)

Commented by Miklos at 2012-02-13 09:41 x
呼びました?偶然にも今日カーステのHDDレコーダに「タコ8」を読み込ませていたところなので、って関係ないですが。出張さえなければこの日はこの演奏会か、裏でやってたKヤルヴィ/LSOのジャズ特集を聴きに行ってたところです。

最近フィルハーモニア管はご無沙汰なので、一部とは言えフィオナちゃんのお顔が拝めて、感謝感激です。それにしても指揮台のバーには私もいつも泣かされていますよ。ホルンのケイティちゃんも健在な様子で何よりです。昨年のマーラー9番の堂々とした吹きっぷりが強く脳裏に刻まれています。チェロのヴィクトリア(シモンセン)ちゃんは、鼻が大きいのがちょっと自分の趣味じゃないんですが、すごく肌の奇麗なスッピン美人ですよね。今後とも、「美人音楽家道」の師匠として、どうかご指導よろしくお願いいたします。
Commented by zerbinetta at 2012-02-14 07:02
呼んだらすぐ来てくれるなんてMiklosさんスキスキ。
タコ8は良い曲ですよ〜〜。何故かロンドンでは人気で聴いたの3回目(聞き逃したのが多分1回か2回)。裏のLSOも魅力的でしたね。バレエにも行きたかったし。

ケイティさん、お姿はともかく、ほんと上手いですね。マーラーのときもとっても良かったし、フィルハーモニアのホルンの主席はこれでしばらく盤石ですね。奥の方なのでなかなか写真が撮れないんですが。

いえいえ、美人音楽家道の師匠はMiklosさんですよ。わたしなんてまだ若輩者のすっぴん美人(自分で言うのは自由よ、ウソでも)なので、Miklosさんの影を踏まないようにそろそろついていきます。

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