オペラ劇場を爆破せよ 「ミス・フォーチュン」 ロイヤル・オペラ   

12.03.2012 @royal opera house

judith weir: miss fortune

chen shi-zheng (dir)

emma bell (tina), andrew watts (fate),
jacques imbrailo (simon), noah stewart (hassan),
alan ewing (load fortune), kathryn harries (lady fortune)
anne-marie owens (donna)

paul daniel / roc, oroh

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辛口です。だって、見終わったあともの凄く痛ましい気持ちになったんですもの。オペラに未来はないのか、大劇場がオペラの未来を潰している原因になってることに気がついたんですもの。
わたしは、新作とかコンテンポラリーのオペラを観るのは好きです。ロンドンでも機会を捉えて観に行ってます。でも正直、なかなか良い作品には出会えないのです。
その原因は、多分、オペラと現代音楽の相性の悪さでしょう。生理的な歌を拒絶してしまった音楽と金食い虫のオペラとは相容れないものがあるんじゃないかと思います。それと、時間の長さ。歩いて生活することが基本の時間感覚で生まれたオペラが、現代の、ハイスピードの時代に合うのは難しいんじゃないか、おっとりと話の進まない(それは物語が時間のかかる歌によって進行するせいでもあるのですが)オペラは、てきぱきとものを片付けることが必須の現代人には、てやんでーさっさと話すませやがれ、こちとら江戸っ子で気が短けーんや、てなもんで、劇場の椅子に何時間も座っているのは苦行。いや、そこまで言うことないでしょうって感じですが。

イギリス人作曲家、ウェイアさんの新作「ミス・フォーチュン」は、ブレゲンツ音楽祭との共同プロダクションで、去年音楽祭で初演されています。もちろんロンドン初演は今日。一聴して分かることは、調性へのおもねり。調性のゆりかごにぬくぬくと浸かってしまった音楽。一応現代音楽なので、訳分からない度をミックスして中途半端な音楽ができあがってしまいました。現代オペラにありがちな傾向。どうしても歌手に歌を歌わせたくて、調性におもねってしまう。でも、調性なんて過去の遺物だからもっと現代っぽいものを加えて、って悪循環。加えて、大きなオペラ・ハウスでは、お客さんをたくさん呼ぶことが大事だから、全く歌のないオペラにはできない。去年の「アンナ・ニコル」のように題材がキャッチーでお祭りで盛り上げることができればいいのかも知れないけど(作品はどうってことのない、娯楽に徹してるところが潔いだけマシかな)、それもなくて、なんだかああだこうだといろんな方向からチャチャが入ってどうにも不定型なものができあがってしまったみたい。
もし、大劇場である程度お客受けをするオペラが望まれるのならば、多分作曲家はもう自在に腕を振るえないだろうし、保守的で中途半端な作品を作るか、潔く分かりやすい作品を作るかしかないのかなぁ。もちろん、そんなことは昔からあった話だけれども、聴衆も変わってきてるし、音楽の最前線と聴く人の耳や頭との乖離度は全然違うし、何よりも商業的に成り立たないのは今の社会では致命的。とすれば、大劇場が新しいオペラの発展の障害となっているという構造的な矛盾。未来に向かったオペラのためにはブーレーズさんじゃないけど「オペラ劇場を破壊」しなければいけないのかしら。オペラ・ファンが自分で自分の首を絞めているみたいな絵でなんだか嫌なんだけど。オペラは過去のものに封印してしまう?これについてはもっとじっくりとよく考えてみないと自分でも考えがまとまりません。

「ミス・フォーチュン」でもうひとつ致命的だったのが(というよりこちらの方が致死的)、台本のまずさ。正直全く魅力がなかった。シチリアの民話を元に作曲家自らが台本を起こしているのだけど、現代の物語に翻案された作品からは、なにか物語の上辺だけをなぞった感じで、心に引っかかるものがなにもないの。元のお話を知らないので、正確なことは言えないのだけど、多くのお伽話や民族伝承が持っているように、もう少し奥行きのある含蓄があったはずなのではないかしら。それを現代に起こすことによって、かえって具体的になりすぎて表層だけになってしまったのではないかしら、と思うのです。

ロイヤル・オペラはケバブとのタイアップ(舞台に世界一のケバブ屋さんという屋台が出てきます)で宣伝を計ってるけど、ケバブはケバブでおいしいお店で食べたい。

と、悪口ばかり。でも、シチェンさんの舞台は色遣い(照明)がとっても上手く、この人は力のある監督だなと思わせるものがあったし、歌手の皆さんはもったいないくらいとっても高水準。パフォーマーが良かったゆえに作品の弱さがより強く感じられてしまいました。
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by zerbinetta | 2012-03-12 22:42 | オペラ | Comments(2)

Commented by かんとく at 2012-03-27 03:05 x
つるびねったさん
こんにちは。作品のしょぼさは、思いだすのもイライラするぐらいです。ただこうした新作と大劇場の持つ構造的矛盾というのはなるほどなあと思いました。エコノミスが成り立たないんですね。
Commented by zerbinetta at 2012-03-27 07:40
かんとくさんも時間を無駄にしましたねぇ〜。
わたしの矛先はオペラそのものに向かったんですけど、音楽は酷かったけど、聴いたことは後悔していません。噂で酷いと知るのと、自分の耳で判断しているのでは全然違うので。でも、ほんと waste of time でしたね!

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