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仲間ってステキ ニコラ・ベネデッティと仲間たち3 ランチタイム・コンサート   

15.03.2012 @jerwood hall, lso st kuke's

shostakovich/atovmyan: five pieces for two violin and piano
mahler: piano quartet movement
shostakovich: piano quintet

nicola benedetti, alexander sitkovetsky (vn),
maxim rysanov (va), leonard elschenbroich (vc),
alexei grynyuk (pf)


アリーナと共に大好きなヴァイオリニスト、ニキと仲間たちのBBCラジオ3・ランチタイム音楽会が、LSOセント・リュークで4回にわたってあるのでそのうちの2回を聴きに行くことにしました。ほんとは4回とも聴きたかったんだけど、さすがに仕事そんなにさぼれないし。。。今日はその3回目にして、わたしにとって1回目の音楽会。ニキと仲間たちがショスタコーヴィチとマーラーの音楽を弾きます。タコと聞いたら聴かずにはおれません。

始まりは、タコ、アトフミヤン編曲の2つのヴァイオリンとピアノのための5つの小品。まとまった曲を編曲したのではなく、同じような感じの曲を5つまとめたものみたいです。ガボットとかワルツとかポルカとか軽妙で健やかな小品が5つ。気の置けない音楽です。ピアノは、ニキとよく組んでるアレクセイさん。ヴァイオリンはシトコヴェトスキーさんがファースト、ニキが下でした。それにしても、ニキ、楽しそうに下付けてるなぁ。1曲目のプレリュードが終わりそうな頃から、でも、ここでひとつ問題が! 音出しをしているチェロの音が会場にまで響いてきて。がんがん弾いてる様子。LSOセント・リュークって音楽会用に楽屋とかちゃんとしてないから、オーケストラのときは外で待っていました、控え室で音出ししてると聞こえてきちゃうんですね。ニキがちょっと困った風で、結局譜めくりの人(会場の係の人?)が走って行って止めました。笑いつつ、音楽を再開。もしかしたらここで切れちゃうかな、と思ったんですが、大丈夫。それにこれはタコが余興にさらりと書いたような音楽だから、肩の力が抜けていてステキ。

2曲目は、音出しのチェロ、ニキのボーイ・フレンドのレオナルドさんも加わって、マーラーのピアノ4重奏。若書きの未完成の断片だしさらっと聴こうかなと思ったら、なんととんでもない目に。夕暮れ時の街の奥から重くどろりと夜の暗闇が湧いてくる感じのピアノに乗って弦楽器が豊かな情感で歌い始めると、黒い手に包まれて異世界に引き込まれていく。重くてゆっくりと幻想を見るような音楽。マーラーのこの曲ってこんなに濃厚だったっけ?なんだか暗いボヘミアの森に囲まれた小さな異世界の村に彷徨い込んだ感じ。そこには人ではないものが住んでる。昨日ドヴォルジャークの音楽を聴いたせいか、この音楽がマーラーの出自のボヘミアに直接根を張っているように聞こえる。それにしてもなんて豊かな音楽なんだろう。泣きそうになって、呆然として、涙が出た。深い井戸に落ちたかのよう。マーラーのこの音楽でこんなに衝撃を覚えるとは思わなかった。このマーラーは、わたしのマーラー体験の中でも最も心に突き刺さったもののひとつになりました。お昼の音楽会で、まさか、こんなことになるとは。。。

このグループ、誰かがリードをとっているというわけではありません。自然に音楽を合わせるという感じです。正直、初めて見たとき、どちらかというとあまり風采の上がらない人たちで(ニキがいわゆる美人音楽家のカテゴリーにされてる人なのでイケメンをよりどりみどりなのに、なんて俗なこと考えた)、ニキは面食いじゃないのかなぁ、なんて思ってたのに、音楽を聴いたらニキがこの人たちと音楽をしている理由がよく分かった。本当の意味で音楽でつながっている。
(ところで、ニキは美人ヴァイオリニストとしてプロモートされている気配もあるけど、本人はそんなことどうでもいいと思っているに違いない。むしろ、彼女の真摯な音楽に対する姿勢を演奏を聴くごとに感じるし、彼女、とっても真面目で浮いたところがない感じ。容姿ばかりが注目されてしまうのは、彼女も本望じゃないような気がするしもったいないよ)

さて、最後はタコのピアノ5重奏。タコ好きと言いふらしてる癖に初めて聴きます。マーラーでどっぷり来たので、この曲もステキなものになる(今日ここに来る前は、ニキとタコって合うのかななんて思っていたクセに)に違いないと思った通りに、ステキなことになりました。なにしろみんなが自主的に音楽をしながらひとつに合わせているので、聴いていて気持ちが良いし、音楽のスタイルをとてもよく勉強しているという感じがしました。ソヴィエト系のピアニスト、アレクセイさんの薫陶かなぁ。この人、一見ヲタク系のとっちゃん坊やにも見えるんだけど(あっ失礼!)、この人にピアノ、なにげに凄いです。音楽は、第5楽章まであって、ゆっくりとした第4楽章が交響曲第15番の最終楽章っぽくて透明に消えていくのかなと思ったら、賑やかな楽章が始まってびっくり。晩年のタコだったらあそこで閉じると思うのだけど、まだ、元気な壮年だからかな、明るい音楽を付け足した感じ。でも、たっぷりと充実した音楽を聴いてすっかり満腹のお昼。いいですよ。ニッキと友達。わたしも混ぜて欲しいくらい。口三味線じゃダメかしら?

ニキと友達。肩を組んだ下から首をにょっと出してるのがアレクセイさん
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by zerbinetta | 2012-03-15 03:18 | 室内楽・リサイタル

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