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ずうっと愛を語っていよう ストーティン、ビシュコフ、ロンドン交響楽団 マーラー交響曲第3番   

01.04.2012 @barbican hall

mahler: symphony no. 3

christianne stotijn (ms)
semyon bychkov / lsc, tiffin boys' choir, lso


マーラーの交響曲第3番は昔うんと好きでした。今は、他の曲が大好きになったり、長大な第1楽章にちょっぴり退屈を覚えたりもするのだけど、でもやっぱり大好きで、特にフィナーレはわたしにとって掛け替えのない音楽です。実演、録音を通して一番大好きな演奏のひとつは、ティルソン=トーマスさんとロンドン・シンフォニーの演奏で、今日、同じロンドン・シンフォニーで聴けるのが嬉しくってにこにこ。それだったら、一番いい席取ったら良かったのにとも反省。

今日の指揮者は、ティルソン=トーマスさんではなく、ビシュコフさん。どんな演奏になるのでしょう。楽しみ。
女声合唱も少年合唱も最初っからステージに出てました。ってこれが普通かな。マーラーは確かこの曲を書いている頃、第1楽章と第2楽章の間に10分程度の間を入れるようにと言っていたはずなので(楽譜には書いてないんですね〜。復活ではお休みを入れるように書いてあるけど)、この間で合唱を入れてもいいかな。反対に、独唱は出ていなかったので(これも普通)、どこで入ってくるのか、わくわく。第1楽章のあとでは出てこなかったので、あとで歌手が入ってくるとき、拍手がわき起こらないかとちょっぴり不安。

期待の演奏、始まりこそほんのちょっぴりほころびがあってあれっ?って思ったのだけど、それも一瞬。素晴らしい演奏。まず、オーケストラがやっぱり上手い。こういう音楽は、輝かしい音色で聴きたいし、演奏者の余裕があってこそ、自在に深い表現ができると思うから。第6交響曲では、反対に奏者の限界のところでひーひー言わすのが良くって、最近のオーケストラの技術の進歩でさらって演奏されちゃうと(そんな風に演奏できるオーケストラはまだ少ないけど)、なんだかかえってマーラーの求めていたものじゃないように聞こえるサディスティックさ。そういうのがないので、美音がものを言うのです。それにアンサンブルが完璧で、低弦の駆け上がる速い音符もトランペットのファンファーレも完璧に合ってる。凄いです。ビシュコフさんは、音色にもかなりこだわってるみたいで、楽器が重なったり重ならなかったりするところを繊細に描き分けて(ちょっとやり過ぎってとこもあったけど)、実に細かく目の行き届いた演奏です。長い第1楽章は、最後まで飽きずに聴き通せました。ただひとつ残念だったのは、ちょっとおとなしめ。木管楽器のベル・アップは、ほとんど行わずに、普通に吹いてました。視覚的効果というけれども、実際客席で聴いていると、ベル・アップした木管楽器から直接耳に届く音って、音色も変わるんです。なので、とっても大事って思うのだけど。それから、4本のピッコロでユニゾンするところ、音楽のさやの中に収まって、それは音楽的に美しいのだけれども、わたし的にはさやから飛び出てはちゃめちゃに吹いて欲しかったな。だってピッコロって最凶暴な楽器なんですもの。

第2楽章は、洗練された美。都会のインターナショナルなオーケストラならこうなるよねって感じ。実はわたし、2年前の夏に聴いたスコットランドのオーケストラによるこの曲の鄙びた感じが忘れられないのだけど、なんかわたしの好み変わってきてる?あんまり磨き抜いちゃうと、この楽章と次の楽章の自然の素朴さが生きないと思うんですね。風が透き通りすぎて、草の匂いや、時には鼻をつまむような牧場の匂いを感じないんです。もちろんこれは贅沢すぎる希望なんだけど。
第3楽章もだからあっさりきれい。中間部の舞台裏のポスト・ホルンはフリューゲル・ホルンで代用していました。

ここで、独唱のストーティンさんが入ってきて、でも心配したような拍手喝采はなく、控え目な拍手。ストーティンさんは、初めて聴いた、ハイティンクさんとロンドン・シンフォニーとの「大地の歌」がもうむちゃくちゃ良かったので、期待していたのですが、声が軽めの人なので、この曲の深い夜の底から響いてくるような音楽にはちょっと弱かった気がしました。オーボエは、ゲスト・プリンシパルの人ですが、グリッサンドの音が完璧につながっていたのは上手かったです。
そして鐘が鳴る第4楽章。朝がぱっと破けるかなと思ったら、意表を突かれて、小さな音で始まってびっくり。おろっとしてしまったけど、これが妙に上手くはまってしまったんです。へ〜こんな表現もあるのかって。予想外のどっきり大好き。

そしていよいよ最終楽章。ゆったりと一緒に呼吸する音楽。ああ、この美しさはなんだろう。暖かな愛?幸せな時間。時間よとまれ。この中に永遠にいたい。このいとおしい音の中でいつまでも愛を語り合いたい。i love you と言わなくても確信しあえる愛。音楽も言葉も何もかもが全て愛でできているの。でも、あのピッコロが聞こえるとなんと悲しいのでしょう。音楽の終わりが始まる合図。ああもう終わってしまう。最後は蕩々と盛り上がって、力強く音楽が、文字通り、歩む。最後の最後の方でトランペットがひとり降りるところを間違えちゃってドキリとしたけど、そんなのは些細な瑕。帰って集中力が増しました。それにしても、なんてステキなフィナーレ。これがあるからこの曲がずうっと大好きであり続けるのよね。

ビシュコフさんの音楽の上手さはつなぎの部分。音楽の部分部分をつなぐ部分が実に上手くて、それは第1楽章からずうっと感じていたのだけど、最終楽章での真ん中で盛り上がったところから、弦楽器群が音を伸ばしてデミュニエンドして糸を引くように次につなぐ部分は感動的にステキでした。わたしのマーラー体験がまたひとつ豊かになりました。

by zerbinetta | 2012-04-01 05:44 | ロンドン交響楽団

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