音楽への逃避 ユジャ・ワン リサイタル   

01.05.2012 @queen elisabeth hall

rachmaninov: étude-tableau, op. 39 nos 6; 4
rachmaninov: élégie, op. 3 no. 1
rachmaninov: étude-tableau, op. 39 no. 5
beethoven: sonata, op. 27 no. 1
scriabin: sonata no. 5
prokofiev: sonata no. 6

yuja wang (pf)


ユジャ(羽佳)は、3年前に聴いて以来、大好きなピアニストです。テクニシャンで、しなやかでスポーティーな演奏をする人です。最近は、ミニスカートや高いヒールで演奏するので、オールド・ファッションのクラシック音楽ファンの物議を醸し出してますね。そんなヘンなところで話題になったり(ユジャは意識的にそういうファッションをしているみたいですが)、テクニシャンゆえに音楽が浅いと批判されたり(本来テクニックと音楽性は相関しないというかテクニックがないと音楽性云々以前の問題なんですが、テクニック重視は音楽重視と相容れないようです)、何かと出る杭は打たれるようです。ということで、わたしもちょっと心配。どうなるでしょう。人気はあるのですが。

ユジャは残念ながら(?)、ミニスカートではありませんでした。でもサイドに深くスリットの入ったロングスカートで、ときに太もも露わ。セクシー路線ですかね。うっかり健康的な太ももに目が吸い寄せられちゃいます。
ラフマニノフの「音の絵」3曲と「エレジー」はあまり印象に残っていません。太ももが気になって音楽が。。。ではなかった、なんだかユジャが不安定な感じがして気になって。音楽が、じゃないんです。彼女自身が。

さっと深いお辞儀をしてささっとピアノに向かうのはいつもの彼女の姿のかもしれないけど(わたしはユジャをリサイタルで聴くのは初めてです)、なんだか、お客さんから自分を守ろうと逃げているような気がして。彼女、とっても繊細でシャイなのかもしれないって思った。それは、わたしが感じたことで、ちっともそんなことないのかもしれないんだけれども、さっさと音楽に入ってしまう始まりの落ち着きのなさはそういう風に感じさせたことも事実です。ピアノを弾き始めれば自分の世界に逃げられる。音楽に没入できる。でもそれまでの間の心の持って生き方に泊まりがないように思えるのです。かのアルゲリッチさんも演奏前は、ちゃんと弾けるのだろうかととっても不安になるといいます。そんな気持ちがユジャにもあるんじゃないかって感じました(本人に確かめたわけでもないし、本人はあっけらかんとしているかもしれないんだけど)。
そういうことを感じて、どうしてもユジャを「のだめカンタービレ」に出てくるソン・ルイと重ね合わせてしまいます。ユジャが長期の演奏停止をするかどうかは分からないけど、例えば、ショパン・コンクールに優勝したあとのポリーニさんのように演奏を休んで音楽と対峙することも大切じゃないかと勝手に思うのです。最近の若い演奏家はなんだか、CDセールスとかで忙しすぎると思うのです。ここで将来を潰してしまうのはもったいない。売れるうちに売るのではなくてきちんと音楽家を育てるマネジメントをして欲しいと心から願います。

とっても安心できたのは意外なことにベートーヴェン。曲がユジャに合ってるのかなって疑問に思ったけど、ユジャはこの曲を本当に愛しむように弾きました。テクニックのいらない音楽にこそ、真に音楽をするためのテクニックが必要だと思います。わたしは、この曲を聴くのが初めてなので、ユジャの演奏が、どうなのかは確かなことは言えません。でも小さな声で歌いながら、愛おしげに音楽を奏でるユジャを見て、彼女は本当に音楽が好きなんだなって思って嬉しくなりました。あの歌はかわいらしかったなぁ。心温まるベートーヴェン。この音楽があれば大丈夫。ルイをパリのアパルトマンまで訪ねてきて、彼女の弾くモーツァルトを聴いて、帰って行ったお母さんと同じ心境です。

休憩前の最後のスクリャービンのソナタ第5番と、後半(衣装を赤のワンピースのドレスに替えました)のプロコフィエフのソナタ第6番は、いつものユジャらしい演奏でとっても良かったです。スクリャービンの方は恍惚としたエクスタシーも感じられ、メカニカルだけど妖艶な音楽。一方のプロコフィエフは、戦争ソナタなんだけど、なんだか軽くて楽しげでさえある音楽。やっぱりユジャはプロコフィエフとか、ロシアのメカニカルなヴィルトゥオーゾ系の音楽が得意そうですね。テクニカルな難しさをもろともにせず、音楽的に実りある演奏を聴かせてくれました。

アンコールは、ホロヴィッツの「カルメン変奏曲」。ピアノのヴィルトゥオーゾを生かしたアンコールピースですね。これはもう楽しかった。
最後のほっとした感じの笑顔がステキでした。
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サイン会もあってわたしも持って行ったCDにちゃっかりサインしてもらいました。漢字でサインしてもらえば良かったなと、ちょっと後悔。今度機会があったら頼んでみよう。

結局、まだまだユジャが好きです。今は、まだ成長期というか、大きく変わることもあるかもしれないので目が離せません。追っかけはできないけど(世界中駆け回らなきゃ)、彼女の音楽会はできるだけ聴いていこうと思います。
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by zerbinetta | 2012-05-01 16:31 | 室内楽・リサイタル | Comments(2)

Commented by sony at 2012-05-21 17:39 x
初めて書くとおもいますが、いつも拝見しているものですから初めてのような気がしないのです。詳細のコメントとそれも専門的で楽しんでいます。
ユジャワンは大好きなピアニストの一人です。以前N響でメンデルスゾーンのピアノコンチェルトを聞いて感動したのを覚えています。足早に舞台に来てわき目も振らずピアノに向かうのは今も変わらないのですね。
しかし、この写真からみると髪をバッサリときりさっぱりしているのが違います。以前は美容院に行っているのだろうかと思うほど散切りで櫛を入れていないような髪でしたから。画像からするとやんちゃ娘から熟女になった感がします。
その後日本でリサイタルの切符は即日完売ウエイティングリストが40人近くで結局はいけませんでした。
機会があったらまた聞きたいピアニストです。
あのピアノタッチと表現力は素晴らしい!
でも今回はドレスのスリットからの様子はどこに目をやったらよいのかわからなかったのでは?
Commented by zerbinetta at 2012-05-28 08:18
sonyさん、はじめまして♬
いつも見てくださってどうもありがとうございます。コメントも嬉しかったです。
ユジャのことはやっぱり大好きです。しなやかな肉食獣のようなタッチがいいですね。彼女の音楽が深みを増してくるのはこれからだと思いますが、凄味のある音楽を期待したいです。
まだ熟女には早いですよ〜。でも、少女から大人の女になりつつあるのはわたしも感じました。太ももではなく、彼女の歌に色気を感じました。
日本では人気があるのですね!ロンドンでも人気があるのですが、チケットが取れないということはなさそうです。(チケットがすぐ売り切れになってしまって取れないという音楽会はあまり多くはありません)
いつか彼女を生で聴けるといいですね。

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