看板に偽りあり! と一瞬思った「見て!指揮者いない!」 啓蒙時代のオーケストラ   

03.05.2012 @queen elisabeth hall

haydn: symphony no. 104
mozart: violin concerto no. 3
beethoven: triple concerto

robert levin (fp)
isabelle faust (vn)
steven isserlis (vc)
oae


音楽会のタイトルは「look! no conductor! (見て!指揮者いない!)」デス。でも会場に行ったら、指揮台はあったし譜面台が立ってて椅子が置いてあったの。えええっ?看板に偽りあり?最初のは交響曲だから、これだけ指揮者ありでやるのかな。と思ったら底に座ったのはチェロのイッサーリスさん。なんとチェロの弾き振りです。もちろん弾くのはオーケストラのチェロパート。ふわふわの髪を揺らして弾き振りです。イッサーリスさんの後ろ姿もなんだかユーモアのある感じで、愉しい。
ロンドンで聴く「ロンドン」。出だしは重くゆっくり。そして軽快な音楽に続いて、ピリオド楽器で弾くとまったりしないで、さばさばと音楽が流れてステキ。もちろん、ハイドンの後期の交響曲は現代楽器でビロードのような柔らかな肌触りの演奏も極上のシュークリームを食べるようで大好きなんですけどね。それにしてもチェロの弾き振りって初めて見た!貴重な体験?

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番はファウストさんの弾き振り。これはこの間、ロンドン・フィルでリサの弾き振りで聴いたばかりですね。ファウストさんを聴くのは2度目だけど、モーツァルトも端正な感じでいいなぁ。余剰な飾りのない、実にまっすぐで庭に咲いてるきれいに品種改良された花ではなく、野原にぽつりぽつりと咲いてる華美ではないけど生を謳歌している力強さのある花のような音楽。わたしのイメジではこの曲は緑の草原(くさはら)なんですけど、その中に咲く野生の花みたい。ファウストさんの弾き振りは、前に出る独奏者というよりは、小さなオーケストラと一緒に音楽を作っていく感じ。そこから絶妙なバランスでソロが浮かび上がってくる。協奏曲的な華やかさはないけど、ミント味の炭酸水(menthe à l'eau)のような爽やかな感じはとっても好き。

最後のベートーヴェンの3重協奏曲は、フォルテピアノのレヴィンさんが弾き振り。このベートーヴェンはわたしにはちょっと慎ましやかすぎたかな。この曲って、あのベートーヴェンの苦虫をかみつぶした顔がなくって、3人の名人と共に素直に華やかに音楽を楽しむって雰囲気があると思うので、音楽的には正しいけど、音が地味めな古楽器では、現代楽器で派手にやられた演奏と較べられると面白味に欠けるんだよね。豪華な料理は豪華に食べたいじゃない。蕎麦道とか言ってざるにこだわるのもいいけど(しかもつゆはちょっとしか付けないしわさびはのせない)、大きな海老がのってる天ぷら蕎麦が食べたいときもある。ベートーヴェンのこの曲は天ぷら蕎麦だと思うんです。とか言いつつ、でもやっぱり、このソリスト人は豪勢ですね。最高のお蕎麦に何文句言ってるのって感じかも。しみじみと豪勢な音楽に満たされて、家路についたのでした。
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by zerbinetta | 2012-05-03 02:31 | 啓蒙時代管弦楽団 | Comments(0)

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