スターウォーズの時代の惑星 クライン、ガードナー、フィルハーモニア   

05.06.2012 @royal festival hall

walton: crown imperial
elgar: cello concerto
holst: the planets

natalie clein (vc)
edward gardner / philharmonia voices, po


フィルハーモニアによる、ジュビリー音楽会。イギリス音楽の特集です。指揮はイングリッシュ・ナショナル・オペラのガードナーさん。外見やんちゃ小僧。わたしはジュビリーにちっとも興味がなくって、わざわざ見に行っても人ごみだし寒いしって行かなかったし、家にテレビもないので(ネットも遅すぎて動画を見るのはストレス・フル)、何をやってるのかちっとも分からないんだけど、まぁ、この音楽会に行けばちょっとはジュビリー参加の言い訳が出来ていいかって。そんなことどうでもいいんだけど。

まっでも、ジュビリーだから始まりはおめでたいウォルトンの戴冠行進曲。豆知識だと(ググっただけですが)、1937年のジョージ6世という人の戴冠式に際して作られた曲みたいですね(あとで改訂)。ジョージ6世さんは今のエリザベス女王のお父さんです。さらには映画「国王のスピーチ」の主人公。と、音楽に関係ないうんちくでした〜〜。
音楽は静かな感じで(大きな音は出ていたのだけど)、華々しさよりも音楽の良さを聞かせようという感じでした。勢いで演っちゃうんじゃなくて丁寧にきちんと音楽を作っていたと思います。ジュビリーとはいえども音楽会ですからね。耳の肥えた聴衆にはちゃんと音楽聴かせなきゃ納得しないもの。

エルガーのチェロ協奏曲は大好きな曲。なんだかもの悲しくて、祝典の雰囲気はないんだけど、良い曲です。雨の日の午後に聴いていたい曲。チェロは若いナタリー・クラインさん。何回か聴くチャンスはあったんだけど、何故かご縁がなく初めて聴きます。まずびっくりしたのが、ものすごい美人さん。NHK教育テレビの番組の司会者をするタレントさんみたい。その彼女の音楽は完全な没入系。音楽の中のどっぷりと浸かって、表情豊かに演奏していきます。もちろん優れた音楽家さんなので、もうひとりの客観的な自分はいるのでしょうが、それをお客さんに見せることはない感じです。
音は柔らかで繊細な美音。オーケストラはそれに合わせて、控え目に伴奏を付けていくのだけど、強奏ではソロが埋もれてしまう場面も。彼女とっても上手いし、歌い方もすごくいいんだけど、音量が足りないの。この人は、大きなオーケストラと対峙する協奏曲ではなく、室内楽、特にロマン派の歌のある音楽に向いてるんじゃないかって思いました。今度はぜひ、ウィグモアホールとか小さな会場でしっとりと彼女の演奏を聴いてみたいです。
アンコールのカザルスの「鳥の歌」は、大ホールで演るにはちょっと繊細すぎたかな。没入系なのに、ちょっと表面をなぞっただけな感じが気になりました。この曲に込められている哀しさがあまり感じられなかったです。

惑星は。むふふ。いやぁ〜スペクタクル。火星はかなり速いテンポでびしびし来るんですけど、この格好の良さは、スターウォーズ!もう宇宙船が光線を打ちまくるスピーディーな爽快感。わたしたちの想像する宇宙戦争にぴったり。わたしはこの演奏大好きだけれども、そしてわたしたちの(時代の)求める演奏はこれでいいと思うけど、でもね、ふと、考えもしたの。占星術に基づいて書かれたこの音楽。ホルストはどんな音を想像してただろう?って。ホルストがこの音楽を書いた頃は、ちょうど第1時世界大戦が始まるか始まらないかの頃。その頃の戦争は、歩兵が主役で、飛行機もないし今みたいな戦車もない(どちらも第1次世界大戦から導入されたようですけど、まだ性能が低かったので主役ではなかったみたいです)。宇宙戦争だってタコみたいな火星人が攻めてくる感じだし。だとすると「戦争をもたらすもの」と題されたこの曲の戦争ってもっとゆっくりとして牧歌的じゃなかったのかしら。少しゆっくりと朴訥に演奏するのが本来の姿なんじゃないかって。とか思って、調べたら、この曲ホルストの自作自演の録音が残ってるのね。聴いてみたらびっくり。速い!かっこいい!なぁんだ。ホルストもスターウォーズ世代か。ってかめちゃかっこいいぞ!これ。(オーケストラ(ロンドン・シンフォニー)もめちゃ上手いです。もし聴きたければ、ホルスト、自作自演でググってみてくださいね。無料の音源が見つかります)

ガードナーさんの演奏は、まさにそのかっこいいホルストの自作自演をさらに現代的にスマートにかっこよくした感じ。火星の最後は、大リタルダンドをかけて重々しく閉じたかと思うと、きらきらと幻想的な金星。なんて美しいこと。ガードナーさんはそれぞれの曲の特徴を良く引き出して、艶やかにスマートに演奏します。木星の有名な中間部も感情に溺れることなくさらりと、でもしっかりと歌いきって、さらさらしているのにしっかりとコクのあるベルギーの修道院ビールみたいな味わい。
大好きな土星も渋さがかっこよさになっていて、こんな年の取り方をしたいな、ステキな老境だろうなって思わされました。それにしても、ときに全部聴くのは退屈になることもあるこの曲を、最後まで集中して聴けました。演奏はほんとにステキでした。ガードナーさん、やっぱ才能のある人だなぁ。イングリッシュ・ナショナル・オペラだけじゃなくてどこかの優秀なオーケストラの指揮者になればいいのに(バーミンガム市交響楽団の主席客演指揮者ではあるんですね)。

なんと!アンコール(普段の演奏会ではありません)。予想大的中。エルガーの「威風堂々」。そりゃ、ジュビリーですもの。これがなくちゃ終われない。そんなお祭り的な音楽だけど、ガードナーさんは、とってもきちんと、音楽的にこれを聴かせてくれたのでした。イギリス人がうらやましくなりました。こんなステキな音楽を自分の国にもっていてみんなで分かち合えるんですから。日本には残念ながらないよね。

クラインさんとガードナーさん
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by zerbinetta | 2012-06-05 08:17 | フィルハーモニア | Comments(0)

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