おまけの方が立派? ドゥダメル、シモン・ボリバル「アルプス交響曲」おまけ付き   

26.06.2012 @royal festival hall

esteban benzecry: rituales amerindios
strauss: an alpine symphony

gustavo dudamel / simón bolívar symphony orchestra of venezuela


現在、ロンドンで一番チケットの取れないオーケストラといったらドゥダメルさんのシモン・ボリバル・シンフォニー。しかも強気の値段設定で、ベルリン・フィル並み。去年のプロムスでも初日売り切れで敢えなく敗退(クリックしたのにバスケットに入れ忘れて、そんな隙間に売り切れ)。もちろん今日の音楽会も売り切れ。わたしはずいぶんと前にチケット取ったんですけど、もうほとんど安い席は売り切れてました。

シモン・ボリバル・シンフォニーはもちろん、ベネズエラで始まった革命的な音楽教育、エル・システマの申し子。指揮者のドゥダメルさんもこれで学んでます。オーケストラも大編成で、200人くらいがステージに上がったのではないでしょうか。コントラバスは13本。管楽器も倍管というか数倍管。若い人が多い、オーケストラだけど、前より年齢が上がったみたいで、昔あったユースの文字は取れていました。
正直に言うと、オーケストラはそれほど上手くありません。音量もあまりなく、うようよ増やした弦楽器はそれとして、人数を増やした管楽器は弦楽器に埋まってしまう場面が多々ありました。音量的には普通の人数のロンドンのオーケストラの方がありました。でも、ドゥダメルさんの音楽を音にしようとする真剣さはさすが。非常に真面目だし、こんな大人数のわりに弦楽器なんかはしっかりとまとまっていました。良い意味でアマチュアリズムのあるステキなオーケストラです。
ただちょっと運営面で気になったことは、200人を超える所帯というのはオーケストラとしては異様。プロのオーケストラとして資金的に地元でやっていけるのかって心配してしまいました。そして、ユースが取れて団員が毎年年齢が上がっていくように思えることは、ここから他のオーケストラなりソリストに飛び出していかないと、上が詰まってて下から人を採れないということに何だか心配になりました。もちろん、ふと思っただけで実際は、何らかのシステムができあがっていて流動性はあるのかもしれないけど、音楽家の需要ってそんなになさそうだし。でも、いつまでも素晴らしい成功した文化事業として続いていって欲しいです。ベネズエラは大変な国と聞くけど(前に、ベネズエラ出身の女の子に、どうって聞いたら、危ないから行かない方がいいよ、と言われた)、この事業がベネズエラの未来にとって大切な良いものになって欲しいと願ってます。今日は会場に、エル・システマの生みの親、ホセ・アントニオ・アブレウさんも来られていて拍手を受けていました。

最初の曲は、アルゼンチンの作曲家、エステバン・ベンゼクライさんの「リチュールス・アメリンディオス」という曲。「オーケストラのための前コロンブス時代の3章」という副題が付いているとおり、アステカやマヤやインカをイメジした音楽。各章の表題どおりの感じの音楽なので交響詩的な(というか音の絵)標題音楽です。わたし的には、ヒナステラの焼き直しみたいな感じに聞こえてちょっとつまらなかったかも。中南米の作曲家ならメキシコのレヴゥールタスの方が勢いがある分好きかな。ちなみに作曲者のベンゼクライさんは遠くから見るとイケメンでした♡

ドゥダメルさんって、髪の毛爆発してるし(最近はそうじゃない)、ラテン系だし、アンコールにちょくちょくやるマンボのせいか、イケイケノリノリ指揮者さんのように思われがちだけど、実は全然違うんですね。去年、LAフィルとの演奏で聴いたけれどもとっても、繊細で丁寧な音楽を作る人です。勢いやノリで演奏しないタイプ。今日の「アルプス交響曲」もそんな演奏でした。とっても細かく丁寧な音楽作りで、場面場面の景色を丹念に描き分けて、クライマックスで大きな音は要求するけど、決して力任せな爆音系の音を出させない。オーケストラのバランスなんかはもうほんとに微に入り細を穿つコントロール。オーケストラは技術的に要求についていけてないところはあったけど、でも献身的にドゥダメルさんと音楽をする姿勢はステキ。とても美しいアルプスでした。ドゥダメルさんがアバドさんやラトルさんにかわいがられていたり、人気があるのもよく分かります。この人の音楽、ほんとに素晴らしい。

アンコールはあるのかな、アルプスに登ってきたあとでマンボは嫌だなって思っていたら、ドゥダメルさんが牛のような兜を被って槍を持った大男と登場。ええっ!悪役レスラー、何が始まるの?って思って見てたら、兜をとった下には眼帯をした、あっ!ヴォータン。じゃなかったブリン・ターフェルさん!!「ラインの黄金」のワルハラ城へ入城するときの歌。まあこれがもうむちゃくちゃ良くて、なんと言ってもターフェルさん。こんなところで、ターフェルさんのヴォータンが聴けるなんてもうわたし興奮のるつぼだし、どっしりとして風格があって、もうこれ聴いただけで十分と思うような、本編よりもおまけの方が凄くない?って思うような、くじを引いたら1等が当たったようなものすごく得した気分。ああなんて幸せ。ドゥダメルさんのオーケストラもしっかり練習してきたんでしょう、アンコールといえども本編のような演奏。もうわたしもお客さんもみんな大喜びで歌に酔ったのでした。

全然関係ないけど、今日はロイヤル・バレエのカスバートソンさんが聴きに来てらっしゃってわたしのそばに座っていました。わたしのミーハー心が踊って秘かにきゃぴきゃぴ。
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by zerbinetta | 2012-06-26 08:30 | 海外オーケストラ | Comments(2)

Commented by Miklos at 2012-07-20 05:20 x
アルプスも滅多に聴けないシロモノで良かったんですが、あのアンコールが全部吹き飛ばしてくれましたね。リングのチケット買えなかった私には思いがけないボーナスでした。ところで、すっぴんカスバートソンさんの写真は?
Commented by zerbinetta at 2012-07-22 03:38
そうですね!アルプス交響曲もとっても良かったです!わたし、ドゥダメルさんがLAフィルと録音したらCD買おうと思っちゃいましたもの。でも、それ以上にあのアンコールが凄かったので、もう大喜びでした。まさにおまけ商法(って事前にアンコールは知らされてないけど)。
カスバートソンさんはプライヴェイトでしたし、お声もかけていないんですよ〜。(そっくりさんかもしれないって心配もありましたし) でも舞台で見るとおりの可愛らしい方でしたよ。

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