お風呂で聴くベートーヴェン バレンボイム、ベートーヴェン5、6   

23.07.2012 @royal albert hall

beethoven: symphony no. 6
boulez: mémoriale; messagesquisse
beethoven: symphony no. 5

guy eshed (fl), hassan moataz el molla (vc)
daniel barenboim / west-eastern divan orchestra


いつの間にかにプロムス始まってました。わたしの初日は、今日のバレンボイムさんとウェスト・イースト・ディヴァン・オーケストラという聞き慣れない名前のオーケストラとベートーヴェンの交響曲全曲演奏会のひとつ。わたしの大好きな所謂「運命」と「田園」の回。この音楽会シリーズの特徴はベートーヴェンの交響曲の合間に、ブーレーズさんの曲を持ってきていること。バレンボイムさんとブーレーズさん仲良しなんですかね。わたしは聴きに行かなかったけど去年確か、ブーレーズさんの指揮の下でバレンボイムさんがピアノを弾いた音楽会があったはず。ちなみにバレンボイムさんはロンドンで人気があるので、チケット代も高いし、なかなか取れなかったりします。と、わたしはバレンボイムさんに格別の思い入れはなかったので1枚だけ安いチケットを取りました。なんと、ロンドンで彼を聴くのは初めて!人生でも3度目だったり。そこまで敬遠するほどじゃないと思うんだけど、チケットの方がわたしを敬遠してたので。

今日はロイヤル・アルバート・ホールの上の方の席。満員のお客さん。会場の熱気がしたから全部上がってきてもわんと暑い。そしてドーム状のホール、音の反響が八方から来るので(席によっては直接音と反響音がほどよくミックスされていい感じのところもあるのだけど)、もわわわんとお風呂の中で歌うよう。もわんともわわわんが相まって、お風呂の中でのんびり音楽を聴いているような幸せ感。でも音楽はベートーヴェンとブーレーズさん。なんていうミスマッチ。でも、これが何だかふんわりとした空間でいい。ちょっと違うけど、こういう楽しみ方もいいよね。

バレンボイムさんのベートーヴェンはきわめてオーソドックスなオーケストラのスタイル。とっても自信に溢れていて、まさに王道。奇を衒わなくても、音楽を丁寧に演奏すれば、いろんなスタイルのベートーヴェンを聞き慣れていてつい、新奇な解釈に驚喜するわたしのような見栄っ張りの訳知り顔の聴き手をも納得させられるという見本のよう。バレンボイムさんが若いオーケストラをぐいぐい引っ張って音楽を作っています。

そう、今日のオーケストラは、若者の団体。バレンボイムさんたちが、中東のパレスチナやイスラエル、他のアラブの国々の若い音楽家を集めたワーク・ショップから生まれたオーケストラ。中東なのにミドル・イーストではなくてウェスト・イースタン・ディヴァンというのは、名前はゲーテの詩から採ったからだそうです。未だに解決されない紛争の当事国の音楽家がひとつの音楽を奏でる。音楽で平和を!なんて素直に叫べるほどわたしはウブではなくなったけど、でも、音楽家にもできることはある。それをやってきたバレンボイムさんは素晴らしいと思うし、このオーケストラの役割にも敬意を払わずにはいられません。バレンボイムさんってイスラエルの国籍を持ちながら、パレスチナの国籍も持っているのですね。バレンボイムさんのこと見直しました。

「田園」は喜びに満ちているので大好きです。バレンボイムさんの演奏はその喜びをとても素直に丁寧に音にしていてとっても共感が持てます。凄くはないけど真っ直ぐ伸びのある演奏。ところで、ときどき書いているのですが、この曲の最終楽章で、ベートーヴェンはとっても思いきったことをしていますよね。わたしはそれをカラオケ効果と呼んで、交響曲第9番のフィナーレのコンセプトの上を行くと思ってるんですけど、完全に主旋律を抜いて伴奏だけで音楽が進行するところ。しかも、旋律抜きで思いっきり盛り上げる。まるでそこだけカラオケになったみたい。心の中で、メロディを歌うのです。音に出さなくても、聴いてる人に音楽に参加することを求められてるような気がする。いつも、わたしの中で喜びに満ちたメロディを絶唱。心が熱くなる。

真ん中にはバレンボイムさんの盟友、ブーレーズさんの2曲。「エクスプロザントゥーフィクス」のオリジナルの「メモリール」と「メッサージキュッス」(フランス語の発音合ってる?)。前者がフルートのソロ、後者がチェロのソロと少人数の弦楽合奏のための作品です(あっ「メモリール」にはホルンも入っていました)。どちらもそれほど難しくなく、清涼感すらある音楽。ベートーヴェンの合間にピタリとはまってます。ソロは団員が務めたんですが、ソリストを務めるだけあってしっかり上手いですね。それにしてもチェロの人、恥ずかしがってなかなか前面に立たないのをバレンボイムさんに何度も押し出されて拍手を受けていたのが、かわいらしい。

休憩のあとは、交響曲の第5番。この間ノセダさんの指揮でめちゃ速い演奏を聴いていただけに、ずいぶんとゆっくりに聞こえました。勢いで圧す演奏ではなかったので、第1楽章はオーケストラの弱さがちょっと出てしまいました。難しいですね、この曲。それでも第2楽章からは持ち直して、がっしりとした音楽を聴かせてくれました。バレンボイムさんの細部にわたるこだわりも徹底して、ピアニッシモの最弱音の強調も若いオーケストラだからって手抜きはなしで、若いオーケストラに容赦なく最高度の要求をしていることがよく分かります。反対にフィナーレではオーケストラを解放して、腕を大きく広げてオーケストラの勢いを放ったり、雄大な音楽を作っていく様がバレンボイムさんの指揮からよく分かります。終盤のピッコロが大活躍するところでは、ピッコロ奏者を立たせて演奏させるなんてサプライズも。お客さんも盛り上がって終わったので良かったのではないでしょうか。それにしてもバレンボイムさん人気だなぁ。その一端はわたしにも分かったけどね。

充実した楽しいお風呂でした。もわんもわん
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by zerbinetta | 2012-07-23 07:16 | 海外オーケストラ | Comments(0)

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