ビバカッパ(町田康的イメジ) ペトレンコ、RLPO タコ10   

23.8.2012 @royal albert hall

peter maxwell davies: symphony no. 9
delius: violin concerto
shostakovich: symphony no. 10

tasmin little (vn)
vasily petrenko / royal liverpool philharmonic orchestra


一昨日に引き続いてタコ♡ 今日は、前に交響曲第11番の衝撃的な演奏をフィルハーモニアと聴かせてくれたペトレンコさん。手兵のロイヤル・リヴァプール・フィルとの演奏です。タコの交響曲のひとつの頂点とも言える第10番。最近は第5番と並んでよく演奏されるようで、ロンドンで聴くのがこれで4回目かな。ペトレンコさんが、現在レコーディングを進行している交響曲全集の世評が軒並み高いので、わたしの期待も頂点。ううう、早く聴きたい。

まず始めは、新作、といってもすでに初演は済んでいるのですが、今年の女王のダイヤモンド・ジュビリーに捧げられた、サー・ピーター・マックスウェル・デイヴィスさんの交響曲第9番。メインのオーケストラの他に、金管6重奏が加わります。さてさて。わたしには、正直つまらなかったです。中途半端な現代音楽系によくあるように、分かりにくい部分と分かりやすい部分というかメロディっぽいものに媚びを売ってるような部分が混じり合ってぼんやりとぼけてるような、頭で聴いていいのか歌っていいのか分からないような、むしろ、後ろの金管合奏がジャズっぽい音楽を吹くとほっとするというか。女王の人は、芸術には全く興味がないそうなので、この音楽の存在も知らないような気もしますが、こんな音楽を捧げられたらちょっとかわいそうと、今日のわたしは辛辣だなぁ。何か嫌なことあったんだっけ?

ディーリアスのヴァイオリン協奏曲は初めて聴きます。ヴァイオリンのリトルさんは名前はよく見かけていたのだけど、これまた初めてです。わたし、ディーリアスをあまり聴いたことがないのだけど、でも音楽の響きはわたしの中のディーリアスっぽい感じ。あっディーリアスって気づいちゃう感じの、絵画で言ったらバルビゾン派の絵のような素朴な地味さ。ディーリアス好きには、セピア色の淡い音のグラディエイションがきっとたまらないのでしょう。わたしは、子供の頃、野山で遊んだあと、夕日が暮れかかってきて後ろ髪を引かれつつ友達と別れて家に帰る気持ちを思い浮かべました。リトルさんのヴァイオリンは、やっぱり派手さはないもののしっとりとした音で、叙情的な音運びはディーリアスの音楽にピタリ。とっても弾き慣れているというか、音楽を熟知している感じで、迷うことなく安心して身を任せて聴ける演奏です。この曲があまり人気がない理由はよく分からないけど、もしかして、この音楽の世界を表出するのが、ディーリアスに親しくないと難しいのかなって思いました。

さあいよいよタコ10。うわ〜、またこれは名演。何かぐいぐいと胸を押してくるような勢い。音はがしがしと鳴るんだけど、決してスペクタクルに鳴らすだけにならないで、音そのものに言葉があるような、意味があるような。音の後ろにある心までが直接身体に入ってくる感じ。それがどういう意味なのかは、まだ、咀嚼できていないけど、ものすごく心を締め付けるもの。長い第1楽章は、一筆書きのように綿々と心に淀んだ、不満や不安、暗い感情を紡いでいく。
疾走する第2楽章は、スターリンの姿を表しているとも言うけど、そんなことはどうでも良くて、音楽はもっと普遍的な、そして誰にとっても個人的な、実体を伴って迫ってくる。弦楽器に付けられたポルタメントがセクシィ。ショスタコーヴィチは決して、彼とスターリンとの個人的ないきさつを描いていない。スターリンとショスタコーヴィチの物語にしてしまうと、この音楽の本質を見落としてしまうと思うんです。例え、DSCHのサインがこれでもかと言うほど鳴り響いたとしても。だって、DSCHはわたしのはんこかもしれないんですもの。
でも、本当にわたしの心が吸い付いてしまうのは第3楽章に出てくる孤独なホルン。同じ音型を何度も何度もそれこそDSCHと対をなすようにインプリントしてくる。タコの音楽も、ペトレンコさんの演奏もとても孤独。心の澱の中にあった哀しみが音に吸着していくよう。そしてそのまま、第4楽章の始まりの木管楽器のソロの孤独。第1楽章からの不安の雲。唐突に始まる破れかぶれの狂騒。カッパ踊りをしながら群衆の中を駆け抜け夕日に向かって孤独な勝利を、自分の名前を叫ぶことによって勝利を現実のものに実体化するように音楽は終わる。たったひとりしか認めなくても勝利は勝利。負け試合でも、自分が勝ちを叫んじゃえば、誰も認めなくても勝ち。そんな孤独な魂の勢いが音楽に演奏に感じました。ペトレンコさんのタコは毎回わたしに新しい見方を、聴き方を教えてくれるような気がします。CD買っちゃおうかな。
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by zerbinetta | 2012-08-23 05:55 | イギリスのオーケストラ | Comments(0)

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