スキップしてくるくる回りだしちゃうグローバルなわたしたちの第九 サロネン、フィルハーモニア   

27.9.2012 @royal festival hall

kurtág: ...quasi una fantasia...
beethoven: piano concerto no. 1, symphony no. 9

leif ove andsnes (pf)
giselle allen (sp), anne-marie owens (ms),
andrew kennedy (tn), james rutherford (br)
esa-pekka salonen / philharmonia chorus, po


さらに、昨日のロンドン・フィルに引き続き、今日はフィルハーモニアの開幕です。もちろん指揮はサロネンさん。フィルハーモニアもシーズン開幕には、大作を持ってきますね。今年は、ベートーヴェンの交響曲第9番をピアノ協奏曲第1番とクルタークの「幻想曲のように」と共に。

ピアノが真ん中にあって誰もいないステージを尻目に、客席が何だか煌びやかに。あれ!?もしかして、アコスタさん?と思うまもなく、ロイヤル・バレエの面々、20人弱でしょうかが客席に入ってきました。アコスタさんの他に、マクレー夫妻、マリアネラさん、マルケスさん、あと名前を知らない(ロイヤルの人でしょうか?)きれいなロシア人の若者、それにモニカ・メイスンさんも。音楽会そっちのけでわたし、トキメキ。心も目もそちらに。招待されたのでしょうね。

始まりのクルタークの音楽は、ステージにはピアノ、そして指揮者のサロネンさんがこちらを向いて指揮です。少人数の楽器はロイヤル・フェスティヴァル・ホールのサイドの上のボックス席に2人か3人ずつです。わたしの一番近くのボックスにはフィルハーモニアのマスコット・ガール(勝手に決めた)、フィオナちゃん。そしてピアノは、なんとアンズネスさんが弾きました。音楽は、正直1回聴いただけで何とも言えないんですけど、適度に耳優しい静かな広がりを持つシンプルな音楽でした。後ろの方の隅っこの席で聴いたので、会場いっぱいを使った空間的な効果は少し欠きましたが、いろんな方向から等分に聞こえてくる音は静けさの中に広々とした世界が広がりました。

2曲目はオーケストラもステージに出てきて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番。ベートーヴェンの若い頃の作品らしく、ハイドンやモーツァルトっぽくもあり、清々しくて透き通った作品。アンズネスさんのピアノの音色が、すっきり透明でとってもきれい。音のつぶつぶがビー玉のようにクリスプでカラフルなんです。そして、第1楽章のきらきらと音が落ちていくピアノとかドキリとする瞬間もあって、とっても充実した演奏。さすがアンズネスさん。女子的にはサロネンさんとアンズネスさんのコンビ、いいですね〜。目にも麗しいし。

休憩時間はミーハー心大満開。用もないのにふらふらしてダンサーさんの傍を行ったり来たりの不審者。それにしてもみんなすらっとしてきれい。ステージで観るとちっちゃくて少しふっくら見えるマルケスさんもすらりと背が高く見えて、とってもプロポーションがいいんです。男性陣も引き締まってステキにかっこいい。スーツやドレスを着て普段メイクのダンサーさんって観る機会あまりないからもう嬉しくって。

バレエの皆さんが席について、いよいよ第9番交響曲。さて、サロネンさんはどんな演奏を持ってくるのでしょう。サロネンさんは昨シーズンからベートーヴェンの交響曲を採り上げていて、まずは奇数番号、1番、3番、5番、7番を聴きました。その演奏は、意外にもオーソドックスな正攻法。奇を衒わずに円熟した音楽で聴かせる、でもサロネンさんらしい若々しい溌剌とした演奏。きっと今日もそんな演奏になるでしょう、と期待しました。
音楽は、最初っからサロネンさんらしいワクワクする演奏。快速テンポで飛ばして吹き抜ける風が気持ちいい。オーケストラはいつものように、ホルンは普通の、トランペットは無弁の、ティンパニは小さな古いタイプのティンパニです。なので、スミスさんのティンパニは炸裂せず、オーケストラの中のバランスで、でもしっかりと楔を打つように鳴っていました。
そんな、切れ切れでワクワクするようなサロネンさんの演奏でしたが、第3楽章まではわりとオーソドックスといえばオーソドックス。安心して聴ける演奏。第3楽章の天国的な響きはマーラーの交響曲第4番のアダージョを聴くような美しさだったけどね。でも、それが一変したのが合唱の入るフィナーレ。まず、攻撃的なトゥッティのあとのチェロとコントラバスのレチタティーヴォ。一瞬肩透かしのような柔らかな静かな音で始まって、ゆっくりとテヌートをかけて諭すように。普通ここ、アクセントを付けて決然とはっきりした主張をするように、いっそ攻撃的なくらいに演奏されることが多いと思うのだけど、剛とすると柔、これにはびっくり。頭を巡らせるよりも早く直感的に、あっ!現代は力でねじ伏せるのではなく、じっくりと相手を理詰めで説得することこそ民主的なやり方なんだと、はたと膝を打って。凄く現代的な演奏。第1楽章も第2楽章も第3楽章も頭から否定するのではなく、きちんと諭してる。そこから、サロネンさんのやりたい放題。もうにやにやして嬉しくってスキップして駆け回りたくなるような気持ち。こんな楽しいベートーヴェンの第9なんて滅多に聴けない。素晴らしい!
独唱は4人4様。それぞれ自由に歌って、個性が交わらず統一感がない。でも、それがいいの。だって、今は多様性と個人主義が大事な時代。サロネンさんはあえてこんな歌手を選んで自由に歌わせているのだと思いました。それを統一するのが合唱。フィルハーモニアの合唱団がこれがまたとても素晴らしかったです。
荘厳なコラールが静まって弦楽合奏になるところ、ノンヴィブラートの素朴な響きになって、突然モンテヴェルディの時代の空気が広がったよう。サロネンさんは、バロックから現代までの様々な様式の響きをちらりと聴かせてくれて、ほんとグローバルでまさに今の時代、わたしたちの第9。ベートーヴェンのはちゃめちゃな音楽をはちゃめちゃに演奏してくれて楽しいったらありゃしない。面白い、CD向きの演奏ではないけど、これこそベートーヴェンの本質だわ。今日は目の保養も出来たし耳の保養も出来て、心楽しくにこやかに笑いながら会場をあとにしたのでした。
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by zerbinetta | 2012-09-27 00:43 | フィルハーモニア | Comments(0)

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